軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

悪役令息と悪役令嬢の誘拐。【後編】

「テレサロに自分にまで〝魅了の聖術〟を掛けさせたのは、ブラフの一つかしら?」

冷ややかな顔になったウェルミィに、その顔もいいな、と、うっとりしながらズミアーノは頷いた。

「そうだけど、興味もあったよ。術を掛けられるとどうなるのか」

聖女の術は、中々に興味深かった。

自分で受けてみると、理解度が全く違う。

それと同じような効果を持つという〝魅惑の術式〟に関する文献も読みあさり……完成させたのが、今手にしている【服従の腕輪】だ。

ツルギスにつけた【夢遊の腕輪】よりも遥かに強い拘束力を持つ、作製法が漏れたら即座に禁呪に指定されるだろう品。

魔術によっては絶対に解けず、精霊の力が及ばない……この国では禁輸品に指定されている……『 黒晶石(こくしょうせき) 』を砕いて再加工し、成形してある。

「……効果を、自分で実験したのね?」

「そうだよ。【 誘(いざな) いの香水】も、【夢遊の腕輪】もね。自分に使ってみるのが一番手っ取り早いだろう?」

あれらは普通の呪いの品よりも、精神への影響が少ないことも証明済みだ。

ウェルミィの、まるで変質者を見るような目に、少しだけ哀れみの光が宿っている。

「何でも持っているのに、破滅への躊躇がないわね」

「ないね。オレにとって、全ての物事は面白いことが一番。一番どうでも良いのが自分。これでも、幼馴染みや後輩は大切なんだよね。退屈だけれど、破滅させたいとまでは、実は思ってない」

「だったら、何故こんな騒ぎを起こしたの?」

「さっき言っただろう?」

ズミアーノは首を傾げつつ、もたれていたドアを離れて、ウェルミィに向かって一歩踏み出した。

「君とオルミラージュ魔導卿に挑むのが面白そうだったから、だよ。そして本気だった」

「本気?」

近づいたズミアーノが怖いのか、ウェルミィは体を強ばらせながら問い返してくる。

「ーーー全てを賭けたんだ。君たちに挑むのに。遊びだから本気じゃない、なんてことないだろ? だから、オレが大事に思っているのものも全て差し出して挑んだのさ」

「そう。結果は?」

その質問には答えずに、ズミアーノは微笑んだ。

※※※

彼の浮かべた、蕩けるような笑みに。

ウェルミィは、内心の怒りを抑えきれなくなっていた。

ーーーふざけないで。

ズミアーノは、自分とウェルミィが似ていると言った。

そしてエイデスが、賢いけれど私の邪魔をした、と。

彼が手にしている腕輪は、胸がざわつくような禍々しい気配を放っている。

きっと、ツルギスからエイデスが取り上げた腕輪より遥かに効果が強いものなのだろう。

それで、ウェルミィを操り人形にするつもりなのだろうか。

「さぁ、君の〝 騎士(ナイト) 〟は、助けに来るかなぁ?」

その問いかけに、ウェルミィは奥歯を噛み締めた。

「助けに来ても来なくても、貴方にこれだけは言っておかないといけないわ」

「何?」

「エイデスは、私の〝 主人(キング) 〟よ。……〝 妃(クイーン) 〟の手助けなんか必要ない、並外れた主人だけど」

ボードゲームに例えて、ウェルミィは訂正する。

『何でも言うことをきくから』と、自分の全てを捧げたのは、あの場でそれを決めたのは、ウェルミィ自身の意志で、選択だった。

「それに、エイデスは、私の邪魔なんかしてないわ!」

ぎゅ、とドレスのスカートを掴んで、ウェルミィはズミアーノを睨み付ける。

「彼は、助けてくれたのよ。お義姉様だけじゃなくて、私の。ーーー私の心まで、助けてくれたのよ!」

本当は。

お義姉様と一緒に居たかった。

ずっと笑い合って、一緒に成長して、それから、お互いに大事な人を見つけて、手紙を書いて。

そういう幸せを、ウェルミィは一度諦めた。

覚悟を決めて、全てを捨ててお義姉様を救うために挑んだ。

「私は、救うために頑張ったのよ! お義姉様を!」

そして、あの人は。

ウェルミィの大切な、ウェルミィを大切にしてくれる、あの人は。

「エイデスは、私の計画を潰して、迎え入れてくれた。私が必要だって……!」

絞首台を見据えていたウェルミィの視界に割り込んで、『そんな未来は見なくていい』と。

そして、手に入れたのは、お義姉様と笑える未来だった。

エイデスはウェルミィを腕の中に包み込んで、夢見た景色を、見せてくれた。

「私の全部を、守ってくれたのよ! 私の大事なものを、全部! 自分のことを大切にしてくれた相手を犠牲にした貴方なんかと、私の矜持が地に落ちた底から掬い上げて都合の良い『救い』を押し付けようとした、見てただけの貴方なんかがーーー!」

