軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

279.ケルムケルサの研究者

司書たちはお互いに顔を見合わせて、最後はなんとも達観した笑みを浮かべた。

「我々の土地、浮島は、元は大地にあったといいます。それがやがて空にのぼったと。今はその浮島があった土地がどこなのかわからないのです。初期、今の場所に安定するまでケルムケルサは風に揺られてかなり移動したのですよ」

「今はどうして同じ場所にあるのですか?」

「それはその後の我々の技術開発の結果ですね。実は移動することもできるのですよ。ただ、この場所が今は都合がいいので動く気はありませんけれど。本土が木に貫かれてもおりますし」

きゃーっ!!

いつかつい、私がやりましたと言ってしまいそうだ……。

「初め、この土地があった場所を見つけ出せば、もしかしたら 有翼(イータ) と 無翼(ムルス) の謎が解けるかもしれませんね」

そしてナビゲーションが部屋の外へと向かう。

そうか、これは浮島の起源を辿る旅!!

ということで俺は司書室を辞して、外へと向かう。と、翼有りのお爺ちゃんとぶつかってしまった。

「わあ、すみません。大丈夫ですか?」

「いや、こちらこそ考え事をしていたからの、申し訳ない」

俺より背の低い、眉もあごひげも見事に真っ白なお爺ちゃんだった。

「テラエトゥーラの方かな? すまないんじゃが、一緒に紙束を集めてはくれぬか? 年を取ると腰を曲げるのが辛くてな」

「俺全部集めるんで!」

ぶつかったときにばさーっと盛大にやってしまった。

もちろん【気配察知】なし子さんですよ。

「時間に余裕があるのなら、儂の部屋に運んでくれるか?」

「いいですよー」

これを断るゲーマーはいない!

ナビゲーションもここに留まっているしね。

「これ全部お爺さんが書いたんですか?」

「そうだよ。儂の研究の書き付けだよ」

「どんな研究をなさってるんですか?」

「ふふ、聞きたいか? それはな、浪漫だ」

「浪漫……」

浪漫な研究に碌なものはないってのが体感だけど。

そんな話をしているうちに、王宮の外れの部屋に辿り着いた。お爺ちゃんが扉を開けて、中に入るとまー、紙で溢れている。壁には地図がたくさん貼り付けてあった。部屋はたぶんだが、1LDKくらい。

「紙を踏まぬようにな」

獣道みたいな細い床を辿って、お爺ちゃんが辛うじて空けた机の上に紙の束を置いた。

「すごいですね」

「そうだろう。もう200年近く前から研究しているからな」

そういえば 空人(そらひと) は長生きだったね。

「ここまで運んでもらった褒美に儂の浪漫の一端を見せてやろう。ほら、こっちだ」

またもや獣道を通り、壁際まで行く。大きな地図だ。

あ、これ、テラエトゥーラじゃん!

「若い頃はな、地上に降りることもできたのだ。仲違いする前はな。今回また国交が回復し、行き来できるようになったのは喜ばしい限りだ。ほら、ここいらは全滅だな。浮島の欠片もありゃせん。ここら辺が怪しいと睨んでいるところだ」

ウキウキで話し出したがこれ、浮島ルーツの話だよな。

主題を先に話してくれよ。

「浮島が本来あった場所がこの……ファンルーアのあたり?」

「そうだ。まだそこら辺は調べていない。だが風の流れなどを考慮し、ありそうな土地を潰していった結果、残っているのはこのあたりなんだ。もう少し若けりゃ儂が直々に調べにいくんじゃが……もう年でなあ。仕方ないから弟子をやっているんだが……」

と、ここで部屋をバタンと開けて、 有翼(イータ) のまだ若そうな男女が入ってきた。いや……男の子と女の子かな。

「じいちゃんっ!! 無理無理。1人じゃ無理だよ~」

「じいちゃんっ!! 無理無理。1人じゃ無理だよ~」

「だから2人で行けと言うてるじゃろがっ!」

「やだよこんな大雑把なナパパと!」

「いやよこんな大雑把なタパパと!」

これきっとどっちもどっちのやつ。

男の子と女の子、顔立ちはそっくり。どちらもショートヘアで、青い水色の髪の毛の男の子は少々眉がキリッとしてる。薄いピンク色の髪の毛の女の子は頬もほんのりピンクで愛らしい。

「ナパパ、魔物と対峙しても俺に任せて逃げるんだ!」

「タパパは前衛なのにちっとも前に行かないの! 距離をとったらこっちにくるんだもの!」

「「こんなやつと一緒に旅なんて無理!」」

「お弟子さん? お孫さん?」

「親類だな。双子だが気付けばこれだ」

やれやれと肩を落とすお爺ちゃん。

「ラパパお爺ちゃん! 俺もう無理!」

「ラパパお爺ちゃん! 私もう無理!」

息はぴったりなんだけどね。

そしてラパパお爺ちゃんがこっちを見るのだ。

「なあ、これのどっちかと、ファンルーアのその辺りまで行ってはくれまいか?」

そんな予感はしたし、たぶんそれがこのルートなのだろう。

「俺もそこまで強くないから、守りながらは難しいかもしれませんよ?」

「構わん、こやつら、危なくなったら飛んで逃げるのは一人前だ」

あれ、これ、囮になって死亡? いやまあ、付与あるし、たぶんイェーメールからファンルーアへのフィールドくらいならもう大丈夫だとは思うが。なんならぎょろちゃんに乗ってこいつら飛んでもらえばいい。

って、どっちなのか。

「俺もやることあるからいつでもOKってわけじゃないし、来訪者なので突然寝ちゃうこともあるんですよ」

「問題ない。飛んで逃げればいいんだからな」

ふむ。

まあこれがヒューマンクエスト。

「じゃあ暇なときなら」

と返事したところでナビゲーションのカーソルが二手に分かれた。

俺は迷うことなく

タパパ君ですよ。

「ええっ! あなた前衛でしょう? 魔法を使える私の方がいいんじゃないの!?」

「タパパ君でお願いします」

運営からのオススメなのだろうか? だがしかし断る! これフレンドになるヤツだろ、ほら!

《タパパから フレンド申請が届きました》

OKしちゃうもんね。

「よろしくな! セツナ!!」

「よろしくタパパ君」

となりでブーブー言ってるが、お爺ちゃんがまあまあとなだめている。

「今日これから移動するとたぶん俺の寝る時間になっちゃうと思うから、また今度誘うよ」

「うん、連絡をくれたらテラエトゥーラには降りて行くよ。豆の木の下で待ち合わせしよう」

俺は新しい従者を手に入れた!!