作品タイトル不明
第186話前準備
「うーむ……」
寮の自分の部屋は物が多く、割と雑多としていると思う。
だけど最近はダンジョンに潜っているから、物が増える事自体は少なくなっているかもしれない。
もっともその増える分量はどんどんアイテムボックスの中に凝縮していっているだけのようでおっかなくはあるけれど……これは気にしたって仕方がないことだった。
何が悪いかって言えば、在庫を捌こうかと思っていた売店が思ったよりうまくいかないのが悪い。
まだまだ持て余す素材をバシバシ売りさばくには、時間が必要だった。
そして僕は大量の荷物に思いを馳せながら、今同時に最低限の荷物にも頭を悩ませなければならなかった。
「うーむ……」
現在お準備中の旅行鞄の中身は物が溢れていて、最低限にはまだ届いていない。
どうやら僕は何でも持ち運べるようになった反動で元に輪をかけて片付けられない人になってしまったらしい。
「うーん。そもそもいらないか? 旅行鞄? リュック背負っていけば大抵の問題は解決するんだよなぁ。でもあまりにも情緒がないよなぁ……。ファイアーボールさんと同じ鞄だしなぁ……いいか別に」
僕はポイっと手に持った日用品の入ったポーチをアイテムボックスの中に放り投げると、その時スマホがブルリと震えて僕は手を伸ばす。
メッセージは浦島先輩で、頼みたいことがあるとのことだった。
「何だろ?」
一先ず返信。
すると、あっという間に返事は返って来たのだが……その内容に僕は困惑していた。
「んん? 僕の装備を貸して欲しいって? なんで?」
僕の装備というと、あの市販のジャージかな?
数々の戦いをくぐり抜けてきた歴戦のジャージを貸して欲しいとは、浦島先輩も困ったお人である。
しかし不都合があるかと言うとそんなこともなかった。
僕は部屋に備え付けられたクローゼットに目をやると、全く同じデザインのジャージがズラリと並んでいた。
「んんー。まぁストック沢山あるからいいか。どうするんだろう?」
とりあえず衣装のストックを何枚かクローゼットからアイテムボックスに移すのは今すぐやっておこうか。
しかし女子に自分の服を貸すのってどうなんだろ?
ちょっとドキドキしてしまうけど、必要だと言うのなら貸出自体には問題ない。
「問題ないって……言い切ってしまっていいんだろうか? まぁ……いいか。 そもそもわからない事ばっかりだ」
イベントも旅行もどうなるものやら? あらゆることにちょっと経験が足りない。
だけどどうやら僕は自分でも驚きではあるが、かなり今回の旅行を楽しみにしているみたいだった。