軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第185話一家に一個欲しい釜

錬金釜。

それをざっくりと説明すると錬金術の簡易版を使用できるアイテムである。

ただ、武器防具にエンチャントするという事にはほとんど制約はなく、更にスキルとしての錬金術を併用することでより複雑で強力なアイテムを生み出すことができるダンジョンアイテムを弄るなら必須と言っていい万能アイテムだった。

しかしこいつは本気で探せば、レアだがそれなりに出てくるアイテムでもある。

色々とこれから頼みごとをするにあたって、ないと困る。

そう判断した僕は全面協力して東雲さんに手に入れて来てプレゼントしてみたわけだが、東雲さんの使ってみた反応はずいぶん恨み言に満ちていた。

「……こんないい物だったなんて思いませんでしたよね。モンスターが出てくる壺やていうた奴誰なん!? 殺してやりたい気分ですわぁ……」

「そんなに? まぁモンスターもそれなりに出てくるから本当に気を付けて?」

「もちろんです! まぁそれは今は置いておきましょう! で! 龍宮院先生! どうです着心地は!」

というわけで東雲さんは無事未知のガジェットを使いこなし、依頼の品をごく短期間で仕上げて来た。

ひとまず依頼通りにきっちりとゴールド仕様に、そして四角い箱に収めてきた手腕はさすがとしか言いようがない。

「魔力を流すと、瞬時に装着可能です。試してみてください」

しかもすごいギミックまでついていて、鎧は魔力を流すことで自動的に体に装着される意欲作だ。

「おおー……」

一瞬で服の上に黄金の鎧を纏った龍宮院先生は満足そうに自分の姿を見ていた。

ちなみに何とは言わないが天秤風モチーフの衣装とだけこっそりと付け加えておこう。

「使いこなし過ぎな件について……」

「いえいえまだまだですよ。今後もご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします先生」

「先生って……まぁでも聞きたいことがあるならいつでも聞いてよ」

すでにもう教える事なんてなさそうだけどと思ったけれど、こいつは僕にとってもプラスになるはずだった。

これは意外な成果だが、専門の人と連携することによって攻略君からより高度な情報を引き出せるってことだ。

基本が聞いて答えるというスタイルだから考えてみれば当たり前なのだが、これは今後も使っていきたいテクニックになりそうだった。

「おお……! なるほど。ギミックも凝っていてこんなことまでできるんだなぁ」

「その通りです。先生……ワタヌキ先生直伝ですので!」

「ほぅ。そうなんだ」

「頑張りました。そりゃあ全力出すでしょ? 黄金の鎧ですよ?」

「それはそうだね。うん! すごく強そうだ。ちなみに従来のものと比べて、この鎧ってどのくらいの性能なの?」

目をキラキラ輝かせて尋ねる龍宮院先生だが、同じくニコニコの東雲さんはバッサリ言った。

「はっきり言って鎧としての性能はめっちゃ低いです!」

「……え?」

聞き違いかときょとんとしている龍宮院先生だったが、もちろん聞き違いなんかではなかった。

「だって今回素材はダンジョン産とはいえ黄金ですから。重いし柔らかいですよ? ああ、でも先生くらい探索者としてのレベルが高ければ、魔力の通りはでたらめにいいですから。従来品以上になる可能性はあります」

「それって、つまり……私のレベルに依存すると?」

「その通りです! コスプレ用がおすすめですね!」

「……」

とても切ない視線が僕の方に向けられるが、僕はそっと目を逸らした。

機能はとにかく見た目重視なので察して欲しい。

素材を変えればすごいのになると思うけど、黄金に光り輝くかは神のみぞ知るところである。

ただ僕としてはその鎧で何をするのかが気になっていた。

「で、龍宮院先生は、これでイベント参加するんですか?」

一緒に旅行に行くのかなってニュアンスを含めた問いだったのだが、龍宮院先生はにっこりと張り付けたような笑顔で僕をけん制して首を横に振った。

「いいや参加しない。単にこれ着てダンジョンに行ったら上がるかなって」

「あれ! そんな理由!?」

「気分は大事でしょう? あ、でも顔を隠す装備は欲しい」

そこは恥じらうんだ……。

まぁでも確かに黄金の鎧ならマスクは欲しい。その気持ちはよくわかった。

「そうですね……僕らのコスプレも、まさにそういうところあります」

「だろう? 技のキレも違ってくるってものだよ。少し使ってみていいかな?」

「はい! もちろんです! 一応スキル系は強化されるはずですよ?」

東雲さんは最初から実験はするつもりだったようでいそいそと的をセッティングし始めていた。

龍宮院先生は的に手のひらをかざすと鎧が反応して黄金の輝きが強くなった。

あの光が魔力を増幅している証なのだが、色つや輝きはもちろん付加する魔法的効果までも抑え、そしてそれらを完全に制御する合金を製作できるスキル練度に到達した時、真なる鎧は完成することであろう。

「「おお!」」

しかし現状だって見た目は完ぺきである。

僕と東雲さんはソワッといろめきだつ。

先生の拳が恐ろしい速度で繰り出されると、弾き出された気功弾が的を一瞬で撃ち抜いて実験は終了だった。

「おお。いいね。言うほど悪くないよ?」

「感覚違いますか?」

「全然違うね。これなら連射がだいぶできそうだ」

「はー」

僕はせめてと施したギミックが少しでも良い方向に働いたことにホッとしたけど、残念ながらコスプレ用。イベントに参加しないなら無用の長物である。

なんともむなしい思いでメモを取っていると、何時もは僕よりも騒がしく色々弄り始める東雲さんが、妙におとなしいことに気が付いて、僕は彼女を振り返った。

そこには表情を強張らせて何やら考え込んでいる彼女がいた。

「……」

「どうしたの東雲さん?」

「いえちょっと……」

とは言うが絶対ちょっと気になっているくらいじゃない。

そして東雲さんは主に気功弾の跡を凝視している様に見えた。

「魔法でもない、溜めなし、属性ナシのエネルギーの固まりがあんな威力になるんですね……。でもこれって、見た感じ……なんか銃っぽいなって思って」

「銃?」

「そうですそうです。だってほら遠距離を狙える物理攻撃でしょう? 魔力の一種? なんですからモンスターの魔力だって突破できるでしょうし」

「まぁそうかな?」

「これ……同じ理屈で作れませんかね? ダンジョン用銃。……私が無理でも父さんなら……」

「……」

それはできると言っていいのか悪いのか。

しかしよせばいいのに訊ねれば攻略君はきっちり答えてくれた。