軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

243.おばあちゃんのおじいちゃん

一夜明けて。

俺はヴァージルの実家へ向かう。セバスチャンさんに紹介状を書けたら渡しておくという話をもらっていた。

久しぶりのアスター家は何やらバタバタしていた。

「申し訳ございませんセツナ様。朝からお客様がいらっしゃっておりまして」

「いえ、こちらこそ急なお願いでした」

そんな俺の態度に、セバスチャンはにこりと微笑む。

「セツナ様はアスター家の救世主ですから、最大限のおもてなしをするようにと当主よりいいつかっております」

そう言いながら俺を客間に案内してくれた。

と、そこには落ち着いた色のドレスを着た初老の女性が座っている。

「紹介状をとお願いしたところ、アランブレよりこちらに出向いていただきまして」

……えーっ!? フットワーク良すぎるよねっ!?

朝からばたついてる原因でもあるのか。

俺が部屋に入ったところで、相手の女性もすくっと立ち上がる。ものすごく姿勢の良い、品のいいおばあちゃんといった感じだ。

部屋の隅にはアスター家のお仕着せではない、シンプルなワンピースを着た若い女性が立っていた。

「初めまして、セツナと申します」

俺が頭を下げると、おばあちゃんはにこりと笑って頷いた。

「わたくしのことはジェニファーと呼んでくださいな。孫からのお願いなんてめったにないから嬉しくなって来てしまいました」

さあどうぞとソファを進められて俺はジェニファーおばあちゃんの向かいに座った。

立ったり座ったりに介助もなく、まだまだお元気そうだ。

「空の国との話を聞きたいということでよかったかしら?」

「はい、よろしくお願いします」

執事自ら紅茶を準備してくれた。香りが、めちゃくちゃいいな!? 相変わらずこのVRの食事系再現すごい。どうなってるんだろう。

「わたくしたちの年代でも、空の国の出来事は過去のものだったの。ただ、わたくしの祖父は、件の王子に付き従って空の国へ行ったのよ。だから当時のことをわたくしによく、こっそり話してくれた。見たことのない世界に心躍らされたものよ……小さな頃は、楽しい空の国の風景を、そして、少し大きくなって物事の分別がつくようなころには、祖父から見た空の国の実態を教えてくれた」

空の国はいつから空にあるかはわからない。遠い昔から、この世界の空を支配してきたと豪語していた。

浮島、通称空島は、飛行船にも使われている浮遊石が多く含まれており、そのせいか作物の育ちは悪い。それ故、食料に関しては地上の国を頼ることが多かった。

その対価は、浮遊石の結晶や、国宝である雌鶏が産む金の卵だった。また、空の強い魔物を定期的に狩り、飛行船の航路確保も契約の1つとなっていた。

食料や資材と引き換えに、空の安全を手に入れていたのだ。

そのやりとりをさらに強固にしたのは、互いの王族を行き来させることだった。

「まあ、政略結婚だったのよ」

だからこそ、そこに歪みもあった。

空の国の 有翼(イータ) は 無翼(ムルス) を下に見ている。貴族籍を持っていたとしても、それこそ王の子として生まれても、 無翼(ムルス) であれば口に出しはしないが、認められることはない。

有翼(イータ) と 無翼(ムルス) の間にはそれだけ大きな溝があった。

つまり、婿入りした地上の国の王子への態度にもその意思が露骨に現れていたのだ。

「祖父がそれはそれは口惜しい思いをしたとおっしゃっていたわ。王宮内ではもちろん地上の国の大切な王子だったから、扱いは悪いものではなかった。それでもあくまで、いつまで経っても、客人でしかなかったそうなの」

なんだか、とっても重い話!?

「それは結婚相手の王女様もだったそうよ。地上の王子を夫とは認めない。本当にそれが1番腹立たしかったのだと、祖父は拳を震わせて何度もおっしゃっていた。王子様もかなり気に病んでいたそうなのよ。そして――あの事故が起きた。セツナさんももう知っているのでしょう? 王子は空から落ちてしまったの。事故なのか自殺なのか、お祖父様もわからないんですって」

紅茶がすっかり冷め切って、セバスチャンはそれを取り替える。暖かいティーカップを口元に運びながら、ジェニファーおばあちゃんは最後にぽつりとつぶやいた。

「これは、 有翼(イータ) と 無翼(ムルス) の戦いなのかしら」

《空の国ケルムケルサの内情3が公開されました》

俺は礼を言って、ジェニファーおばあちゃんの乗った馬車を見送った。うーん。最後のはなんなのだろう?

ソーダ:

始まりの平原に 有翼(イータ) の戦士が来た! 戦闘になってる!!

ピロリ:

すぐ向かう!

1週間後じゃなかったのか!?

しかし俺が辿り着いた頃には戦闘は収束していたようだ。

捕らえられた 空人(そらひと) は王宮の牢屋に送られるそうだ。

先日の天幕にお邪魔する。

この天幕に入れるのは、貴族や騎士団に認められた人だけらしい。

俺は騎士団のフェリックスと面識があるし、 細剣(レイピア) のスキルを教えてもらったハロルドともフレンドだ。資格アリってことで天幕片隅に立っている。

首脳会議してる。

新しい情報から総合してどこら辺を攻めるのがいいかとか、返還された王女の子孫から話を聞いた人もいた。アナウンスのあった空の国の内情2にもあったが、そちらはまとめられているから実際聞いた人の肌感というか、ニュアンスはとても大切らしい。

本からの知識とはまた違う。

「有りと無しの差別は結構あからさまらしいわ」

忍者の格好をしていないが、忍者職らしいオオカミっぽい獣人アバターの女の子の発言に、由香里さんが頷く。騎獣採りのときとは違って、かなりシャキシャキしてるとりまとめ役になっていた。本来はこっちのキャラなのかもしれない。

「この内情3の方は王子側だよな。これ情報とったやつ探して話し聞いてみようよ」

ダインの言葉に、黙っているわけにもいかず、お利口さんのお返事をすることになった。

「はいっ! 俺ですっ!」

円卓を囲んでいた面々の視線がこちらへ向く。

「……セツナぁ」

「いや、内情に上がったからもういいのかなって。さほど情報違いはないんだよ。書いてあることと。これを聞いたのは、落ちた王子の付き人だった人の孫なおばあちゃんから」

おばあちゃんのおじいちゃんだよ。

「ただ、最後に言ってた。これは 有翼(イータ) と 無翼(ムルス) の戦いなのかなって」

俺の言葉にみんなが押し黙った。