軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

44.初討伐

山を降りた辺りで街の人たちと合流した。

あの場を離れる前に、何かめぼしい物はと周囲を探したら、湧き水があった。案山子の【鑑定】で、泥寝水と出た。が、その説明に『眠れる美少年のよだれが混じった水』とあったので、美少年を一応倒したので変化があるはずだということになった。

『よだれで造った酒かぁ』

『とっても複雑ね』

『普通の金賞受賞の酒をもう少し買い込むのじゃ』

そんなよだれ話をしているところに、街の人たちがやってきた。

「大きな音がしたが、大丈夫だったかい?」

蔵元のタカヒロさんに問われて、俺たちは頷く。

「たぶん、問題のモンスターは始末出来たと思います。それが流していた眠りの元も、時間が経てば湧き水から消えるでしょう」

「おお……神よ感謝いたします」

そのまま神殿に行き報告。本来は御神米で造る酒を捧げるのだが、御神米から眠りの効果が消えるまでは捧げるのをやめようと言う話に。

「先日いただいた桃の酒をお供えしようと思います」

《エリアクエスト:御神米と眠りの美少年 をパーティー名 ソーダとゆかいな仲間たち が初クリアしました》

《以降エリアクエスト『御神米と眠りの美少年』はノーマルクエスト『眠りの美少年』となります》

《貢献ポイントが20pt手に入ります。ローレンガのNPCの好感度が10%上昇します》

《第4都市ローレンガの雨が0時に止みます》

全体アナウンスのオンパレードだ。

『しばらく通知オンに出来ねえなこれ』

そう言いながら嬉しそうなソーダたち。

これだけの大型VRMMOで先行できるのはゲーマーとして誉れなのだろう。

『このあとは、どうする? もう少し狩りして耐性つけるか?』

『それなら、クランハウスに帰ってEP用に食べ物調達しないといけないな。ポータルもあるし一度クランハウスに戻ろうか』

水瓶のかぶり物を神官に返して、町外れへ移動だ。

『あのかぶり物くれなかったねッ!』

『さすがに無理じゃったなぁ〜』

『眠り完全耐性とか、恐ろしいものだったからね。ソーダにずっと被せていたかったわ』

『あれずっとはイヤだし、俺も耐性伸ばしたい』

『今後のためにも、ソーダには眠り耐性熟練度は上げてもらいたい』

そんな事を話しながら、クランハウスへ帰還。と、俺のフレンドチャットに伝言が。

クランのストレージを漁るみんなに声を掛ける。

「テーブルが出来上がったそうだよ。搬入日を聞かれてる」

「おお! マジか! いつでもいいけど……」

「俺がログインしてる時に搬入してもらえばいいか?」

クランハウスの扉は、クランメンバーが開けて、入室を許可すればいい。

「すまんがそれで頼む」

「ええー、早くテーブルクロスもカーテンも見に行かないとねぇ。ただ、ローレンガが開いちゃったから、そっちはまた後回しになっちゃいそうだわ」

「私は増水が収まったら砂金採りをするのじゃ!」

みんなやりたいことがいっぱいなので、テーブルは請け負う。

「カーテン類はボタニカル、だっけ? 緑系?」

「それがいいかなぁとは言ってたわ」

「藍染めのカーテンも綺麗だったよ。トウヤくんの家に使われてた。藍の濃いものじゃなくて、薄く染めた物もあった」

「あら、いいわね。一度見てみましょう」

グラデーションで下の方が青が濃くてきれいだった。

みんなはまたとんぼ返りでローレンガだそうだが、俺はもちろんアンジェリーナさんの貸本屋へ向かう。八海山には悪いけど、テーブルを搬入したあと迎えに来てもらおう。

「また石掘り行かないとなぁ」

「そうだな。移動用の在庫が目減りしてきたし、どうしたってしばらくこことローレンガを行き来することになる」

「石掘り?」

「緑水晶っていう石が掘れるところがあってね、ポータル1回出すのにそれ1回使うんだよ」

「……いくらくらいするんだ?」

「いいよ、クランで掘りに行くし。てか、セツナも今度一緒に行こう。石掘り競争すればあっという間だ」

消耗品を使ってるとは思わなかった。気をつけよう。

さて、アンジェリーナさんは受け取ってくれるのか!!!

「こんにちは〜」

「あらいらっしゃい、久しぶりね」

本当に本当にお久しぶりですよ!

今日も相変わらず美しい。NPCはイベントがない限り衣装は変わらない。まあ俺もいつもの服装で人のことは言えないが。

「ローレンガまで旅行していました。アンジェリーナさん、お酒は飲まれますか?」

「ごめんなさい。私お酒は飲まないの」

くっ……まあ、こっちが本命ですから!

「これ、藍染めのストールなんですが、お土産です」

俺の差し出したそれに、大きな瞳をさらに大きくしていた。

う、受け取ってもらえるか!?

その一瞬がとてもとても長い一瞬だった。

「ありがとう、嬉しいわ」

おおお!! 脈アリ? アリよりのアリ?

その場で首にゆるく巻いて、似合いすぎて卒倒しそうだ。

「日差しの強い日には頭から被っても良さそうね。通気性もいいし、素敵なものをありがとう」

「いえいえ、とてもお似合いです」

本当は本を読みたいのだが、ログアウトの時間が迫っている。今日はちょっと朝早くから出かけるので忙しい。

後ろ髪引かれまくりながら、本屋を後にした。

出たところで自分もこっそりストールを巻く。

おっそろい!!

酒は……ドワーフか。親方にでも渡すかぁ。テーブル受け取ったあと連絡を取ってみよう。

ログインして、軽くミュス狩り。朝の8時はさすがに早すぎるだろうと、ぶらぶら街を歩きながらマルスの家具店へ来た。

店の中を覗くと、前とは違って作りかけの家具があちこちに転がっていた。

「おはようございます」

「ああ! セツナさん。いらっしゃい」

「テーブルの搬入、今日ならいつでも大丈夫なんですが、いかがでしょうか?」

「そうですね……人手がいるので、昼ごろでも良いですか?」

「もちろん。クランの場所を教えておきます」

そう言って、彼の広げた地図にポイントを付ける。

「では、向かう時に連絡を入れますね」

「お願いします。楽しみです」

昼まで時間ができたから、ハザックの親方に連絡を飛ばす。

『ローレンガに旅行へ行ってきました。お土産にお酒があるんですが、いかがですか?』

はと座がぱたぱたと飛んでいく。

秒で返信が来た。

『今すぐうちに来い!』

まあそうなるな。