軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

278.ケルムケルサの司書室

さて次はケルムケルサ。始まりの平原へ向かう。

「もう食料供給は始まってるんですか?」

「ああ、なんか、来訪者がかなり騒いでいてね……浮島への食料供給を急げって。何があったの?」

「いや、俺は何にも知らないですけど」

「なんなら自分たちが運ぶからというグループが現れたって話だよ。ボランティアで」

どういうことだろう?

「せっせと各浮島の集落へ肉や野菜を運んで、さらにそこで料理までしているらしいね」

「料理まで、ですか」

「ずっと続けるつもりはないけど、栄養が行き届くまでって言っているらしいよ」

あー、それはそういうことか。

かく言う俺も、帰りにオーキくんところに寄っていこうかなと思ってた。【持ち物】に入ってるご飯類どかっと置いてこようかと。

たぶんそういった面子。オカンがたくさん現れた!!

「おかげでケルムケルサの来訪者への信頼度が上がり切っているって話だ」

「まあ仲良くやっていけるならいいですよね」

冒険者IDを見せるまでもなく、ウォルトのおかげで顔パスした。豆の木の根元にある白い建物に入ると一瞬で空の国だ。これはゲーム的な処理。本来NPCはポータルのようなものは開発されていないということになっているから。

そのまま王宮に行き、図書室横の司書室へ。

「素晴らしい仕事に感謝いたします」

新しい本にほくほく顔のラシードさん。次のアランブレの図書館が希望する本が並ぶ。何回か先まで写本したい本のリストはすでに交換済みなのだ。

「今回は急ぎで仕上げましたが、次からは月に1度くらいの頻度になりますね」

「ええ、もちろん。アランブレから遠い街がウォルトさんの本来の住処と聞いております。ご尽力に感謝いたします」

空の国にお泊まりさせてもらっていて不自由はないが、自分の店もあるのでずっとこっちにいるわけにはいかないそう。

まあそれはそうだろうな。むしろとっとと帰れ帰れ。

「来訪者のポータルがあれば助かるんだけどなぁ~」

「俺は持ってません」

「ポータル持ちの可愛い読書女子がいれば是非勧誘したいんだが」

「心当たりがありませんね。図書館で張ってる方がいいんじゃないですか?」

やれやれとか言ってるけど、正直聖職者は今空前絶後の退魔師ブームなので忙しいかと。みんな新職に飛びついてるってよ。別にいつでも聖職者に戻れるし、また派生形の別の職ができたなら簡単に乗り換えられるから、とりあえずなっちゃうよね。

「ポータルで行き来させてくれるなら、1回10万シェルくらいぽいっと払うのになぁ……」

ポータル屋できるな、これ。ただ、まだ俺たちに第7都市は開放されていないのだ。

「もう少ししたらそういった運び屋が現れるかもしれないですね。今はまだ無理ですよ」

「せめて聖地まで行けたらなあ」

聖地なら来月だな。ただ、ゲーム内だと3倍の時間。

「まああと半年くらいしたら状況も変わるんじゃないですか?」

「飛行船が開通されれば楽になりますね。増えた空の魔物の狩りに精を出していますから、聖地までならあと少しだと思いますよ」

あ、これ、聖地でイベントある時期に合わせて飛行船開通されるやつだ。きっと。

となると、ヴァージルと陸路を行く必要もないやつかなぁ?

少し早めにゆっくり行こうかって言われてるんだよね、俺たち。小さな街にちょこちょこ泊まりつつ、と。

空の旅で一気に行くのもいいが、陸路を行くのもいいなぁ。みんなにも聞いてみないと。

「セツナさんはもしよろしければ本を読んで行ってください」

「あー、そうですね~せっかくだし」

そういやヒューマンの種族クエストとやらがなぜか現れましたね。特にこれといって戦闘とかはなくて、あちこち巡るようなクエストなので暇なときに受注して手始めを作っておけってソーダに言われてたな。

「以前聞いた種族についての本ってありますか?」

「ええございますよ。よろしければこちらの部屋でどうぞ。お持ちしましょう」

俺はウォルトとそこで別れると、そのまままたテーブルに座る。

なぜかお茶を出された。お菓子もいただいた。至れり尽くせり。

「セツナさんには司書一同大変感謝しているのです。お茶とお菓子のあと、お読みください。こちらに置いておきますね」

上品な茶菓子をいただきましたよ。ダックワーズみたいなやつ。美味しいな。

……スパイシーなお菓子探ししないと!

「他にお菓子の本とかありますか? こー、香辛料なんかを使ったものとか」

「お菓子の……どうでしょう、少し調べてみますね」

お願いして、茶器を片付けてもらうと俺は本を読み始めた。

まあ、空の国で書かれた本ですから、空の国が1番なわけですよ。俺たち最強! とうとう空まで制圧したぞーっ!! みたいな。

で、その空にのぼることになったきっかけみたいな物語を読まされたところで、ご案内が届く。

《ヒューマン限定クエスト:人の辿った行く末 を受注しますか?》

YESです。

《ナビゲーションをONにして空の国が辿った道を遡っていきましょう》

チュートリアル仕様なんだなこれ。そこに行くとクエストとかミッションとかヒントが現れるやつ。

ナビゲーションの先は司書の1人だった。

俺は本を持って彼の前に行く。

「どうでしたか? 興味深い話でしょう」

「そうですね。これを読むと、 空人(そらひと) と地上の人々はもともと同じだったということになりますよね」

「そうなのです。もう1冊こちらの本を読むとまた新しい見解が現れますよ」

そう言って本を渡された。またこれを読めってことだな。

幸い司書室も倍速読みが導入されているので1冊くらいならあっという間だ。

これには、浮島の元となった浮遊石が産出された土地について書かれていた。そこで浮遊石を得て、加工し、空の国の大地を作ったとある。

さらに彼らは翼を得たというのだ。

翼、得たの?

あれ。突然の翼だった。いや、そうなんだよね。ヒューマンに元々翼ないじゃん? あれれ……。

「翼って突然生えるものなんですかね……?」

そばにいた司書に思わず尋ねると、彼は困ったように首を傾げた。

「長い歴史でもそのあたりは、なんというかこう、隠されているような気がしますね」

「今までは 有翼(イータ) と 無翼(ムルス) の格差があったため、あまり話題に出してはならないものでした」

おう……禁忌だったのかな? 話題に出すこと触れることが。

「普通は突然、翼は生えないですもんね」

司書たちはとても複雑な顔をしていた。