軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

101.カミキリと毛倡妓

髪切りについてつらつらと書かれているが、その中に、『切った髪の毛を贈る』と書いてあった。『贈る』はプレゼントだよな?

髪の毛プレゼントって、どんなサイコパスだよ。

髪の毛を欲しがる妖怪……だれ?

パラパラと捲ってみるが、他のものは見つからなかった。

「うーん、髪の毛プレゼントかぁ」

「髪の毛のプレゼント?」

俺のつぶやきがでかすぎた。

カウンターで本を読んでいた店主がこちらを見やる。

もう返すので、ついでだと立ち上がりカウンターへ。

「ここに、カミキリは切った髪の毛を贈る、とあるんですよ」

「ほぉ……」

「誰にプレゼントするのかとかが分かれば討伐したりもできるかなと。姿が見えずにいつの間にかみんなやられてますからね。カミキリがどこにいるかもわかっていないんです」

「なかなか難しい話だな……ちょっと待ってろ。なんか、いたな、髪の毛関連の、モテるやつが」

そう言って、店主は山のように積んである本や巻物を選り分ける。

ここの店、今までと違ってごっちゃごちゃなんだよね。巻物のせいかもしれない。本棚に整然と並ばないから。

しばらくして、店主は今度は和綴じ本を持ってきた。

「ほら、ここだよ……500シェルもらおうか」

しっかりしてる。俺は苦笑しつつきちんと払った。

そこには 毛倡妓(けじょうろう) とあった。

なんでも妖怪たちが彼女? を取り合って喧嘩するそうだ。

姿は、着物を着てはいるが、その隙間からも飛び出している全身毛だらけの妖怪だ。

遊郭に現れるらしい。

「遊郭ってあるんですか?」

俺のストレートな聞き方に、店主は顔をしかめる。

「今はねぇがな、昔はあった。跡地が手を付けられずに建物だけが残ってるよ」

遊郭の場所を聞いて向かっている途中に、かなり遅くログインした柚子と案山子の悲鳴がクランチャットに響く。

柚子:

ど、どゆことじゃぁ!?

案山子:

俺のッ! 髪の毛ッ!!

セツナ:

お疲れ様でーす。

なんかみんな髪の毛なくなったって。

スレ立ってるらしい。俺は見てないけど。

で、エイプリルフールだからという見解が。

柚子:

頭、頭装備……なんともダメージがでかくて辛いのじゃ。

案山子:

俺、結構イケメンで通してるのにッ!!

南無である。

遊郭跡地は五軒ほどの集まりだった。建物自体がしっかりしていて、崩れるまではいっていない。ただ、障子やふすまは残っているはずもなく、戸板は閉められており、入るのにとてもためらいます。

怖いの苦手なんだよなぁ。驚かされるのとかちょっとガチびっくりしちゃうタイプなんで-。

セツナ:

ローレンガの遊郭跡地に一緒に入ってくれる人募集です~

八海山:

何か見つけた?

セツナ:

今回の髪を切るのがカミキリって妖怪由来のモンスターで、そのカミキリが切った髪を贈っている相手が 毛倡妓(けじょうろう) という女性型の妖怪由来モンスター。

遊郭に出るらしいってことで聞いたら、跡地があるって話で……廃屋がちょっとホラーテイストでビビってます!

ソーダ∶

あー、一応行くかぁ。

ほら、ピロリ、柚子に案山子もローレンガ行くぞ!

ピロリ∶

いやっ! 今日はクランハウスで案山子のご飯食べて酒のんでゆっくりするって決めた!! 久しぶりにゲーム内で休日を楽しむっ!!

