軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

382.ブラウンオッター

それぞれに風を付与して、せっかくなので【フロストダイス】の無防備状態からのダメージを狙った。

ダメージの数値でいえばやはりピロリが一番だ。

「【一刀両断】」

付与の風も載って、かなりいい数値を叩き出す。

『いやー、弱点属性気持ちいいわ~』

ピロリはまだ付与の専用スキルは手に入っていないという。師事する相手が見つからないらしい。ダンジョンを駆け巡っていてNPCとそれほど協力したりクエストを積極的にクリアしたりしていないせいだと言っていた。

『クエスト、おつかいが多いから面倒なのよお』

気持ちはわからなくはない。戦闘が好きな、ゲームで戦うことを目指してやってきているタイプだ。

「【烈風】」

風の刃が範囲に吹きすさぶ。

ブラウンオッターは雄叫びをあげる。まあ、痛いよな。風のバフはないので範囲に入るとこちらもダメージなので、刃を受けつつも突進してきたオッターをソーダが押し返していた。

『力つよっ! 八海山、バフ切らさないでくれ。押し負ける』

『了解した』

「【フロストダイス】」

風の刃が終わった瞬間を狙って柚子が再びブラウンオッターを凍らせる。こういった時間管理が難しい。

『HP1/3になったッ。もう一回今のルーティーン喰らわせたらダメージなしでいけそうだねッ』

案山子は【フロストサークル】が吹き荒れているとき、発動の早い【ダークストライク】で氷割り。あと、俺にMPくれる。助かる。

一匹ならこの凍らせ反則ルーティーンでなんとかなりそうだ。二匹だと、凍らせるのを手間取ったらスキルを食らいそう。

と、完全に沈黙したと思ったのに、ブラウンオッターが立ち上がった。さっきまで筋肉誇示していたのに、なんかしわしわのよれよれになっている!

筋肉でダメージ受けたのかな? そしてくるりと俺たちに背を向けて走り出し、湖に飛び込んだ。

これがたぶん言っていた、負けそうになると逃げるってやつだ。

『とりあえずこの距離で他のブラウンオッターに気づかれずにやれるってのがわかってよかった』

『でも湖の近くはかなりの数がいるからダメね』

倒したはいいが、あいつの巣穴がわからなかった。まあ、倒せるかどうかの確認なのでOK。ドロップはなし。あれは倒しきることのできないモンスターなのだろう。

『湖近くの巣穴探しは難しいな。木のウロに巣がないか探そう』

八海山の提案に俺たちは頷く。手分けして、巣らしきものを見つけたら【鑑定】して確定させようということになった。何せ、巣がどのようになっているかわからない。見つからないように巣穴を作っているならなおのことだ。

湖から二メートルくらい離れたあたりから、木が生える。なぜか湖の周りぐるっと木が生えていない。だがそれも彼らを観察していたらわかった。

あいつら、湖の周りで筋トレしてやがる。筋トレするスペースを作ってるのだ。腕立て伏せしてる。腹筋も。寝転んで仲間を持ち上げてるのは、ベンチプレスみたいな?

『それでいて光り物を溜め込むって、どういう了見だ……』

『ダンベルとか溜め込んでいそうだよねッ!』

『あ、巣穴っぽいの発見したのじゃ~』

呼ばれて向かう。【鑑定】すると大正解だ。

ブラウンオッターの巣穴と表示された。

木も一つ一つがかなり大きなものだ。幹が太い。ウロに柚子くらいの大きさのブラウンオッターが入り、そこから地下を掘って湖にも繋がっているようだった。

『よし、掘るわよ』

『掘ったら来そうでござるね』

『初手、セツナの【フロストダイス】そこから柚子の【フロストサークル】。ピロリ、セツナの【烈風】。氷割りを各自きちんとするように』

狩りの手順は決まった。

掘る道具はみんなが持っていたのでお任せして俺は周囲の警戒に当たった。

『あったぞー。手のひら大だな。レインボータートルの卵よりは小さい』

宝石はウロから入って少し行ったところの横穴にあったという。

うん……わからないから周囲を湖に向けて掘って横穴にぶち当たったらさらに掘っていくという、台無しな感じにやりました。

これ、巣としてはもう使えない。

『あ、一匹凄い速さで近づいてくる』

「【フロストダイス】」

セ○ムでもついていたのか、宝石発見の一報からすぐ動き出した個体がいる。

ブラウンオッターが逃げた後、巣穴を漁ると言っていたしもっとありそうだ。

基本決めたルーティーンでなんとか撃退し、さらに巣穴を暴く。なかなかひどい泥棒っぷりだ。

『どうする? 枝をここでチェックするか、他にいくつか巣穴やってからチェックするか』

『どうせこの宝石もあそこの杖屋たちに売れるんでしょう? いっぱい採れるだけ採っていこう』

盗れるだけ盗って行こうということになった。

そして巣穴三つ目で事件が起こる。

『ううう、私はひどいヤツなのじゃ』

『こっち見ないでっ!! つぶらな瞳っ!』

『罪悪感が積み上がったでござる』

巣穴でムキムキマッチョになっていないブラウンオッターの赤ちゃんに出会いました。

お、お母さんが走ってくるよっ!!

『言い訳したいけどできないし、ひとまずお引き取り願おう』

向かってくる敵は容赦なく叩く。湖に帰るだけでほら、またほとぼりが冷めれば子どものところにくるよ。

きぃーきぃーと俺たちに警戒音を発する子オッターをそっと脇に避けて、半蔵門線と案山子がせっせと宝石を盗っていました。

『ひどいのじゃ!! よくそんなことがっ……』

『しかし巣はもう壊してしまったでござるしね。ただ壊されるだけより、宝石狙いだったの方があちらも納得がいくでござるよ』

『俺っちッ! 新しい杖欲しいもんッ! 知力10プラスくらいのヤツッ!』

だからそれは本を読めと。

そうやって五つの巣を破壊し大泥棒をやったところ、二十個ほどの魔石を手に入れることができた。

ログアウトの時間も近づいてきたのでクランハウスに戻る。宝石でなく、魔石なのはなぜかと思っていたが、湖を【鑑定】したところ、『星空を写し取り、その力を石に変える湖』とあった。

こいつはこいつでまた何かありそうな湖である。

『簡単に合うものがあるか確かめるかあ』

としたのだが、二十個拾ってきて杖に向く魔石が五個しかなかった。

『しぶい、しぶいのじゃっ!』

『しばらく通わないとかな』

『だが、この魔石自体はファマルソアンに売れるのではないか?』

『だねッ! 換金してセツナ君に借金返すよッ!』

『クラン資金も貯めないとだめよね~今ゼロよ~』

持っていた枝との相性もさほどだったようで、杖職人たちが言う、あからさまな反応はなかった。

『まあ、資金貯めがてらしばらく通うかあ』

お金は大事ですね。

俺たちはうんうんと頷いた。