軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

16.薬師の頼み

勘違い女はまあおいといて。

親父さんは正しく意図を理解したようで、その後ウォルのお抱え職人への材木の支給が減ったとか。

俺はそのままマルスの家具店に移動させられた。

「ありがとな、セツナ。お前のおかげでユリアとも仲直りできたし、また家具が作れる。確か、八人掛けのテーブルを探してたんだよな? よかったら俺に作らせてくれ」

《クエスト:潰れる家具屋を救え をクリアしました》

とりあえずテーブルゲットできそうだ。

「友人にどんな材質がいいか、大きさとか含めて聞いてみてからでもいいですか?」

「もちろん、よかったらその友だちも連れてきて、木から決めるのもありだ。八人掛けのデザインはいくつか提案させてもらうよ。都合の良い日に連絡をくれ」

《マルスからフレンド申請が届きました》

男からのフレンド申請が増えるな……まあ、そうだな。NPCの初女性フレンド申請はアンジェリーナさんからであるべきだな!!!

カニつめを囓りながらそう決心した。

いや、EP怖いわ。ほんと。

これ、HP回復用アイテムと違う。ご飯を食べないとダメ。

話の途中で突然カニつめグラタン食べ出した俺に、マルスはまったく動じることなく話を続けていたので、たぶん、気にならないようになっているのかと。プレイヤー、ヤバイってなったら絶対どこででも食うだろうからな。例え王様の前でも。

「あ、そうだ。ソファーベッドってマルスさんのところで取り扱いありますか? いや、クランハウスの個人部屋狭くて。ベッド入れちゃうとほとんど終わり。まあ、ベッド型に広げたらどっちにしろ終わりなんですけどね」

「……それならロフト型はどうだい? 天井はどのくらいの高さがある?」

確か……あの部屋天井はそれなりに高かった。

「そうですね。2メートルはあると思いますよ」

「ロフト型にしたら、下にタンスなどは収納できるし、なんならそこにソファを置けばくつろげるちょっとしたスペースはできあがる」

あーいいな。しかし残念なことがある。

「個人的な資産は0に近いんです。すみません。金が貯まったら相談させてください」

「もちろん、セツナくんなら格安にするよ」

ありがてぇ。お金貯まったら……本に使いそうだ。ドカンと一発当てれば別だが。

「それでは、友人と相談してまた連絡します。ユリアさんとお幸せに」

「ああ、ありがとう。本当にありがとう」

そうして俺は、アンジェリーナさんの本屋へ向かった。

今日は何を読もうかなあ~。

ソーダには家具のことを連絡しておいた。まだログインしてないし、そのうち連絡が来るだろう。クランハウスの物なのだからみんなで相談したらいい。

扉を開けて入ると本の匂いがする。

うん。やっぱりここがいい。

と、珍しく先客がいた。ネームの文字がオレンジなのでNPC。

かなり年のいったお婆さんのようだ。

耳の遠い老人特有の声のデカさがすごい。

「ホント困ったこと」

アンジェリーナさんがこちらに気づいたので、ペコリと頭を下げて本を選ぶ。

が、声デカすぎて集中できん。

「一応冒険ギルドにも依頼は出してるんだけどねえ~」

「先月、雨が多かったのも原因かもね。今残ってるとしたら山脈かしら?」

「あそこは時間だけかかって道中の実入りが乏しい、時間だけがかかる場所だからみんな行きたがらないんだよ。毎年来月あたりに軽く流行るから揃えておきたいんだが」

……気になるんですよ、アンジェリーナさんがうんうんと親身に聞いてる姿が。

仕方ない。

俺は本棚の前から、奥のカウンターまで移動すると、声を掛ける。

「こんにちは。何か必要なものがあるのですか?」

「セツナくん、ごめんなさいね。本選びの邪魔をして。こちらはヤーラさん。薬師なの」

「おや、このイケメン。見ない顔だね」

キヒヒって笑ったよ。文字に起こしてもキヒヒにしかならない笑い方してたよ。

「初めましてヤーラさん。薬師というなら、何か足りない薬草とか?」

ハナハヤ草みたいなやつ。

「来月になったらポーラの花粉が飛び出すだろう? そのせいで咳が酷くなる年寄りが多くなるんだ。症状を抑えるためのコーララ草がね。長雨で近場で取れていた採取場が全滅なのさ。爺婆は咳一つでポックリ逝くからなぁ」

咳一つじゃ逝かないと思うが、まあ、結果的にポックリは普通にあり得そう。

「そのコーララ草があるのがその山脈と?」

「そうそう。だが、特に強い魔物もいないが、良い素材採取が出来るわけでもない。人気の無い場所だね」

NPCはもちろんユーザーからもお断り物件なのか。

「それってまだ【駆け出し】になったばかりの俺でも採ってこられるところですか?」

「何? 行ってくれるか? 場所は始まりの平原の先にあって、別段強い魔物がいるわけでもない。問題は本当に何もないってことくらいだよ。コーララ草くらいしかめぼしい物がないんだ」

むしろ強い魔物がいたら詰むので、その方が助かる。

「今は本を読む以外とくにやろうと思っていたことがないので、構いませんよ。どのくらいの量がいるんですか?」

「ホントか! それは助かるな!」

「セツナくん、本当にいいの? あなたまだ来たばかりで色々やりたいことも多いでしょう?」

アンジェリーナさんの気遣いがいただけただけでご褒美です。

「構いませんよ。困ったときはお互い様ですから」

イケメン回答しておこう。

「いやー助かる。本当に助かる。せっかくだから、冒険ギルドできちんと依頼を受諾してから行ってくれ。もちろん私の方からお礼は出すが、あちらの功績にも載ることだ」

「それじゃあ準備して冒険ギルドへ行ってすぐ向かいますね」

二人に手を振ってクランハウスへ。

クランチャットを見たら、ピロリがいたので質問だ!

セツナ:

こんばんは。

平原の先の山脈って、どのくらいの時間掛かるかわかりますか?

ピロリ:

やほー、セツナくん!

平原の先の山脈……コーララ山脈?

草の名前そのまま~!

セツナ:

そうです。そこへコーララ草採りに行きたいんですけど。

ピロリ:

なんであんな過疎マップに!!

あ、もしかして不人気依頼のやつかしら。なんかあったね~。道中レベル上げすらできないし、コーララ草重いから他のもの拾う余裕もないし、他の依頼へリンクする様子もないって、初期にそのサイドクエストした人が不平不満を漏らしていた気がする〜。

セツナ:

俺は強い魔物が出ない方がいいので、行ってきます。

ピロリ:

まあ止めはしないし、セツナくんで十分安全に行って帰ってできるけど。

セツナ:

アンジェリーナさんの点数稼ぎなんで!

ピロリ:

点数稼ぎって、言っちゃってるwww

あ、行くなら、ストレージに入ってるカニつめグラタンとか、他にEP効率良いやつ山ほど持って、全力で走って行って。スキル生えるから! ちょっとでも道中を有意義にしたらいいわよ〜。

セツナ:

そうします。料理、お返しができないんですけど、ソーダには連絡したんですが、テーブルのあてが出来たんで、それでお返しってことで、今回はたくさん食べ物いただいちゃいます。

ピロリ:

え、本当!? やったー!

気をつけて行ってきてね~!