ソーダ∶

まじかよ〜まあいいや、俺らだけ行くよ。火力足りねぇ。

半蔵門線∶

投擲アイテム持ってくでござる。一度クランハウスよろでござるよー

それからしばらくして、ローレンガにソーダたちがやってきた。

案山子も拒否だったそう。

柚子はオレンジ色のストールを巻いてやってきた。

「ううっ……髪の毛ぇ。せっちゃんはなんでそんなにふさふさなのじゃぁ!!!」

「かみのけ座の宝珠ですねー」

「なんつうものを……」

嘆く柚子をなだめつつ、目的地へ。

「おおー、このお化けが出そうな感じ、いいね~」

ソーダはこういった類いのも全然いけるタイプ。柚子も元気だった。そして、八海山……えっ、尻尾まるまっとる!! 耳がピクピクしてる!! 同志じゃん。

「ごめん八海山さん」

「いや……ヒーラーは必要だから。あと、俺にはさんつけないでいいから。セツナくんが丁寧なのはわかってるけど」

そこは俺も気になっていたところなので、呼び捨てにさせてもらうことにする。

「私も柚っちでいいのじゃ」

「柚子さん、そこの床穴空いてますよ」

「むぐぐぐ」

基本丁寧に参りましょう。ソーダは付き合いが長すぎるから無理だけど。

元遊郭は二階建てで、階段も板に穴が空いていたりするが、まあなんとか気をつけて通れるくらいだった。

「戦闘になったら建物壊す自信しかない」

「範囲魔法かましたら崩壊しそうじゃ……」

1つ1つ部屋を覗いて、何かキーになりそうな物はないかチェックしていく。

紙装甲がたくさんなのでまとまって歩くことにした。何かあるかもわからないが。

「とくに怪しい気配はなさそうなんだけどなあ」

ソーダも一応【気配察知】は持っているという。俺の【気配察知】にも何も引っかからない。

「獣人族を羨ましく思ったのは今回が初めてじゃ……」

「柚子さんはどうして 小人族(ドワーフ) を選んだの?」

「私は最初から生産をやる気満々だったのじゃ! 素材集めに勤しんでいたらピロリとよく会って話をするようになったのじゃ」

そういえば、前作からの友人は八海山とピロリと半蔵門線だと言ってたな、確か。

柚子の欲しい素材と、ピロリのソロレベル上げ狩り場が同じだったそうだ。

「女子トークに花を咲かせていたのに……騙されたのじゃ……」

「あいつはもともとRP得意だからな」

「前のゲームの動画見たらイケメン過ぎたのじゃ」

そんな楽しいなりゆきが。

「お? この部屋」

二階の奥の部屋。違和感しかなかった。一階の部屋は板間ばかりだったが、二階は畳の部屋が多い。そしてこの部屋、真ん中に鏡台があるのだ。

昔の鏡台。鏡はそんなに大きくないが、引き出しがたくさんついていて、鏡の横に櫛が置いてあった。

それがぽつんと部屋の真ん中にあるのだ。

「セツナ、髪梳いてみろよ」

「髪の毛ごっそり抜けたら泣いちゃうんだけど!?」

「私はすでに泣いてるのじゃぁ!!」

「残念だがブラシじゃないので俺は役に立てない」

櫛がこれ見よがしなんだよなぁ……。

まあ仕方ないということで、俺は鏡台の前に正座して髪の毛を梳く。

と、覗き込んでいた俺の後ろに現れた、毛。

毛ぇ!?

「ぎゃああああ」

「うおおお!?」

「毛ぇ!?」

「ご、ござあ」

「……」

突如現れた着物を着た毛の塊。

「おいでやす」

「お、お邪魔してますっ!!」

「おおじゃまさまです」

「あれ、ピロちゃんの髪の毛なのじゃああああ!!」

あ。

着物の毛からピンクのツインテール、毛先が藍色がはみ出している。

「あれは間違いな」

毛の塊がぞろりと動く。

ソーダと柚子は慌てて距離を取った。

俺、正座してたからすぐ動けない。

それ以上に、八海山固まってる!!

「あら、あなたたちは、普通の人?」

声だけなら素敵な女性。

「は、はいそうですね」

ソーダ声が裏返ってるよ。

「あらあら、髪の毛、カミキリにやられたのね。ごめんなさいね、彼ったら私に髪の毛をプレゼントするのが生きがいなのよ」

毛の塊が 頬(たぶん) に 手(たぶん) をあてている。

「あの、髪の毛返してもらえませんか?」

「返すことはできるけど、また切られるわよ?」

「それはこまるでござるね」

「人にここまで迷惑をかけるのはだめよねえ」

「結構な人が困ってますね」

「ううん、どうしたらいいのか考えがまとまったらまた来てちょうだい」

ぶわっと風が吹いて、俺たちはいつの間にか遊郭の外に立っていた。

「どゆこと?」