ウェルミィは、昂ぶる感情のままに、言葉を叩きつける。

「ーーーエイデスを、侮辱するな!」

吐き出した想いを聞いて、ズミアーノは目をぱちくりさせた後。

どこまでも嬉しそうに、破顔する。

「そっか、ゴメンね」

そうして口にされた謝罪は、とんでもなく軽かった。

まるで、どうでも良いことのように……ちょっと肩がぶつかって文句を言われた、くらいの軽さで告げるズミアーノが、まるで理解できない生き物のように見える。

ーーーああ、この人は。

人を思いやる気持ちを、育てられなかった人なんだ、と、ウェルミィは思った。

どこまでも自分本位。

それは、ずっと孤独だということと、もしかしたら同じなのじゃないかと、ウェルミィは思う。

人に想われた分だけ、想う気持ちを返せないのならば。

それはとても虚しい人生なのだろうなと、理解してしまった。

納得は出来ず、同じ気持ちにはなれないけれど。

深く息を吸い込んだウェルミィの首元に、ズミアーノの手が触れて、影が落ちた瞬間。

「ーーーそこまでだ」

と、聞こえた声は、聞き慣れない、若い男の声だった。

「あれ?」

同時に、ズミアーノの体にどこからか現れた縄がひとりでにシュルシュルと巻きつき、腕がウェルミィの首から離れて後ろ手に縛られる。

さらに、拘束されたズミアーノの首に、ピタリと刃が添えられた。

ーーーえ?

ウェルミィは疑問に思いながら、突如現れた青年を見上げる。

先ほど、衛兵に連れられていったはずの、赤毛の青年ツルギスが、剣を握ってそこに立っていた。

同様に、突然ズミアーノの背後に現れて左手を前に突き出している怜悧な風貌の青年、シゾルダも。

彼の左手に嵌まった指輪は、補助魔術を発動していることを示す緑の光に染まっていた。

縄でズミアーノを拘束しているのは、シゾルダなのだろう。

「な、何で貴方たちがここに?」

ウェルミィの目には、彼らが自分とズミアーノの影から飛び出すように現れたように見えていた。

「なるほど、『影潜み』か……これはやられたなぁ。いつの間に会得してたんだい? ツルギス」

縛られても特に焦りを見せないズミアーノが問いかけると、ツルギスは渋面で答えた。

「……正面から父上に挑んでも、俺では絶対に勝てないからな。……絡め手として、修練した」

「なるほど、臆病な君らしい理由だね。ねぇ、ミィ。助けに来てくれたのは、やっぱり〝騎士〟だったねぇ。〝 衛士(ルーク) 〟まで居たのは読めなかったな」

あはは、とズミアーノが全く気にしてないないように、言葉遊びを口にして笑う。

「い、一体、いつから……?」

ウェルミィが問いかけると、シゾルダが答えてくれた。

「貴女が、オルミラージュ魔導卿と共に休憩室を出た後です」

シゾルダたちは、衛兵に連れ去られる演技をした後、すぐに横の部屋に留まっていたそうだ。

そして指定された時間通りに出てきたタイミングで、エイデスが認識阻害で彼らを包み、すぐ後ろから追いかけて影に潜んだらしい。

「魔導卿は言っていましたよ。『ズミアーノが私が考えている通りの男なら、このタイミングでウェルミィに接触してくる。そうでなければ、後でただ捕まえて終わりだ』とね」

「あー……やっぱり見抜かれてた? 本当にごめんね、ミィ。それと、ありがとう、魔導卿」

ズミアーノが苦笑して、先程よりは重めの謝罪と、何故か感謝を口にした。

「〝 詰み切り(チェックメイト) 〟だ、ズミアーノ。お前がウェルミィを害すことはないと分かっていたが、それでも穏便に済ませず怖い思いをさせたことは、償ってもらう」

