軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

220.治療院のアルバイト

アランブレの治療院には行ったことがあったが、イェーメールは初めてだ。

ただ、どこも神殿やその周りは似ていて同じような並びになっている。それほど迷わずに辿り着けた。

そしてまたもや止められるのだ。

それこそヴァージルと一緒に来てもらった方がよかったなこれ。

「治療が必要な方は順番にお並びください」

「いやあの」

「申し訳ありませんが、みなさん順番に待ってらっしゃいますので」

「それが」

「今日はそれほど混んでいませんし、すぐ順番が回ってきますので並んでください」

「ポーションの寄付に来ました!」

これ、遠慮してたら負けるヤツ。

「セツナと申します。先日シロユリの花を分けていただいたお礼に来ました。黄ポーションと橙ポーションを寄付したいのですが」

「それは……失礼いたしました。こちらへどうぞ」

白い服を着たお姉さんが治療院の奥に案内してくれる。扉がいくつもあるタイプで、やはり同じだ。

また1番奥の医院長の部屋に通されるのかと思ったら違った。

それよりも手前の部屋に案内される。そこはたくさんの薬の保管庫だった。ここぞとばかりに【鑑定】しまくる。【鑑定】は気を抜くと消えるからと案山子から再三注意をいただいていた。ログインしたときに最低10【鑑定】すれば消えはしないとは言われているらしい。

「寄付をしてくださるそうで」

部屋の中には数人、白いエプロンを着けた女性がいたが、その中でも恰幅の良い女性が俺に向かってニコニコと話しかけてきた。

「先日シロユリをいただいて、そのお礼は何がいいかなと思いまして。まだレベルの高いものは作ることができないので黄と橙を持ってきたんですが、ご迷惑ではありませんか?」

「迷惑だなんて、寄付は大歓迎。お気持ちもありがたいわ! ささ、こちらに置いてくださる?」

四角いテーブル。【鑑定】すると作業台となっている。

「そういえば、【鑑定】は来訪者特有のスキルだと聞きました。こういったポーションの品質はどうやって調べるんですか?」

「ふふ、きちんと試薬があるから大丈夫ですよ。基本的に提携している薬師の方のものは調べるまでもありませんしね。新しく取引を始めるところや、こうやって寄付をくださったものは申し訳ないけれど一応調べさせてもらうの」

薬なのだから当然だろう。

しかし、寄付もあるのか。

と、その寄付の塊の中に怪しいものを見つけてしまった。

「えーと……これ、黄ポーションに見えるんですけど」

「そうねえ、ポーション瓶に入っているし、私も黄ポーションとしていただいた分よ」

「ですよね……麻痺薬入り黄ポーションとあるのですが……」

女性の顔色がさっと変わり、厳しい表情になる。

「あなた――セツナさんね、【鑑定】持ちなのね」

「はい。まだ熟練度はそこまでではありませんが」

鍵のおかげで上がってるとは思うが。

「ねえ、このポーションはどなたからいただいたの?」

「ええっと」

周りで作業をしていた女性たちが手を止めやってくる。

「誰だったかしら」

「業者の物じゃないわよ、ね?」

「あら、でもここら辺はロポルトさんのところからじゃなくて?」

「ああ、今朝早くに納品に来ていたわね」

ロポルトさん、やっちまったかこれは!?

「ねえ、セツナさん、アルバイトしていかない?」

「来訪者なので寝ちゃう時間がそのうち来るんですけど、それまでなら構いません」

【鑑定】の熟練度をアップさせるのは【鑑定】するのが1番! こんな山ほど【鑑定】するものがあるなんてサイコーだし。

強いて言えばアンジェリーナさんに会いに行く予定だったのが潰れたことが残念。

というか、ポーションの前に名前入ってるんですよ。ロポルトの麻痺薬入り黄ポーションってね。さすがにそれはアレだったんで最初は言わないでおいた。

ロポルトさん作のものに、結構高確率で麻痺薬が入っている。

「これ、気付かずに使ったらどうなるんですか?」

「黄ポーションは少し深く切った傷などに使う物よ。それに麻痺薬なんて入っていたら傷は治ったのに今度は動けなくなるの。治療院はまだいいわよ、経過観察できるから。これが販売されていたとなったら、街の外でモンスターに襲われた人が使って、動けなくなったらどうなることか」

それは大変怖いな。

俺は片っ端から【鑑定】して、どんどん薬を弾いていく。

だいたいが『○○の黄ポーション』といった表記だ。たまに、『○○の質の悪い黄ポーション』が出てくる。

「質の悪い分はどうします?」

恰幅の良い女性、ローラさんはきゅっと口を引き結び、こちらへお願いと別の木箱を指した。

反対に、『○○のとても質の良い黄ポーション』も見つかる。

「あら、誰が作った分かしら?」

「えーと……すごく効くさんですね……たぶん来訪者です」

みんなー、最初っから薬師やる気だろおおお。

結構多いんだよ、さっきから、ジェネリックのとかエリクサーのとかさ。

名前に特徴がありすぎるのはみんな来訪者!! ここら辺の人基本カタカナだし、ひらがなや漢字が入ってたらなおさらだな。

結構な数の【鑑定】をやった。あまりに連続で使い、MPが追いつかなくなってちょっと休憩まではさんだ。

それでもログアウト前に部屋の中にあった全部を見終わることができた。

途中もぐもぐしないといけない羽目になる。これ、俺の熟練度めっちゃ上がったね!!

「助かったわ~!!」

ローラさんはじめ、治療院のみなさんに思い切り感謝された。

【鑑定】レベル上げもできるし、Win-Winなので全然構わないですよ、ええ。

結局おかしなのはロポルトさんが作った分だけだった。

「困ったこと」

《クエスト:治療院の【鑑定】アルバイト をクリアしました》

わーい、クエストだった。

「今日はありがとうね、セツナさん。こんな遅くまで助かったわ」

残念だがアンジェリーナさんに会いに行くのは次ログインしたときだ。

今日はこのままイェーメールからアランブレまで歩きながらミュス狩りだ。

本当に最近ミュス狩りの頻度が下がっているのだ。ミュスを狩る者という二つ名を(勝手に)持つ者としては恥ずかしい限りである。

寝る前に冒険者ギルドに尻尾を納品してログアウト。