軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

187.さらに奥のカジノ部屋へ

入り口の真反対にあった小さな扉が開かれる。ひと1人が通るのがやっとの扉だ。

その先にあるのはテーブルが4つ。ルーレットと、トランプが用意された台、そして、もう2つはサイコロだった。

こちらにも客がいるが、あちらとは違いかなり少ない。

支配人と呼ばれたスーツの似合う男が両手を広げる。怪しいポワロひげだ。それは、灰色の脳細胞を持つポワロさんに許されたひげだぞぉっ!!

と心の中で叫ぶ。

まあとにかく、立派な口ひげが特徴的だった。

「こちらはもっとゆったりとゲームを楽しんでいただく場所です。何をお試しになられますか?」

何をと言われても何があるのかわからない、と思っていたら、柚子がきっぱりと言う。

「オッドオアイーブンにするのじゃ」

すると、男は深く頷き、サイコロのテーブルへと招かれた。すでに2人、ゲームに興じている。

「こちらのルールはご存じでしょうか……」

「柚子とセツナじゃ」

「柚子様、セツナ様、そして、トラヴィス様は、十分ご存じですね」

「もちろん、よく知ってるよ。柚子さんも知ってるのかな?」

つまり知らないのは俺だけ。

「簡単じゃよ、壺振りがカップの中に放り込んで伏せたサイコロの目が、奇数か偶数か当てるだけじゃ」

「壺振りではなく、 投げ手(シューター) と申します」

カジノの人から訂正が入る。

「え、それって半ちょ……」

「オッドオアイーブンでございます」

なんか半丁はだめらしい。はい。

「基本倍返しか、ボッシュートなんじゃが、ゾロ目とかに賭けたら18倍だったりするのじゃ」

「おお……わかりやすい」

「簡単明瞭な遊びの場をご提供させていただいております」

「ちなみにあっちのクラップスは、自分も 投げ手(シューター) になれるが、まあ多少ルールがあるからな。あっちのが楽しいちゃ楽しい。投げるのおもしろいし、一体感があるんじゃ」

「人気のゲームでございますね」

「まあ、せっちゃんサイコロゲーム初めてじゃし、こっちのがわかりよい! いざ参らん!」

テーブルに敷いてあるシートの中に、ODD、EVENと左右にあり、その下に円が描かれて、6等分された中にサイコロのマークがそれぞれ書いてある。ここがゾロ目を賭けるときチップを置く場所なのだろう。

投げ手(シューター) が銀色のカップに投げ入れるようにして場に伏せる。きちんと丸い場所にぴたっと当てるのがすごい。

チリンとベルが鳴った。賭け開始の合図だそうだ。

「ゾロ目に賭けたくなっちゃうな~」

「俺は、ゾロ目に賭けるぜ」

トラヴィスはそういってチップにキスすると5のゾロ目と6のゾロ目の真ん中に置く。

2カ所に賭けると言う意味になるらしく、18倍よりは下がるらしい。

まあ、とりあえず最初は奇数だ。

「私も奇数にするのじゃ~」

他の客も何人か参加するが、NPCだった。

チリリンとベルが2回鳴らされた。

賭けの終了の合図。すっとカップが取り除かれ、出たのは1と6。半……じゃない、オッドだ!

わーい。チップが2枚になりました。

半丁賭場だとさ、下が畳になっていて、その下から針で掛け金の少ない方にころころっとね、そんな話聞いたことない?

ここのテーブル、足がほっそい。下に人が隠れていることはなさそうだ。

でも俺、勝ち方をわかってしまったんですよ……。

トラヴィスさんの逆張りしたらだいたい儲かる。

何この人、貧乏神に憑かれてるの!?

なので微妙に、他の参加者の合計金額ちょい上くらいを目指してチップの枚数を変えてみる。他の人もたくさん賭けてたら、俺もトラヴィスさんの逆に張る。

勝つ。

「柚子さんや……トラヴィスさんて前もいたの?」

「いや、それが初めてなのじゃ……」

どういった流れでいるんだろうなぁ。と眺めつつ儲けさせてもらっていると、柚子があ、と声を上げた。

「せっちゃん……カジノ10回記念に出会える人らしい」

「柚子さん10回目?」

「たぶんそのくらいじゃ……ヴァージルのとこの次兄さんじゃよ」

あああああああ!! なんか見た顔って思ったんだよ! くたびれてはいるけど、顔立ちはそう悪くない。ヴァージルの謎エフェクトはないんだが。

チャットが使えないからこそこそと話している。話しながらも適度に負けながら逆張りし続けた。

そして俺はわかってしまった。負けるのは、トラヴィスが奇数に賭けたときで、俺はゾロ目に賭けようと。

そうやって何度かやったとき、出ましたゾロ目さん。

「わーい!」

「せっちゃんおめなのじゃ~」

周りの人たちも祝福してくれる。

ありがとー。トラヴィスさん、ありがとー!!

「兄さん、今日は運が良いね」

貴方のおかげですよ、トラヴィスさん。

「支配人、チップを都合してもらえないか?」

「……トラヴィス様、何か担保をいただかなくては」

「担保、ね」

ちょっと大丈夫なのかな? 俺が勝ってるのこの人のおかげなんだよなぁ~。

「トラヴィスさん、よかったらこのチップ使ってください」

儲けた山から10枚ほど渡すと、驚いた顔をしたあと、受け取った。

お貴族様受け取るんかーい!!

「一緒に遊びましょう!」

「君、いい子だね」

貴方の弟さんには大変お世話になっておりますので。

それでも逆張りしてるとすぐ取り戻せるんだよなぁ~。不自然に思われない程度に増やしていく。

10枚あげる。増やす。あげる。を繰り返していたら、支配人からお疲れでしょうと別室へ連れて行かれた。

連行されたんだよ、厳つい黒服さん出てきて、どうぞこちらへって有無を言わせない迫力。

ちょうどその前に【フロストダイス】手に入った。100ゲームすると、手に入るらしいです!

「柚子さん……もう俺帰っていいんですけどー」

「残念じゃが帰ることはできぬのじゃ……せっかくなので私もクエストの先を読んでいない」

「おお……」

つまりこの先は我々のアドリブ次第!!

さらに奥の部屋に詰め込まれ、ソファへ座るよう言われた。有無を言わせない強い口調で。

「お客様、もしや、お知り合い同士だったのでしょうか?」

「私とせっちゃんは来訪者で友だちじゃよ〜こっちの兄さんは今日初めて会ったのじゃ」

「知らないけど賭け方とか教えてくれた人です」

俺と柚子の態度に、苛立ちを隠さず支配人はこめかみを抑えて唸っている。

「つまり、知り合いでも何でもない男に金を湯水のごとく与えると?」

「いや、なんか、貧乏神に愛されててかわいそーだなぁと」

今回の軍資金は失くす気で来てるから別に、ね?

俺の返答に支配人のこめかみに血管が浮き出る。

オコであった。