軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

365.蜃気楼の楼閣

分かれる前にピロリと半蔵門線に水付与をしていたら、ダインがチラッチラッってしてきた。しかたないな。

「サンキュー! あとで金ちゃんと払うから」

水を付与された剣は、剣の周りが水でちょろちょろしている。それで斬ると触れた辺りが魔人を形成できなくなる。

ウォーターボールはそこまで範囲が広くないから、そうやって砂の魔人を削っていくしかない。だんだんと形が小さくなっていくのだ。

砂の魔人は俺たちと同じような背格好でかなりの数がいた。魔人というからには人型で、拳で殴ってくる。その形状を他の部分を犠牲にすることで変えられるらしく、手のひらがいきなり大きくなって逃げ損ねている人たちもいた。

反対に、ソーダが盾で守るとわざと飛び散ってそのままするすると戻っていくのだ。なかなかにこざかしい。

水魔法を持っていない人たちが結構いて、俺の【濁流】はそれなりに感謝された。

そのうちアライアンスの方に魔人の核があるという話が流れてくる。ちょうど首の付け根の辺りなので、ウォーターボールで狙うのはそこががベストだという話になった。戦闘時間を短くできる。

かなりの数の砂の魔人も、30分ほどで来訪者たちによって殲滅された。

《ミッションクリア! リアル時間1週間、ビーチエリアに蜃気楼の楼閣が現れます》

『ハマグリがさらになんか吐き出し始めたぞ!』

『おおお! 蜃気楼の楼閣! かっけえ!』

最初にいたあたりからちょっと離れていたのだが、それでも見えるくらい大きい。

東寺の五重塔に似ている。

色は暗めの木の色だ。屋根は緑色に塗ってあった。

『みんなー! 戻ってきて~私たちもレッツトライしてみましょう』

『了解ッ!』

アライアンスがさっさと解かれている。みんなそれぞれ突撃したようだ。

最初の位置に戻るとロジックと蒼炎のみなさんがいた。

「あ、セツナ君、お金お金」

そういって10万シェル渡される。

「これはちょっと多いです」

「ん、いいよ。みんなの前で付与してもらったからさ。同じように言われるかもしれないだろう? そのときしっかり取れるように。ダインからは10万シェルもらったって言えばいい。汎用と、専用があるっていうし、専用は30万くらいとればいいよ。そのくらいしないと行き合った狩り場で集られる」

行き合った狩り場……ミュス狩り場?

「それでどうする? うちは別にいいけど」

トーナメントにも出ていた蒼炎の結愛さんが、斧を肩に担いで問う。少し苛ついているように思える。

「あ、ああ。うちも構わない」

と、ダイン。

「初ダンジョンだし、転んだらたぶんこの集中具合だとマップに戻るのが難しそうだし、アライアンス組んで行けるところまで行ってみようかって話になってるんだ」

ソーダの説明に後から来た俺は別にOK。柚子と案山子も大丈夫だと同意して3クランで行くことになった。

「すでにスレでとんでもないことになっているみたいだし、デスペナ覚悟だな、これは」

「楽しみ~! 私今10%だから余裕余裕」

「拙者またもや1%の無敵の人でござるよ」

「90%とかはやめとけよ……」

チラリとソーダが蒼炎を見ると、黒豆が笑った。

「みんな問題ないそうです。俺も今20%なんで」

心なしかダインたちもホッとした様子。

黒豆が先に転んだら、蒼炎の人が殺伐としそうで怖いからな。

「ネタバレ禁止だからねっ!」

「初見が面白いのですー」

蒼炎の女性が2人、八海山に詰め寄っている。

「ネタバレじゃない方を見ただけだよ。挑戦している人数と混み具合を見ておきたい」

俺以外のみんなは、他クランメンバーの職と立ち回りもだいたい把握しているらしく、簡単な打ち合わせをして、いざ参らん。

《蜃気楼の楼閣 第一層 地輪》

楼閣の階段を上り、入り口をくぐると響くアナウンス。

『地輪?』

『じりんだって。なんだろうな』

ソーダが言いながら先を行く。本来は半蔵門線が【気配察知】を使いながら行くのだが、1番新しい街のダンジョンだ。敵も手強くなっていると考えてタンクが先を行くことになった。

ソーダはとりあえず飛んできた物を受けたりするスキルもあるしということで先頭を買って出ていた。

が、そこで扉が3つ出てきた。他にも冒険者がたくさんいる。冒険者というよりは来訪者だ。

みんなぐったりしていた。

『どうしたんですかね』

『聞いてみるか? ネタバレしたくない?』

ロジックの魔法使いとダインが、蒼炎メンバーに問う。

『ここで聞くなら?』

『第一層で終わりたくはないのです~』

ネタバレしていいのか、しちゃだめなのか、どっちなんだいという気持ちと、スレッド見るのと現地で聞き込みするのは訳が違うよねという気持ちが半々だ。

許可が出たとばかりにダインがへたり込んでる来訪者に話しかけに向かう。

「よっ! ここどんなダンジョンなの? 強いの来るの?」

めっちゃ軽い。いや、確かにもともと話しやすいお兄さんだったんだけど、それにしても軽い。

「えっ? ……あ、ダインさん。あの、ここなんか、だるまさんがころんだなんですよ。じっと耐え忍ぶがいいって。失敗すると上から足がやってきて、踏みつけられます」

「マジか……俺、止まってられるかなぁ」

「ちょっとでも動いたらアウトです。判定はかなりシビアで……私はあと2回で今回の挑戦は終わりだって言われてます」

銀髪の女の子はうなだれていた。

「うわぁ……回数制限か」

「今のところデスペナはないんですけど、その上限行ったらどうなるかわからないですし」

情報ありがとうとお礼を言って、ダインはこちらへ戻ってくる。

待機場はかなり広い。あちこちでパーティーが休憩していた。

『1階からクリアならずは確かに嫌だなぁ。越えておきたい』

『てか、だるまさんが転んだなら、前方に見張る人がいるはずよね? どんな規模感なのかしら……』

『とりあえず1回行ってみるかー。試しにな』

何事も挑戦だ!

回数制限があるということは、試せるってことなんだから。

それにしても扉はなぜ3つあるのだろう? ということで、それぞれクランで分かれて入ってみることにした。

《すべてを支える大地。地輪の本質は耐え忍ぶこと》

『忍者のようでござるねー。共感しかないでござる~』

《それでいていざというときには素早く動くことも必要》

《背を向けた瞬間駆け抜けろ》

「みょうーおうーさまがーこーろんだー」

星座推しが消えた……。明王様て。五重塔だからか?

いきなり始まっていた。俺たちのいる場所はずっと真っ直ぐ。扉をくぐってアナウンスが終わったと同時に横に一列となって並んでいた。

前方にスポットライトが当たって、わかりやすい、僧侶姿の人物が後ろを向いて言い終わるともにこちらを向く。

距離は、100メートル以上。凄く長い。楼閣はゆらゆら揺れていたので大きさは不確かだが、それでもこんな長い直線が入るような奥行きはなかったように思う。

塔の中は異空間だ。

『だるまさんが転んだじゃないでござるね』

『そこはッ! たぶん、わかりやすく言ってくれたッ?』

「みょうおうさまがこーろんだー」

ダッシュ。みょって言った瞬間ダッシュ。

『セツナ!?』

ろ、あたりでストップ。絶対動かないマンした。

「みょうおうさまがころんだ」

今度は凄く早口。

ここは動かない。

『むずかしいな。進み所がわからない!』