軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

292.聖地の貸本屋

エルフの街を堪能する前に、最後の第6都市だけは行っておこうという話になった。1~5は一応現地の神殿に参拝しているので、また後回しだ。

第6都市は乙女座だ。

『美、女性、嫉妬、精神的不安』

『最後のが、こっちが不安だな』

『嫉妬も怖いでござるよ~』

『美かぁ……美しさについて祈ってみる?』

『もらえる加護が想像がつかないというか』

『女性だけもらえるとかッ!』

『そういったのはないと思うんだよなぁ~』

これというものが思いつかず、仕方なしにそれぞれ願う。

『えー、乙女座の神様、よろしくお願いします』

何も考えつかなかったソーダ。

『女性には常に紳士的に接して行きたいと思う』

生真面目な八海山。

『くのいち殿たちとも仲良く楽しく忍者ライフを続けたいと思うでござる』

言わずもがなの半蔵門線。

『可愛い衣装や可愛いアクセに出会えますように~』

ぶれずに可愛いを追求しようとするピロリ。中身ぃー!!

『美しい瓶細工を作りたいのじゃぁ~』

酒瓶ね。

『美味しいものをみんなで食べてハッピーになりたいッ!』

案山子のご飯はいつもハッピーだ。

『アンジェリーナさんともっともっと仲良くなれますように!!』

ダンスもお勉強したんですよ!

誰も加護をもらえませんでした。方向性を知りたいな。

加護の効果がわかれば方向性もわかるかもしれないが、まあわかるわけない。

『それじゃあエルフのクエスト探すかぁ~』

『別に付き合う必要はないよッ! 食材探ししながらうろつくだけだしッ』

『柚子もドワーフの都市に戻るか?』

『そうしようと思ってるのじゃ~せっかくなら第1発見者になりたいのじゃ!』

その気持ちはわかるけど、ドワーフって鍛冶系なんだよね。そっちの人たちからな気もする。手先が器用っていう初期設定があるらしいので、まあガラス職人もそれはそれでドワーフらしいといえばらしいが。

『じゃあここで解散にするか。何か面白いことがあれば連絡をとろう』

『クエスト探すわよ~!』

『ピロリは腕試し出場するならそこら辺の情報もさぐれよ?』

『たぶんヴァージルに聞いたらわかるとは思うけどね!』

『あと、むやみに喧嘩はしないでござる。聖地を追い出されるというワードが不穏でござるから』

お互い注意喚起をしつつお別れだ。

さてどうしよう。特にこれといって目的はないのだが、そうだ、貸本屋がないか聞こう! 1番聞きやすいのは……ファマルソアンさんか獣人の街かな? さっきので好感度が上がっていそうだ。

来た道を引き返し、エルフの率が高まってきたところで先ほどファマルソアンさんに渡された店の所在地を確認する。

おうおう……塔近くのいい場所に大きな敷地持ってるなぁ。

なんだかんだで金があるんだよね。あの人。

酒運びのバイトも金払いがいいし。投資することを惜しまないし。

この聖地の建物は基本みんな白。白い石で作られている。

「いらっしゃいませ」

店の扉は大きく、重かった。中の床は白と緑と青のタイルが張ってあった。ガラスのショウケースが並んでいる。ここもまた宝石を扱う店のようだ。

「ああ、セツナさん。早速来てくださったんですね」

「豪華なお店ですね」

「アランブレと第7都市の本店の次に気合いを入れた店ですね。神官様もいらっしゃいますし」

「え、神官も宝石買うの?」

「宝石というか、魔石は色々と用途がございますのでね」

ウィンクされたけど、これ以上聞いてくれるなってことかな。宝飾品も買ってるんだろうなぁ。

「セツナさんは今は宝石は必要ないですよね。何かご用ですか? 第7都市を案内しますか?」

「あ、そうそう。聖地に本屋はないかなと思って」

「本屋、ですか? 図書館ならありますよ。神殿の図書館ですからアランブレやウロブルよりは規模は小さいですが、聖地特有の蔵書も多いらしいですね」

図書館かぁ……本当は貸本屋がいいんだけどな。

「図書館以外は、ない?」

「そうですねえ、聖地に店は持っているとはいえ、ここに住んでいるわけではないので。うちの従業員に少し聞いてみましょう」

そしてなんと、第9都市のエリアに貸本屋があるということを知ったのだ。

「ありがとうございます! 行ってみます!」

従業員さんにお礼を言い、ファマルソアンに手を振ると、彼はニコニコと笑っていた。

ということで第9都市の区画にとんぼ返りだ。天秤座、正義のエリア。先ほどのめんどうな聖騎士リチャードさんのエリアだ。

確かに獣人はほとんど見られない。彼はなぜこんなところをうろついていたんだろうか? もしかして王子様このあたりにいる? となると、風当たりの強いエリアに獣人来訪者が詰めかけるとどうなるか……。リチャードさん総当たりになるのか!?

聖地がオープンした後が少し楽しみでもあるなこれは。

エピソード分岐があるのがわかっているからなおのことだ。Aでクリアしたが、Aがノーマルルートなのか、希少ルートなのかがちょっとわからない。

従業員さんに教えてもらった貸本屋は塔からだんだんと離れて、店舗よりも露店が多くなるその境目あたりにひっそりとあった。

俺が入ると奥のカウンターで男性が顔を上げる。ヒューマンタイプの茶色のどこにでもいそうな感じのといったら失礼だが本当に、どこにでもいそうなタイプ! ほら、こんなタイプが実は忍者の末裔とかそんななんだよ。来訪者の忍者、忍んでないからな……。

「いらっしゃい」

「こんにちは、本を借りてもいいですか?」

「来訪者さんが珍しいね。みんな図書館に行くのに」

「アランブレやイェーメールでも貸本屋さんにお世話になっているんですよ」

俺の言葉に彼はキラリと目を光らせた。

「もしかして、セツナ君かな?」

「あ、はいそうです」

俺が頷くと、彼はちょいちょいと手招きをする。カウンターへ近づくと、にやりと笑った。

「それで、どんな情報が必要なんだ?」

「えっ!?」

情報?

もしかしてここも情報ギルド!?

「ええと……今は純粋に本を借りに」

「ええっ!? それなら図書館でもいいだろう? 変わってるね~セツナ君」

それはまあそうなのだ。聖地の図書館も確かに見てはおきたいが、貸本屋は貸本屋で便利なことがあると思う。アンジェリーナさんがオススメしてきたりするのだ。ゲーム的にはわりとヒントなのかなと思うことも多い。

図書館ではこうはいかない。

詳しい本のタイトルや傾向を話して本の置き場に案内してもらう方式なのだ。

「本がありすぎるのも、選びきれないので」

何よりアンジェリーナさんと仲良くなるのが1番の目的だ。

ついでに貸本屋に来たのは、俺が貸本屋贔屓だとわかってもらうためっ!!

「それじゃあ、今日はどんな本を読む?」