と、当たり前のように答えが響いた。

驚いてウェルミィが目を向けると、いつの間に開けたのか、音もなくドアから入って来ていたエイデスがそこに立っていた。

「遅くなったな。すまん」

ウェルミィは、謝罪を口にする彼の姿を見てホッとすると同時に、休憩室で囁かれた言葉を思い出す。

『これで、しっかりマーキング出来た。お前が俺のものだという証明だ』

ウェルミィたちが休憩室から出てきた時間が、エイデスの指定通りだったこと。

そしてあの発言の意図が二重の意味を含んでいたことを理解して、同時にキスを思い出して気恥ずかしくなり、ウェルミィは顔を真っ赤にして怒鳴った。

「ヒントが分かりにくいのよ! それに怖がってなんかいないわ!」

エイデスは、キスの時に自分の魔力をウェルミィに移して、目印をつけていたのだ。

彼は、軽く眉を上げた後に、ニヤリと笑みを浮かべる。

「ほう、そうか。少しは悪いと思って、後で詫びの品を贈るか言うことでも聞いてやろうと思ったんだが、怖くなかったか。流石はウェルミィだな?」

「……!」

ーーー怖かったわよ! 当たり前じゃない!

心の中で喚くのが聞こえたような間で、ふっとエイデスが目を細める。

「嘘をついたお仕置きは、無しにしておこう。確実にズミアーノを嵌めるためとはいえ、お前に隠していたのは本当に悪いとは思っているからな」

言いながら、エイデスが近づいて来ると。

ズミアーノがゴソゴソと手を動かして、何か、カチッという音がした。

ーーー何をしたの!?

ウェルミィが警戒していると、ズミアーノは視線に気づいたのかヘラっと笑って、とんでもないことを告げた。

「ああ、【服従の腕輪】を自分に嵌めただけだから、気にしないで」

と。

「え?」

「ミィに触れさせて貰えて助かったよ。じゃないと、魔導卿に仕える羽目になるところだった。どっちでも良いんだけど、オレはミィの方が好きだからね」

「い、一体どういう事!?」

訳がわからなかった。

あのとんでもない呪物を、自分に?

「あ、もう離して欲しいな。全部見抜いてた魔導卿なら、オレがもう暴れないって分かるでしょ?」

ズミアーノの問いかけに、エイデスはあっさり頷く。

「まさか、ウェルミィに自分の命まで差し出すつもりだったとはな」

「だって、全力で負けたからね。ーーーあの夜会の茶番の時点で、もう勝ち目なんかないって知ってたし。証拠がない? あのタヌキ国王にそんな嘘ついて良かったの? オレ、魔導具や香水のほうは自分が関与した手がかりなんか消してないよ?」

まるで調子が変わらないズミアーノに、ツルギス達もエイデスの許可を得て、戸惑いながら剣を引き、拘束を解く。

「その腕輪……何なの?」

「だから【服従の腕輪】だよ。自分がつけるための一点もの。あ、研究成果は焼き払ったから、他の誰にも複製出来ないから安心してね」

黒い腕輪は、確かにズミアーノの手首のサイズにピッタリだった。

「さっき君に触れて、 ご主人様(クイーン) として指定させて貰った。君がオレに『死ね』と言えばオレは死ぬし、『解放する』って言えば腕輪の束縛は解ける。それ以外の方法だと腕輪を無理やり外したら死ぬけど、代わりに残念ながら、魔術で焼いても首を切っても水に沈められても死なない体になった」

便利な奴隷だよー、とあっけらかんと言われて、ウェルミィは開いた口が塞がらない。

「おそらくだが、分霊の禁呪に近いものを使ったな?」

エイデスの問いかけに、正解、とズミアーノは頷く。

「魂の一部をミィに移して、半分を腕輪に移した。ただの解呪だと……まぁそれも難しいんだけど……魂が解放されて、肉体に戻れなくて死ぬね」

「何が目的なの……?」

「ミィに魂のカケラを渡したこと? それは、ミィがダメとか嫌とか思うことを、オレがいくら面白いと思っても、出来ないようにする 制約(ギアス) だね。いちいち聞いたり命令したりするのも面倒でしょ?」

「そうじゃなくて! 何で自分でそんなことしたの!?」

ウェルミィの問いかけに、ズミアーノはキョトンとした。

「え? だから、負けたからだよ。捕まったら処刑しかないじゃない? 内憂外患を誘発して、禁呪に手を出して、法に触れる精神操作。助かる道ないでしょ?」

問われて、ウェルミィは黙った。

確かに、彼の積み重ねた罪は、自覚的である以上そうした法で裁かれるだろう。

「オレ、自分が勝てないなーって思う人が二人いてさ。一人はタヌキ国王で、もう一人がオルミラージュ魔導卿だったんだよね。でも、挑んでみるの面白そうじゃない? だから、負けたら死ぬつもりだったんだけど」

