軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

209.図書館での初修復師のお仕事

以前と同じ廊下を歩いて行く。あのときはアルバイトだったが、今日は弟子だよ!

師弟チャット、使えないけどね。用もないのに使えない。おはようございますだけとか迷惑じゃん。こんなに使いにくいチャットは初めて。

気軽にメッセージ送りたいよぉぉぉ!!

とにかく頑張って努力を見せる方向で。修復師には結構興味はある。退魔の書のアップグレードっていう夢もある。

閉架書庫を整理した場所を越えてさらに奥へ。アンジェリーナさんは迷うことなく歩いて行く。

やがて1つの扉に辿り着いた。

ノックもせずに入るとそこには大量の棚! そして大きな机。

「さあ、特訓よ」

望むところです。

修復師のお仕事は、修復される本の状態のレベルで変わってくるらしい。

この間の俺が破いた本は、表紙だけが少し破けていた。中身の損傷はなかった。

「これくらいなら【 修復(リペア) 】で済む」

同じように表紙カバーの部分がすれてめくれ始めている。

「【 修復(リペア) 】作業で必要な素材が、先日セツナくんにとってきてもらったものね。アマルの実の汁を乾燥させた物、フォモル草を加工した物。この加工作業も今度教えるわ。私が忙しいときはオルロが見てくれるから。彼もセツナくんを気に掛けているしね。快諾してもらった」

ありがたや。

アンジェリーナさんは木箱を取り出し、中から瓶を2つ。並べて蓋を取る。

小さな匙も2つだ。

「まずは、この表紙部分と本文を分けるわね。【 分解(ディコンポジション) 】」

はらりと綺麗に外れる。

俺のスキルツリー、修復師に【 分解(ディコンポジション) 】が現れる。基本だからたぶん見て出来るようになってるのだ。

「次にこれね」

本文は脇に避けておき、表紙のめくれているところを撫でる。そして瓶からそれぞれ匙の先に少し乗るくらいの粉を取り出し、めくれている部分に置く。表紙の下の方だった。どうやら爪で引っかけたようだ。

「素材は多すぎてもだめだから、傷の大きさを見ながら調整するのよ。こうやって刷毛で混ぜ合わせた2つをよく馴染ませる。余計な分は落としていく。素材も大切だから、この分量を見るのも熟練の技ね」

平筆のようなもので丁寧に撫でていると、余剰の粉が出てくる。それを脇に置いていた紙の上に落とす。

「最後にスキルで定着させるの【 修復(リペア) 】」

みるみるうちに爪で傷つけられたものが跡形もなくなる。

「さあ、あとは数をこなしましょう! ちゃんと隣で見ているから、心配しなくていいわ」

そうして、アンジェリーナさんと並んで修復作業に取りかかった。

アンジェリーナさんと! 隣に座ってる!! という事実でそわそわしていたのもほんの少しの間だ。真面目に取り組まなければ愛想をつかされるかもしれない。

「【 分解(ディコンポジション) 】」

ぱたりと、表紙と本文が剥がれる。が、端がなんだかがたついている。

「それも練習あるのみね」

「……はい」

次は粉。匙をとり、瓶に突っ込む。

あ……ゲームですんでゲージが出ました。

左右に振れるメーター。真ん中辺りに赤いライン。きっとここ、赤いラインのところで止めろってことだ。

初級編なのだろうか、わりとかんたんに赤いラインに寄せられる。2種類目はほぼぴったり。それを本の傷部分に乗せて、刷毛で撫でると、おお、ほとんど粉が残らなかった。その残った分も隣の紙の上に落とす。

「【 修復(リペア) 】」

傷がみるみる消えていく。

「素材の分量がよかったわね。スキルはつたないけど、初めてにしては十分よ」

そう言ったあと、アンジェリーナさんは【 修復(リペア) 】を唱えた。多分俺のつたない部分を補ってくれた。

あとはこの2つを延々ひたすら唱え続ける。渡される本はごくごく簡単な修復のみらしく、素材の赤いラインにぴったり合わせようゲームはほぼ完璧になってきた。

ってか、え、何冊やるの……そうだ、8時間って言われてたな。一冊に5分くらい。1時間で12冊。5時間やったら60冊。まさかな。

途中、EPゲージが危うくなって、警告が入った。慌てて飲食が出来る場所を聞く。

「そうね、忘れてたわ」

部屋を出て、別の場所に行くと、そこは司書たちの休憩場だった。この間書庫に案内してくれた司書がいる。

「やあセツナさん、修復師を目指すことにしたとか。おめでとうございます」

「ありがとうございます」

話したついでとばかりに相席をすることになった。6人掛けのテーブルが6つ。まばらに人が座っている。

って、アンジェリーナさんも!?

くっそ、なんでだよ。なんで俺の【持ち物】に入ってる食べ物が、聖騎士団仕様なんだよおおおお!!!!

牛丼カツ丼、親子丼←new

お菓子とか、お茶とか……あ、桃のジュースある。

「アンジェリーナさんも何か……飲みますか? 桃のジュースがあります」

「あら素敵。いただこうかしら」

わあいいい。

ストロー付きのジュースを渡す。来訪者は食べ物を突っ込んでいるのが普通と思われているらしい。

あとは……。

俺はそっと親子丼を取り出した。

案山子の親子丼まだ食べてない。

「それは?」

「ええと、親子丼と言いまして。ローレンガの方でメジャーな米という穀物の上に、卵と鶏肉を乗っけたご飯です」

「へえ、初めてみるわ」

とアンジェリーナさん。

「私も初めてです」

とは、先日の司書さん。

「食べてみますか?」

恐る恐る提案すると、2人はにこりと頷いた。

うそ、だろ……アンジェリーナさんが、スプーンで親子丼食べてるっ!!

久しぶりのログアウト勧告来そう。あああ、落ち着け俺。あと、EP警告は結構頻繁に出てくるようになってるから急いで食べよ。

美味しい。鶏がとっても美味しいんだよ。油が乗ってて。

「米という穀物は面白いですね」

「ほんと、美味しいわ」

2人ともお気に召したようだ。えー。

案山子よ、ありがとう。アンジェリーナさんのこんなにも満足そうな顔を見ることができました!!

俺もEPゲージが回復したのでまた作業部屋に移動する。

「アランブレの修復師はアンジェリーナさんだけなんですか?」

「そうねえ、今のところは私だけだわ。図書館もあるし、貸本屋で仕入れたものが修復が必要なときもある。たまに冒険者ギルドに持ち込まれた古い文献の修復作業もあるのよ。セツナくんが頑張ってくれることを期待しているわ」

「もちろん、頑張ります!」

その後時間いっぱい【 修復(リペア) 】をした。ちなみに、初めて見せてくれたときはプレスにはさんで表紙と本文を付けていたが、今回は【 早回し(ファストフォアード) 】でアンジェリーナさんが完成させていた。

後半になるにつれて、俺の作業の【 修復(リペア) 】が少なくなっていったので、少しは成長していると思いたい。