軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

383.杖と魔石のマッチング

結局リアル時間三日ほど通い詰めてやっと一つ反応があるものが出た。

途中『杖と相性がいい』などの文言がない普通の魔石は売ってしまおうかともなったが、どうせなら杖に向いた魔石のドロップ率も見てもらおうということになって、全部持ってきた。

そう、杖職人広場である。

「さて、どうかな」

ハミエル爺さんがテーブルの前で仁王立ちしている。俺たちはファマルソアンさんを伴ってきていた。テーブルは職人さんたちが運んでくれました。

「それでは、俺たちが最初に持ってきた枝は全部で二十五本です。これはこの時点で選別しており、すべてが【鑑定】で『ほどよく樹液の抜けた杖に最適なソウトゥースオークの枝』です。さらにこちらに八十三個の魔石」

周囲の職人たちからおお、と声が漏れる。

「この中に十九個の『杖と相性のいい』『杖に愛された』などの杖の材料になりそうな魔石が混ざっています」

そう、枝はみんな同じ表現だったが、魔石は色々あったのだ。

そう言ってソーダが案山子を促してその場を交代する。杖だから、案山子が活躍した方がいいかなと思ったのだ。

【鑑定】を使い、案山子がテーブルの上に広がった魔石の中から杖に向きそうなものを取り出そうとすると、ハミエル爺さんがその手を止める。

そして真剣な顔をして魔石をよりだした。

周囲のエルフたちは、えっとかうんうんなど同意したり意外そうな顔をしたり百面相でそれを見守っていた。

選んだのは全部で二十個。

「どうだろう」

と挑むような目つきで案山子に尋ねる。

「それでは遠慮なくッ!」

この作業はつまり、お前の審美眼はこれくらいだと示してしまうものだ。クエストのタイトル、杖職人の矜持との戦いを繰り広げ……容赦ないな。まったく迷うそぶりがない。

ひょいひょいと案山子は遠慮もなくより分ける。それでもすごい。ハミエル爺さんの二十個中十個は正解なのだから。

周囲のエルフたちはあわわわわって顔をしていた。

ちなみに俺も。

「それで、この石と相性がいいのはこの枝!」

明らかにわかる反応。それは、石を枝で軽く叩いたときに現れる。コツンという音とともに、星屑のようなキラキラが弾けるのだ。

それ以前に【鑑定】には、『相性のいい杖、魔石がそばにいる予感★』との文言が増える。大変わかりやすい。

「おお!」

「確かめる前にわかっていたようだな」

「【鑑定】恐ろしいスキルだ……」

「来訪者が羨ましいな」

などと囁かれる。

まあ、職人からしたら欲しいスキルだろうなぁ。

ハミエル爺さんはうーんと唸っていた。

「さて、どうでしょうか?」

ソーダが案山子の隣で問うと、ハミエル爺さんは深く息を吐いた。

「確かに、便利な能力だ」

それでも複雑そうだ。自分たちの審美眼よりも来訪者のスキルの方が確かだと証明されてしまったのだから。

こうね、やっぱり仕事人の歴史というか、今までの鍛錬というか、積み上げてきたものが成り代わってしまうという無念さ的なものはあると思うんだ。

それでもさ、計算機は発達してもそろばんはなくならないんだよ。

「わかった。【鑑定】スキルの素晴らしさは理解したよ」

ハミエル爺さんが受け入れる態度を示せば、周りはもちろん食いついた。

「ぜひうちにある枝と石を見てくれ!」

「迷いなく枝と魔石を選んでいたが、それも【鑑定】でわかることなのか?」

「この際だ、全部持ちよって試してみよう」

喜びに沸く中、案山子がハミエル爺さんに笑いかけた。

「役割ってヤツだよッ! 俺っち料理人だけど全部の材料見つけるの無理だもんッ! そんなことしてたら料理作る暇なんてなくなっちゃうよッ! 杖だって、一から俺っちが作ってらんないよッ! 今はお金ないけど、お金たくさんもって杖を見に来るから、それまでにたくさん杖作っておいて、お爺ちゃんッ!」

とはいうが、食材から調達するのが来訪者だけどね。

「そうだな……杖作りに専念できると思えば、か」

《クエスト 杖職人の矜持との戦い をクリアしました》

わーい、やった! クエストクリアだぜー。

といっても杖職人ストリートを開放しました等のアナウンスが入りはしないので、たぶんこれは【鑑定】持ちが受けられるクエストなのかなと思います。

その後はあちこちの店に呼ばれて、俺と案山子は【鑑定】しまくった。

ハミエル爺さんのところの秘蔵の魔石が杖向きではなかったときの気まずさといったらない! あと、先祖代々大切にしていた枝が『薪に最適な水分の抜けきったソウトゥースオークの枝』だったときとかね! ひどい、やめてよ。

職人たちが枝と魔石を持ち寄って、また【鑑定】すると、ドキドキしてる枝や、そわそわしている魔石もたくさんあった。

「おかげでしばらく職人たちは大忙しだな」

秘蔵の魔石が単なる魔石のときはかなり落ち込んでいたけど、その後は気持ちを入れ替えたらしく、次々自分の手元にある枝と魔石をマッチングさせていた。

なんか婚活番組みたいになってて、これの問題は、枝と魔石の所有者が違うとき、だった。というかほぼそれ。

「まあそこら辺は上手く本人たちで解決していただきましょうね」

ファマルソアンが笑っている。

「枝と魔石を冒険者ギルドで【鑑定】持ちの来訪者に依頼して、杖職人全体で在庫として持って、マッチングしたやつから職人に売るといった風にした方がいい気がするな」

八海山の言葉にピロリが疑問を呈す。

「どこの職人にどれだけの値段で回すかとか、揉めないかしら?」

「杖を回す順番を決めておけばいいんじゃないか?」

「うーん、値段は?」

「それは普段の値段をどのように決めているかだな。それか魔石主体、または枝主体にするかを決めて、それぞれ枝を買って魔石を待つ、とか?」

「いつまでたっても合う魔石が現れなくて杖が作れない職人が出てきそうだな」

結構真剣に話し始めてて、周りのエルフがぽかんとしていた。

ファマルソアンはニコニコしていた。

「ソーダさん、杖には向かなかった魔石はこちらで買い取りしてもよろしいでしょうか?」

「需要あります?」

「とても美しいですからね。宝飾品に加工したいです」

ぜひ! ということになった。借金返済ゲーム中だからね。

まあとにかく、クエストをクリアできてよかった。