軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

71.武器修理

借りた武器を使いながら、夜中から朝の9時頃までミュス狩り、ギルドに売り払いつつ、EPを回復させて本を読む。そして午後5時頃別れを告げて再びミュス無双だ。

そんな生活を続けていたら、【ビギナーズラック】が消えていることに気付いた。そうか、もう、そんなに長い間、アンジェリーナさんとともに過ごしてきたのか。

長いような、短いような1ヶ月だったな。

今日は武器の受け取りだ。ミュス狩りをしつつ、イェーメールに午前中に着くよう移動する。

朝早くは無理かなと思って、ちょっと酒屋建設予定地に行った。

……ハザック親方発見。めっちゃ張り切ってる。見たことのある面子もたくさんいた。

「おう、セツナじゃないか!」

兄貴たちのうちの1人が気付くと、次々挨拶が飛んできた。

「おはようございます。早いですね」

「親方が工期を一週間でとか言い出してな」

たぶんナンバー2の、親方の右腕っぽい兄さんが苦笑しながら説明してくれた。酒にかける情熱がすごすぎる。

「でも、店が出来ても開店はまだ先になると思いますよ。商品の入荷とかあるし」

一応牽制。飲んだくれてアクセサリー出来なかったら困るからさ。

「いやあ……どうだろうな。言葉で言って通じるか」

……親方とうとう言葉も通じなくなるのか。困ったなそれは。

「まあ、ほどほどに皆さん頑張ってください」

「おうよ!」

外観はまだ枠があって見えなかった。どんな感じの雰囲気になるんだろうなぁ。楽しみだ。

イェーメールの街は、言うほど歩いていない。作り込みがすごすぎて、どの路地に行っても何かしらありそうだ。スタッフオンリーな通れない場所がないのだ。物理的に通ることができるのなら、そこは道だった。

思いつきで入った小道に、よく知っている看板を見つけた。

ふらふらと吸い込まれるように入るとそこには――オルロ。

「あれ!? オルロさんも貸本屋さんなんですか?」

「セツナか。久しぶりだな」

イェーメールに初めて来たとき、家に泊めてくれたおじいちゃんだ。

「ええー、想像もしてなかったけど、言われてみればお似合いですね。おうちにもあれだけ蔵書があるし」

「そうだな。何か読んで行くか?」

「いや、武器の修理を頼んでいて、取りに行かないとなんですよ。また今度寄らせてもらいます」

「気をつけて」

そうか、イェーメールにも貸本屋があるのか。ということは、ファンルーアやローレンガにもあるかも? ローレンガの貸本屋……忍者ものありそー! 今度探してみよう。あそこまで切望しているのを見ると、後押しはしてあげたいなと思った。

それに、それぞれの街でしか読めない本とかもあるかもしれない。

時間に余裕があるときとか、イェーメールで用事がある合間とかに寄ってみよう。

「ありがとうございます!!」

真ん中からポッキリ折れていた、『西風のダガー』が、新品同様ぴっかぴかで帰ってきた。

「これからは定期的に持ってこい。メンテナンスも冒険者の仕事の1つだぞ」

「わかりました。こちら、ありがとうございました」

借りていたお弟子さんの短剣を返す。多分すぐ後ろにバンダナで帽子してる 小人族(ドワーフ) さんがそうなのだろう。

「おう、どうだった?」

「切れ味はいつものダガーと同じように思いましたが、こー、ミュスを倒す時って、首筋にひと突きするんです。その刃の入り方が少し入りにくいというか……」

「刃の薄さと形かな? ありがとな。おい、これはどうする?」

「もしよかったらまた武器を修理するときとかの換えに持っていていただければ。形などはわかってますし」

「だとよ」

えっ!? 武器もらっちゃえるの!?

「でも……」

「モニターってやつだよ。また新しい物が出来たら試してやってくれよ」

すごく楽しいお仕事じゃんそれ。

「同じ魔物を狩り続ける冒険者ってのはなかなかいねえんだよ。セツナはミュスをよく狩ってるらしいし、テストにもってこいだ」

「とてもありがたいんですけど、お礼になるようなものが……えーと、クランメンバーが作った蜂蜜クッキーくらいしか」

そう言って渡すと結構喜んでもらえたようだ。

「それじゃあ失礼します。ありがとうございました!」

『西風のダガー』本当にいいんだよなぁ。今は借りてる身だが、買い取るか、自分で作ることができたらいいな。

そのためには金か……まあ無理。ミュス狩りでアンジェリーナさんの本屋に入り浸ってるのが性に合っている。なんならこっちのもらった短剣もあるし、ミュス狩りには困らないな。

今からなら夕方まで時間がある。本屋に行ける。よし、今日も通うぞ女神の元に!!!

と思ったのに、なんか、ハトメール受信しました。

これは、あれだ。国宝級イケメンヴァージルさんからだ。

『少し尋ねたいことがあるので、時間のあるときに連絡が欲しい』

えーなんだろう。あのイケメン、メインクエストというか、ミトさんの謎の死に関連してそうなんだよね。一応ゲームを楽しむ身としては捨ておけない。

く、アンジェリーナさん……。まあ、この2日間十分本は読めたような気はしている。

仕方ない。

『今ちょうどイェーメールにいます』

半透明のハト座がパタパタと飛び立った。

即帰ってきたお返事に、待ち合わせの場所が記されていた。

どうせならアンジェリーナさんと待ち合わせをしたいなと思いつつ向かう。

あのお貴族様っ! という服装でどこで待ち合わせるのだろうと思ったら、薬師のお店だった。

今日はあの目立つ白い甲冑はつけていない。街歩き風スタイルだ。

が、まばゆいイケメン。フード付きローブで正解だよこの人……。忍んだり到底無理な、後光が差すタイプだ。

「済まない急に呼び出して」

「いえいえ」

「この間連絡をくれたろ? それで、調べてみたんだが、夜中に門を通った者がいるらしい」

夜は大きな門は閉まってる。ただ、 冒険者(プレイヤー) も多いため、通用口のような、人が一人通れるくらいの扉があり、兵士に身分証を見せて通る。

「真っ黒のフードを目深に被って、あまり会話もせずに出て行ったそうだ。さすがに名前までは覚えていなかったが、ファンルーアの方へ向かったそうだ」

それで、と何やら紙切れを取り出す。

「もう1度よく部屋を探してみたら、戸棚の後ろにこれがあった。心当たりはないか?」

あの壁いっぱいのメモが落ちていたのか?

と思ったが、渡されて手に取ればそれは、謎の紙切れと表記された。

わぁ……。

ただ、ナンバーは振られてない。鑑定しないとダメなのかもしれない。