軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

329.盗人とランカの実

滋養強壮に効くランカの実が生るのは周囲にバッタのようなモンスターが出る場所だった。バッタ……ぎょろちゃんがですね、べろりんちょするんですよ。

ぎょろちゃんの舌ってどこまで伸びるんだろう?

べろりんして拘束された虫が、俺の前にぽいっと差し出される。それを串刺しにするのだが、頭部やらないと風魔法で細かい風の刃みたいなやつを吐き出すし、かといって頭部だけ狙うと暴れて後ろ足でこちらを傷付けようとしてくる。バッタの足、スパッと切れてダメージがそれなりにつく。

結局、頭部から体までをすっと串刺しにすることになった。ぎょろちゃんがまた絶妙な加減で串刺ししやすいよう差し出してくれるのだ。

ほんっとおりこうさん! 可愛い! 最高、俺のぎょろちゃん!

バッタを始末しつつ、ランカの木が群生するマップへ侵入しようとすると……おお? 立て看板があるよ。柵もついている。

なになに……?

《ここはイェーメール領主、アスター家の敷地である、許可なき者の侵入を禁ずる》

ほうほうほう。

アスター家の所属なんだね。ちなみに今はもう夜中。敷地だというわりに見張りなどはいない。入ったら怒られるかなぁ……ヴァージル効果で不問に……ならなかったときが怖いから入るのは止めよう。

と、【気配察知】さんが。本当にお役立ちがすごいけど、まあこれきっとイベントだもんな。

俺は身を低くして移動する。人の気配から距離を取る。暗めのフードつきローブだし、今日は月が見えていないので【夜目】がなかったら何も見えてない。この辺りの草は腰の高さまであるから、あちらからも見つけにくいだろう。

闇夜に紛れてやってくるのは5人の男たち。

対人5人は無理だ。危なくなったらクランハウスに帰還だな。

彼らは何やらぼそぼそと会話を交わしていた。

俺は【聞き耳】を立てる。

「南の木が今日辺り熟していた」

「いいか、必ず10個に1個だ。その割合で採るようにしろ。採り過ぎるな」

「2週間後に収穫時期だから、それまでにあと1回くらいは来たいな」

「明日も管理者のチェックが入るだろう。その後もう1度だけやるぞ」

「1つでもかなりの儲けになるからな……」

うんうん、盗人さんだ。

どうしよう。もう1回来るってときに捕まえてもらうのも大事だよな。でもそこで逃したら終わり。ってことは……あとをつけるしかない。幸いまだ丸1日遊べるから、時間的には問題なしだ。

問題は、この後をつける技術がどこまであるか、である!!

《ミッション! ランカの実を盗む者たちの後を、気付かれないように尾行しろ》

おおお、ミッション来た!!

頑張るぞ~。【気配察知】の範囲ギリギリを行くべきなのかな?

と思っていたら、彼ら途中から馬に乗り始めました。そんな大きな荷物抱えて、馬!?

ぎょろちゃんで……と思ったが、目立つ。ぎょろちゃん、隠密は無理なんだよ。月がないから美しいメタリックなボディに反射する明かりはないと思いきや、己の後ろ足から噴出する火がね! ばれっばれになるんだよ。

ということでもう必死で追いかけた。必死で必死で、とにかく駆けました。これでもスキルでかなり早くなってるんだよ。

だけど、結局は見失った……。

ミッション失敗だよー!! と思ったが、失敗アナウンスは来ない。あれれ?

俺はキョロキョロあたりを探す。とりあえず進んでいた方向に適当に行くと、遠くにオレンジの光が見えた。あの距離は【気配察知】さんには無理。

さらに近づくと、おお、見失った犯人たちがいる!!

森の中を少し行ったところなのだが、掘っ立て小屋に明かりが点っていた。

ここが盗んできた実を一時的に隠したりするところなのかな。

広げた地図にピンを立てておいた。

森なので木がたくさん生えていて小屋のそばまでなんなく近づくことができた。窓の下に張り付くと再び【聞き耳】だ。立て付けが悪いというか、本当に簡素な小屋なので隙間だらけ。中の声も漏れまくりだった。

「1つで20万シェルするからな。全部で……60か。いいな。これまでに集めたものと、あと1回分合わせれば6000万シェルはくだらねえ」

300も盗まれてるんかっ!!

いや、実自体はかなり小さめ。ミカンみたいな色と大きさなんだよな。緑色でちょっと黄色が入ってるような。小ぶりなヤツ。

それが木にたわわになっていたから、数日に分けて600程度じゃわからないのか。

「あの土地でしか育たないってんだから不思議な実だよなあ」

「希少価値が高いおかげでこちらも儲けさせてもらうんだから、ありがたいことだろうが」

「あとは子爵様のところに届ければ今年のこの仕事も終わりだ。お疲れさん」

「この仕事は労力に対してこちらの実入りがいいから、来年も続けたいな」

うんうんと、盗人たちは大声で笑い合いながら酒を飲み始めた。

うーん。

これはこいつらだけ捕まえてもダメだな。

どうしよっかなぁ、誰に連絡取る? ヴァージル忙しいだろうし、これはどちらかというと家のことだ。仕方ない。この際直接行くかぁ。たぶん、アスター家への貢献度を考えると、突撃訪問しても無下にはされないはず。セバスチャンさんが入れてくれそう。

夜なのでさすがにまだ失礼にあたるから、クランハウスへジャンプ! からの、ミュス狩りしつつイェーメールに徒歩移動である。

そういや、聖地で牛丼振る舞いすぎたって言ってた。最後の酒盛りの時なんて、酒屋で飲んでるのに酒屋の人も案山子のご飯食べてたからな。

牛さん狩りを強行した。火魔法は肉が焼けてしまうという大変なことになったので、風を使って狩りをした。

牛さんの背中に乗り、ロデオごっこをして、【青嵐】とかね!

たーのしぃー!!

夜が明けてきたから、冒険者ギルドで尻尾を納品。

少し早いかもしれないけど時間が惜しいのでアスター家に。

門番さんに、悩んだ末セバスチャンさんを呼び出してもらった。だーいぶもめたけど、呼んできてもらうことに成功。

「こちらのセツナ様はアスター家が全力でおもてなしをしなければならない方です。今後はすぐお通しして私に連絡を」

門番さん恐縮してたけど、それが普通の反応なんで気にしないでください。

応接間へご案内だ。