軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

100.みんなの◯◯◯が消えた日

騎獣が解放され、試乗に、始まりの平原が使われる。俺専用マップは、今じゃ騎獣の展覧会だった。

定番の馬や虎、狼タイプはやはり数が多い。

たまに飛行型の鷲なんかを見つける。あれはあれで気持ちよさそう。

騎獣に驚いたミュスが変な動きをすることも多いが、まあ、それはそれでたまにはいい運動になった。

しかし、いない。

ぎょろちゃん的レア種がまったくいない!!

見つけたのはあったんだよ。

なんと、ドラゴン。

ドラゴンの小さいバージョン。

飛べるわ、なんか火吹いてるわでめちゃめちゃもてはやされてた。

レアならあれくらいのレアがよかった……いや、ぎょろちゃん可愛いよ。たぶん、選び直せるって言われても、馬を捨ててぎょろちゃんを選ぶくらいには可愛がっています。

ワールド全体である程度レアが出るまでは目立ってしまうから、人目に付かぬところで乗ります。

夜は静かな始まりの平原。いつもなら俺のミュスにとどめを刺す音だけがする空間が、やがて朝日に照らされていく。

そこで、平和な世界が一転した。

あちこちで叫び声がするのだ。

「え、何? 何々?」

普段いない人がいて、さらに阿鼻叫喚が辺りで渦巻く。

「かみ!?」

「いやぁああ!! 何? 何で!?」

「はっ!?」

「かみ、どうして!?」

驚きの声とかみ、という声が。

朝焼けの美しい平原に照らされる、つるっとしたフォルム。

「え? 何??」

つるつるピカピカの頭がそこら中で一日の始まりの光を浴びて、光り輝いていた。

「いやぁああ!!!」

ピロリ:

いやあああ!? 何? どうなってるの!? 運営アプデ失敗したの!?

ソーダ:

ぶおっwww ちょまww て俺もwww うっそwww

半蔵門線:

ふぉ……www 拙者もつるってるww 頭巾被ってるからダメージはないでござるがw

来訪者の頭髪が消え失せた。

よくわからないけど、冒険ギルドに行くと、みんな頭装備充実してんなぁ……。

俺は何も変わらないんだが。

帽子被ったりバンダナしたり、行き交う人々が普段よりカラフルだ。

「こんにちはセツナさん。ミュス狩り今日もありがとうございます」

「いいえ~なんだか騒がしいですね」

「ああ、来訪者の方々を狙う、カミキリっていうモンスターが出たようですよ。獣人族以外の来訪者さんが狙われるようです。セツナさんもお気を付けて」

カミキリ……なんか聞いたことあるなぁ。

ウェブ検索してみると、あー髪切りか。口先尖ってて、手がハサミのやつ!

妖怪だな~。髪切りに髪切られてしまったのか。

いや、しかし唐突だな。

つるつるだし。切られたって言うよりも、髪の毛ウィッグごっそりいただきみたいな。

朝日に照らされるあのつるつる軍団はなかなか壮観だった。

しかし、妖怪か~。妖怪なら、ローレンガだよなぁ。

よし、これはローレンガの貸本屋に行く時か!

なんとなく今なら見つかる気がするんだよね。ほら、この間『本好きの証』もらったし。

セツナ:

お疲れ様です。

八海山さん、ローレンガへポータルお願いしてもいいですか?

八海山:

ああ、了解。クランハウスでいいか?

セツナ:

