軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

330.ヴァージルのお兄ちゃん

部屋に通されソファに座ると、セバスチャンが出て行き、メイドさんがお茶とお菓子を準備してくれた。ありがたくいただいて待っていると、なんとトラヴィスをともなったセバスチャン登場。

「聖地ぶりだね、セツナ君」

「こんにちは、急にお邪魔してすみません」

ちらりとセバスチャンを見るが、彼は自分のつま先から10センチくらいのところへ視線を落としてこちらに見向きもしない。

トラヴィスがハハハと笑う。

「セツナ君はうちの大切なお客様だからね。領主一族が相手をしないといけないってことさ」

つまり、セバスチャン相手に話そうと思ってたけどそれじゃあダメなのか。

お飾りでもトラヴィスに話しておけと。

「ええと。じゃあ、ちょっと狩りをして遊んでた時に行き合ったんですけど……」

と前置きして、ランカの実を盗んだ者たちの話をすると、トラヴィスは目を白黒させ、セバスチャンは能面のようになっていった。

俺の話が終わると、セバスチャンがそのまま部屋を出て行く。

「誰に伝えるべきか悩む案件だったんで。ヴァージルはもう家を出たってよく言うし、あんまり心配かけるのも、ね」

「いや、そうだね……たぶん今父か兄に話が行ってるだろうから、冷めてしまったがお茶でも飲んで待っていてくれ」

メイドさんもセバスチャンさんもいないので俺たちは2人で冷たい茶をすするのだ。

「トラヴィスさんは最近は何をしてるんですか? 聖地に行くちょっと前とか、後とか」

「俺は……一応領地の仕事を……させられてます」

「ギャンブルは?」

すいっと目をそらされた。俺はじとっと逃がさないという気持ちで見つめる。

「まあ、前みたいなことにはならないというかうん……」

「ツケはダメ」

「ツケは、ダメだな。金が入ったらその範囲で遊ぶようにしてる」

それで終わればいいんですけどね。

じとっと見やる。

と、扉がノックされて入ってきたのは……おお、ヴァージルをごつさ増しした感じ!

キラキラ成分を発してはないけれど、顔立ちがよい。キリリとして頭の良さそうな実業家といった感じだ。眉がすごい、キリッってなって主張してくる。色味は同じく金髪と緑色の瞳。

「君がセツナさんだね、ジェローム・アスター。ヴァージルやトラヴィスの兄だ」

すっと出してくる手がごつい!

俺も立ち上がって手を握る。

「セツナです。いつもお世話になっております」

「いやいや、こちらの方があなたには助けてもらっている。トラヴィスの件に関してはかなり尽力していただけたとか」

好感度マシマシな予感。話が早く進みそうでよかった。

さあ座ってと促され、紅茶が温かいものに変えられる。

「さて、ランカの実についてらしいね。あれは領地の中でもごくごく一部の場所にしか生えず、塀で囲い、出荷を管理しているんだが」

「そうですね、塀で囲ってありました。管理の担当って……」

「バスタビア子爵が昔から管理をしている」

oh……つまり、自分で管理し自分で盗人雇ってしてるのか。

俺の表情に気付いたジェローム兄ちゃんは、むっと眉を寄せる。お顔が一気に怖くなる。

「盗人たちが子爵様と言っていたので」

「つまり、確証はないが、可能性は高いと言うことか」

まあ、クエスト名からしてそうなんだけど、それは言わないお約束。

「その盗賊どもが繋がる先を見つけてから捕まえなければ、第2第3の盗人が現れるということだな」

「そうだと思います。あくまで彼らは雇われた者で、ごろつきですから、証拠能力に乏しいというか……」

「言い逃れされて終わりだな。そして今度はもっと警戒を深めてランカの実をかすめ取って行くと……ありがとう、セツナさん。トラヴィスの件といい、風の村の件といい、我が領は貴方に救われている」

そうだ、アネモネのレイスダンジョンもイェーメールだったな。

「お礼をしなければならないな……今は父が少し領地を離れているので、今度折を見て食事に招待させてくれ」

「いえいえいえ、好奇心旺盛な来訪者が行く先々でしでかしているだけですから、お気になさらず」

好き勝手してるのと、クエストです。

「セバスチャン、騎士たちを集めてくれ。今夜から彼の地を見張らねばならぬ」

「承知いたしました」

「セツナさんはどうする? 結末を見届けるか?」

正直見届けたいっ!

「多分、夜中の0時頃に眠りにつかなければならないんです。最後まではいけないかもしれないです」

「まあ、そやつらの話で、今夜が決行日だとはわからないしな……一応ヴァージルから連絡を入れさせよう。タイミングが合えば気にせず連絡をくれ」

「ヴァージル、ですか」

「使える者は使うんだよ、セツナさん。あれの戦力はバカにならん」

「聖騎士団団長を……」

「イェーメールの領地としてどれだけ神殿に寄進していると思う? あちらの手が足りぬ時はこちらの騎士や兵士も使うのだ。お互い様だろう。何も聖騎士団全部来いというわけではない。たまの休みに実家の手伝いをさせるだけさ」

お手伝いに聖騎士団団長をちょろっと使うお兄様、つよつよだな。

それか、兄弟の仲が良いか。

公私混同と言われないならまあ。ヴァージルが死ぬことはないだろうしね!!

ログインするとヴァージルから連絡が来ていました。今夜盗人さんたちが出勤するらしい。

『ヴァージルおはよう。俺も参加していい? 集合場所教えて』

フレンドメールを送ったあとは直ぐに動けるようアランブレからイェーメールに向けて歩きながらミュス狩り。もう薄暗くなってきている。

ほどなくして返信が来た。薄闇の中を半透明の鳩がパタパタと飛んでくるのだ。

『屋敷に来てくれるか?』

喜んで~。イェーメールの冒険者ギルドに行って急いで納品だけ済ませてきた。噂のミュス大行進を発生させないためにこまめなミュス狩りをさせていただきます。

屋敷の門番さんはこの間の方で、俺が声を掛けるより前に門を通してくれた。顔パスに昇格しましたよ。

「いらっしゃいませセツナ様」

セバスチャンが出迎えてくれて、その後ろから冒険者スタイルのヴァージルがやってくる。

「セツナ、こっちだ」

呼ばれて後をついて行くが、廊下ではちょっとグチグチ言われました。

「アスター家のことなら俺に言ってくれればよかったのに」

口を尖らせているヴァージル。

スクショタイムかこれ。

「いやさ、一応籍を抜いてるって言ってたし、貴族ごとじゃない?」

「各地の聖騎士団はその土地の領主とも上手くやっていくのが基本方針だよ。だからこうやってことあるごとに呼び出されるし、籍を抜いたと言ってもそれは建前、手続き上だけだよ」

なんか拗ねてる。

「アスター家だけじゃなさそうなんだよな~。もともとこの話が入ってきたのがアランブレのとあるお貴族様からだし……穏健派の」

ヴァージルがピタリと足を止める。追い越した俺も立ち止まってそちらを見る。

にっこりと笑うヴァージル。

「詳しく話してもらおうか?」

「えーと、聞かなきゃ単なる好奇心旺盛な来訪者がたまたま見つけたことを持ってきたって流れになるのに?」

「きちんと、話してくれ」

ゆっくりしっかり言われました。