軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18.露店商人たちに捕まった

有意義な時間を過ごし、俺は本を返す。

「それではまた来ます」

「ええ。お待ちしてます。ヤーラさんのところに行く?」

「はい。この後行ってみようかと」

それならと、また地図を取り出し、場所を教えてくれた。ここからさほど遠くない。そしてこうやって教えられればナビゲーションが現れる。

便利便利。

方向音痴には必須だな。

俺はそこまでじゃないけど、それでもVRの街歩きは気付いたら迷いそうだ。

道中オーランに出会う。

「やあ、セツナくん。危ないことしてない?」

どうも子ども扱いされる……イケメンにしたから見かけ年齢下がってるのか? なわけないか。

「大丈夫ですよ! そうそう危険に巻き込まれるなんてないですからね」

フラグっぽくて嫌な返事だなと思いつつ、ゲーム的にはオッケーなのかな、危ないことって。

「危なくなったらすぐ呼んでね。普段から街は見回りしているから」

「お気遣いありがとうございます」

NPC優しいなホント。これ、NPCと仲良くなって楽しくやってるやつ多そうだ。

ヤーラ婆の店はかなり古い。が、その分大きかった。古い家は大きい。これ、常識。この店が建った当時は土地に余裕があったやつ。

「すみませーん」

扉を開けて入ると、カウンターの奥に呼びかける。

薬の匂いというより草の匂いがたくさんした。

匂いの再現ってどうなってるんだろう? 間違いなく錯覚なのだ。つまり、経験したことのない匂いは経験出来ないのかもしれない。

「おお! イケメン青年じゃないか。いやー助かったよ。これで咳でポックリ爺婆の数が激減するな」

だから、ポックリそうそうしないって。因子にはなるだろうけど。

「お借りしていた採取道具です。持っていなかったので助かりました」

「……持ってないのか。ふむ。ならそれはもうだいぶ使い込んでるし、婆はもう自分で採取に行く年でもないからな、持ってお行き」

「いえ、古くとも結構良い物に思えますので、遠慮します」

たぶんこれ高い。びっくりするくらいすっと草採取できた。

「金も道具もない若いもんが遠慮せんでええ。あとこれも。ほら、咳止め薬。来月咳してる爺婆がいたら渡してやんな」

うあー、これ絶対とっておいて行き当たった人に渡すイベント発生するやつだ。ストレージでなく【持ち物】に持っておこう。

ん? ピロリが、特に次への何かがあるわけでもないクエストだって言ってなかったか?

「もう薬の量は足りるんですか?」

「おうおう。あれは1つから50包は作れるんだよ。材料はあれだけじゃないからな」

スパイスの一つってことか。

「出先で何か見つけたらお土産に採ってきますね」

「そりゃ楽しみだ」

《クエスト∶薬師の咳薬 をクリアしました》

やっぱりちゃんとクエストだった。

別れを告げて店を出たところでソーダからフレンドチャットが来る。

『テーブル作ってもらえるって本当か!?』

『オーダーメイド家具職人の絶たれかけた恋路を持ち直したからすごく感謝された』

『やった! いつ行く!?』

『それはこちらの台詞だ。なんか、木から選ぶか? とも言われたよ?』

『え、本格的なのすごいわくわくするんだけど』

『せっかくだからみんなで行くか? 時間合わせられるならそう連絡するけど』

じゃあそれでといくつか予定の合うときを連絡してもらい、マルスにメールを送る。

このメール。ユーザー同士ならなんの問題も無いというか、チャットだ。フレンドチャット。音声文字どっちもござれのやつだ。

しかし、NPCの時は違う。

彼らの元へはハトが向かう。

ハト座の神が知らせを送ってくれる謎仕様。メール送信ボタンを押すと、手元からスケルトンなハトが旅立って行く。

こちらへは普通に文章で来るらしいが、ぽっぽーって感じなのかな。

マルスからの返信はすぐ来て、三日後の今頃はどうかと言うことだ。つまり明日のこの時間。

即OKと返事して、各方面に連絡を入れる。クランハウスで30分前に集合だ。

さて、時間が空いてしまったどうしよう?

久しぶりに本気のミュス狩りでもいいが、街歩きしたいんだよなぁ。この間は西側だったから、今度は東へ行ってみよう。

で、やってきました、ユーザーの露店広場。

所狭しと簡易店が立ってる。きちんと歩く場所はある。だいたいテーブルがあって、そこにアイテムが並べられ、その上に値段のポップアップがある。

NPCの店と違って商品は手に取れないようだ。

「ははっ。始めたばかりの人? 来訪者の店の商品は触れないんだ。トラブル防止のためにね」

「そうなんですね。すみませんでした」

「いいよ。気にしてないって。何をお探し?」

「特にこれといって。街歩き中です」

露店の人は俺の半分ぐらいの背の女の子だ。小人族だな。オレンジの短めツインテールに緑のくりくりした目だ。

「初心者さんなら、ここら辺の装備は?」

ばっっと並んでいた商品が一瞬で入れ替わる。

ナイフや衣服だ。

「友人が先に始めていて、一応一通り貸してもらえてるので装備は今そこまでは」

「あー確かに、それ、蛙ちゃんパンツと狼ケープだもんね。レベル低い人のそれなりの装備」

蛙……蛙なんだこれ。

「もう少ししたらおしゃれ装備とか絶対欲しくなるから。お金たんまり貯めておきなよ~」

小人族さんの忠告に素直に感謝し次の店へ。

食器?

「いらっしゃい、ファーナの陶器店へ! 結構良い物が作れるようになってきたのよ~。横で聞いてたからアレだけど、まあまだ始めたばかりじゃ陶器は買わないわよね~、半年経った人でも買わない位なのに……くっ。在庫在庫の嵐よ。もし欲しい人がいたら是非オススメしておいてちょうだいっ!」

可愛らしい花柄のティーカップから、真っ白い上品なものまで。どうやらティーカップとティーポット。お茶用の陶器製品を作っているようだ。

「じゃあ次俺んとこね! 俺の店はアクセサリー」

並んでいるのはブローチ? 音符みたいな形の金属に、真ん中に石がはまっている。

「ブローチはアクセサリで器用さとか敏捷とか上がるやつもある。ここにあるのは幸運だけど。今色々組み合わせを勉強してるところなんだよね。つければ幸運プラス1!アイテムドロップが変わるかも?」

ほうほうほうほう。アクセサリか。

「それじゃ次は私の店よ!」

「……いや、え? そんなに露店の中の人いるんですか? 友人が終了する前に設定しておいて放置してるのが多いって」

「「「今北!」」」

「なんか初心者歩き回ってるってメール来たからw」

「思わず買ってくれるかもしれないじゃん?」

「ここら辺基本みんな知り合いだし?」

「露店商人長いと友だち増えるんだよ」

へえええ……。

その後も延々とみんなからあーだこーだと薦められたが、今特に何が欲しいわけでもないぶらりだったのでお断りする。何を買っていいかわからん。

「えー、ちょっと狩りしたらすぐ金なんて手にはいるんだし~珍しい物をつい買っちゃうってのが露店の醍醐味ですよ」

「そうそう。生産始めたのはほとんどが一ヶ月二ヶ月してからだけど、その割にニッチな物作っちゃう人多いしね」

「作っちゃうというより、できちゃうが正解」

「それねー!」

楽しそうで何より。