向かいますね。

ステータスウィンドウからポチッとな。

で、クランハウスには泣き濡れるピロリがいた。

「セツナくんつるってないの!?」

ピロリはピンク色の髪の毛がなくつるっつる……を隠すためなのだろう、つば広帽を被っている。でも髪の毛ないからな……。

ソーダは甲冑着てた。

「いやー、初期使ってたやつ残しておいてよかった。何気につるつるダメージでかいわ」

獣人族なのでセーフな八海山。

クランチャットの通り頭巾で無傷な半蔵門線。

俺がつるってない原因は、よくよく考えればアレのおかげだと思う。

「たぶんだけど、かみのけ座の宝珠持ってるんですよ」

「あのクソ宝珠ぅぅぅぅ!!」

絶叫するピロリ。

「あ、本当だ。スレッドにも情報出だしたわ。あと、マーケットがww 獣人族の宝珠放出がww 10億シェルになってる」

「クランハウス買える値段だし、足下見やがってふざけんなっっ」

きーっって怒ってる。

てか、え、クランハウス10億シェルすんの? いや、すごく便利だけど。ワンタッチでアランブレ帰還できるのエグい。タンス置けるのもでかいしね。

「セツナくぅん……宝珠、貸して?」

「え、ダメですよ〜」

「絶対頭髪気にしない人種じゃない!!」

「だって、アンジェリーナさんにハゲてるの見られたくないからー」

「うぁぁぁぁんんんんん」

「セツナ殿www ひどいwww」

「セツナ、ノンデリwww」

「セツナ君、ポータル出そうか」

「あ、お願いします」

八海山の心遣いに感謝。

「セツナどこ行くの?」

「ローレンガの貸本屋探しに行く。カミキリってモンスターのせいらしいけど、カミキリって、妖怪だからさ」

「ああ、それで、和風のローレンガか。まあ気を付けて。ほら、ピロリ、狩り行くぞ」

「いやよぉーーー! 絶対いやぁ!!」

「マーケットでウィッグが爆上がってるでござる」

叫び声を背に、俺はポータルに乗った。

第1から第3まで、みんな住宅街のど真ん中にあった貸本屋。ということで、俺はローレンガの住宅街をうろついている。

いやー、着物に兜付けてる人とか、殿様被り物してる人とか、泥棒ほっかむりしてる人とか。

多様性があって楽しいね。

女性は藍染めのストールを頭にかぶってる人が多かった。ヒジャブぽい。あれはあれで雰囲気があるな。

彼らはみんな、すれ違いざまに俺の頭髪を見ている。

みんな、チュートリアル大事。

あの押し売り露店、絶対かみのけ座の宝珠触るよ。おっ? 何これ? ってね。

ソーダ∶

ピロリ、スレ見て機嫌直して狩場に来いよ。

ピロリ∶

何よ……あーーー! そういうことねっっ!!

やだ、運営……コロス。

半蔵門線∶

物騒が過ぎるでござるwww

セツナ∶

何? 原因わかったの?

ソーダ∶

今日何日か思い出してみろよ。

セツナ∶

ああ、エイプリルフールか。

ソーダ∶

そそ。だからまあ、明日になりゃもとに戻るだろ。

セツナ∶

よかったね。

ソーダ∶

ピロリ! 来いよ〜! 火力欲しいー!

自動でもとに戻るならよかったよかった。

だがまあせっかく来たなら貸本屋を探したい。

きっと俺なら見つけられる!!

渡し船のアキヒトさんに拾われました……。

「ローレンガのことなら俺に聞きな。遠慮すんな。ただ、貸本屋は店主の気まぐれで開いてる時と開いてないときがあるからなぁ」

そうやってたどり着いたのは、和風建築ばりばり! 古本屋って感じの店構えでした。

わー。

周りは長屋だ。江戸の建物VRで体験みたいになってる。

扉は開いた。

店主は一番奥で煙管をふかしていた。

「こんにちは。本を探していまして」

「ふぅん。どんな本だい?」

「髪切りというモンスター……妖怪について書かれたものです」

店主は立ち上がるとカウンターのこちら側に来て、俺をじろりと睨む。

「ずいぶんと読んでいるようだな」

「知らない世界の話はとても面白いです」

俺の胸元に光る『本好きの証』。店に入る前に見えるようにつけておいた。

戸棚から巻物を抜き出す。

「ほら、これだ。……来訪者が狙われているようだな。あんたは平気そうだが」

「ありがとうございます。そこのテーブルをお借りしていいですか?」

「ああ、自由に使いな」

ローレンガの本は巻物だったよ。あとは和綴じ本。

テーブルないと読みにくいな。

髪切りは、来訪者の髪を狙うモンスター。ローレンガ由来の物だそうだ。切った髪を集めていくので、その場に髪は残らない。

彼らは髪を集めることを目的としている。

書いてある絵は、ネットで見つけた絵と同じようなもの。長い嘴にハサミ型の手。切るだけじゃつるつるにはならないと思うが、まあそこはそれ。

と、ページをめくって気になる記述を見つけた。