軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

291.クエストがやってきた

さて次の塔へ向かおうかとしたところ、前方よりわんこ系獣人の団体さんがやってきた。全部で10人くらいいる。周囲の獣人たちが、おや、とかあら、とか囁き合っていた。そして俺たちの前で止まる。

仕方なくこちらもストップだ。

なんだろうと思っていたら八海山が声を上げた。

「先ほどの……」

先ほどの? 獣人さん?? よくよく見れば後ろの方にリチャードたちに囲まれていた犬系獣人がいた。

「息子が侮辱された時に助けてくれたのは君たちかな?」

八海山へ視線を向け、そして後ろの獣人に向ける。

どちらも頷くと、わんこさんたちは揃って頭を下げた。

「息子から話は聞いた。聖地で騒ぎを起こせば聖地から追放される。どう対処しようか考えあぐねていたところを助けていただいたと。お礼もそこそこに帰ってきたと聞いて……本当に情けない」

息子獣人さん首をすくめている。

「来訪者の方々だと聞いている。この度は息子が世話になった。感謝する」

「いえ、……我々は来訪者なのでそこら辺の確執はわからないが、大事にならなくてよかった」

「喧嘩するなら1対1よね~5人で囲むなんて恥ずかしいわぁ」

腕力つよつよさんがそう申しております。

そんなピロリにお父さんがふっと笑った。しかしすぐ真顔になる。

「聖地において聖騎士と敵対するということはあちこちで何かと不便が生じるものだ。息子のせいであなたたちの旅に支障が出るかもしれない。もしよろしければ我が都市の聖騎士と顔つなぎをすることもできるが……」

聖騎士には聖騎士をということか?

ただ、もう聖騎士とはどっぷり繋がっているのだ。

「いや……うーん」

八海山が言いよどむとソーダが前に出る。

「むしろ先ほどの相手は俺たちに標的を変更していると思う。そちらの聖騎士も巻き込めば聖騎士同士の争いになって大事になりそうだが?」

「聖騎士の後ろ盾っていうならイェーメールの聖騎士は完全にこちらの味方をしてくれるでござろう」

「第3聖騎士団と繋がりが?」

6人がこちらをちらっと見る。

「えー、騎士団長と友人で……ってか、あ! 俺 細剣(レイピア) のスキル教えてもらうのローランドさん? 第8都市の聖騎士さんって言ってたからもう繋がりありまくりですね」

「ローランド卿のお知り合いか」

「いや、第3聖騎士団長がお知り合いなだけですね」

俺の伝手ではないんだよ。

そうかとつぶやいてお父さんは黙り込んだ。

思案すること1分ほど。

「それならば下手なことはしない方がいいかもしれない。重ね重ね息子が世話になった。もし第8都市を訪れることがあれば是非我が家を訪ねて欲しい」

『あ、フレンドが来たな』

八海山へのご招待だ。

『これメンバーに獣人いないとダメ?』

『さあどうだろう? わからないけどソロでヒューマンだと印象値最悪から始まる感じだったらちょっと難しそうだな』

『人として恥ずかしいって喧嘩売ればいけるんじゃない?』

クエストがあるとわかっていたら意地でももぎ取りに行きたいのはわかる。

『ほら、エピソードAでクリアと言われていたから、色々パターンがありそうなのじゃ』

俺たちがパーティーチャットでごちゃごちゃ言い合っているうちに彼らはそれではと去って行った。去り際、息子獣人さんももう一度こちらを見て頭を下げていた。

「あんたらウォール家の息子さんを助けたの? それはそれは」

「これはおまけだよ、持って行きな!」

ちっちゃいリンゴ飴もらった。

「ウォール家って?」

「王の護衛の一族さ」

「王様……?」

王様はアランブレに住んでいるんじゃないのか?

「ああ、来訪者だったね。獣人について知らないのか……まあ、長い歴史があったってことさ。その上で今は第8都市は獣人の街になっている。もちろん他の種も普通に住んでいるし、テラエトゥーラ王国の一部ではあるが、獣人ってのは獣人の王がまずありきなのさ」

群れって感じなのかな? 獣だけに。

「その王に仕えている筆頭がウォール家だ。さっきの話だとぼっちゃんがヒューマンに絡まれていたみたいだね。特に第9、10都市のヒューマンの中には根強い獣人差別主義がいるからねえ。もうそんなご時世じゃないってのに」

本当に複雑な話がありそうだ。エー面白そう。本屋に行きたい!!

「ま、来訪者にはあまり関係のないことだよ。ぜひ第8都市にも遊びに来たらいい」

《獣人種族クエストが開かれました。各地を移動する獣人の王子と話し、獣人たちの歴史を堪能ください》

『き、来たのじゃーっ!!』

『獣人の王子?』

『手始めはどこなんだろう』

『最初の1歩がわからないッ!』

『うーん、聖地にいる間にわかればいいのでござるが。こうやって開かれるってことは、一応第5都市までか、この聖地がとっかかりでござろう?』

移動を始めながらパーティーチャットが賑わう。

『これはさ、やっぱりエルフもドワーフもあるな、聖地で始めるんじゃね?』

『今度貸本屋でドワーフについて調べるのじゃ』

『ヒントがあるかもしれないねッ!』

さて、お隣の塔は第7都市の塔。獣人がたくさんいたのに段々とそれにエルフが混じり始めた。

塔の星座は射手座。

『セツナ、射手座』

『えーっと』

知識項目をスライドする。

『弓、馬、音楽、軽率』

『なんじゃそれは……』

『弓師が欲しいやつかなッ?』

『軽率でござるか……』

まあそこもギリシャ神話からかな。

『どんな風にお祈りしたらいいかしら~』

などと話しながら列に並んでいると声を掛けられた。

「おや、セツナさんたちはもう着いてらっしゃったんですね」

声の主は、ファマルソアンさんだ。

「あれ、ファマルソアンさんも聖地に来てたんですね」

「おはようなのじゃ~」

「お店こっちにもあるんですか?」

俺たちの問いにニコニコと頷き返す。

「そうなんですよ。聖地はまた特殊ですからね。情報が集まる場所でもある。商売をするには通らずにはいられない場所です。今回は3年に1度の奉納試合がありますからね。人も集まる。商売もはかどります」

来訪者は間違いなく来るしな。

「もしよかったら店に寄って行ってください」

とりあえずは塔に参拝するということで別れた。

『エルフのクエスト、ファマルソアンさん周辺でさぐろうかなッ!』

『私も第11都市に聖地にいる間は入り浸るのじゃぁ~』

『酒に浸りそうだわぁ』

『否定できないのじゃ……』

さて、射手座の彫像。射手だから、人だろうとは予測した。しかし水瓶座の例がある。噴き出さないように警戒して入っていったら……人が弓矢を構えていた。

『普通ねえ』

『普通なのじゃ』

『さすがに頭を弓にはできなかったんじゃないか?』

『頭が弓は……難しかったのでござろうな』

結局は命中系じゃないかと推察し、命中率が上がりますようにと祈ってはみたが、特に加護はもらえなかった。

まあ今後来訪者がどっと現れる。万単位でいるのだ。誰かしらの願いがヒットするだろう。