そう言いながら、ズミアーノは腕輪を指差す。

「一応、殺すには勿体ない程度の能力はあるつもりだからさ、どうせ死ぬなら有効活用してもらっても良いかな、って思って。ミィを攫ったのは、二人きりで話したかったのと、ミィに決めて欲しかったから」

「……何を?」

分かっていて、聞きたくなかったけど、聞かざるを得ない。

「オレをここで殺すか、影として使うか。言っとくけど、役には立つよ? それに、近くで眺めてたら、魔導卿やミィみたいになれる方法を思いつけるかなぁって思って」

ズミアーノは、今まで通りの軽薄な笑みを浮かべながら。

瞳の奥に、どうしようもない寂しさを浮かべていた。

「オレ、結局大切にするとか守るとか、躊躇うとかって気持ち、大事だなーと思うもの全部捨てても、分かんなかったからさ」

ーーーバカじゃないの。

ウェルミィは思った。

大事だなと思えるなら。

それはもう、理解しているのと同じなのに。

でも、ズミアーノは自分で止まれなかったのだ。

面白いと思ったら実行する、そんな気持ちを抑えられるような抑止力が、魂の中にないんだろう、と、ウェルミィは思った。

きっと腕輪は、彼が止まれない自分を止めるために作り出した、抑止力そのものなのだ。

なら、その命の使い道を決めるのは、ウェルミィじゃなくて……大事だと思われていたのに捨てられてしまった人たちだろう。

「……ツルギス様、シゾルダ様」

「「はい」」

声を揃えて答えた二人に、ウェルミィは問いかける。

「どうされますか? 彼を。私は、貴方たちが決めるべきだと思っています」

ズミアーノは色んな人に迷惑を掛けたけれど、その最初のきっかけになっただろう彼らに。

選択を預けると。

二人は目を見交わしてから、ズミアーノを見る。

「お前さ……この状況で、どうやって俺が、その、……ダリステア様に、話が出来る様になると思ったんだ……?」

凄く言いづらそうに問いかけるツルギスに、ズミアーノはあっさり答えた。

「オレが勝てば、ダリステア様は大逆を止めた英雄で、ツルギスは助言を与えた感謝されるべき男だ。ウェルミィは処刑される前にオレが助け出せるし。んで、今のこの状況なら、ツルギスはダリステア様に謝りに行くべきだろ。顔合わせて話をする機会は強制的に生まれるじゃん? 会うのダメって言われても手紙は出せる口実になるし」

なんか間違ってる? とズミアーノは首を傾げるが、諸々全部間違っている。

周りの迷惑が一切勘定されてない辺りが。

「私は、生かしておいて構わないと思うがな」

少し呆れた様子ではあるものの、エイデスは何故か意味ありげにこちらを見てから、言葉を重ねる。

「実際、有用だ。少なくとも、私に挑む辺りは好感が持てる。私のものであるウェルミィを狙ったのはいただけないがな」

そうだった、とウェルミィは思った。

エイデスは自分に挑戦してくる気概のある人間が好ましいと、常々言っている。

ウェルミィとの出会いも、そういう感じだった。

ズミアーノは少し不満そうな様子で肩をすくめる。

「貴方よりオレの方が先に出会ってるし、先に好きになったのに」

「私やお前がウェルミィを愛していることなど、大して重要なことではない」

「……?」

エイデスが髪を掻き上げながら告げるのに、ズミアーノは訝しげな顔をした。

「ウェルミィが私を選び、愛したことが重要なのだ。愛の強さや重さなど、誰にも計れはしない。守ることなど、ある程度の能力や権力があれば誰にだって出来ることだ」

迷いのない言葉選びで、彼は断言した。

「だが、ウェルミィは私を愛してくれた。ならば私のものにして側に置き、 愛(め) で、守る。彼女がそれに幸福を感じることが重要なのだ。ーーーウェルミィにとって自分が必要か、その肝心な部分の視点がお前には欠けていた」

だが、とエイデスは続ける。

「お前はウェルミィに何も求めはしなかった。それも自分本位ではあるが、評価は出来る。与えるだけの想いが苦でないなら、その 歪(いびつ) な気持ちにでも応えて返してくれる女を伴侶にすることだ」

ウェルミィは、ズミアーノを与えられた想いに応えられない人、だと思ったけれど、エイデスは違ったようだった。

与えるだけで、見返りを望まないから通じ合わないのだと。

「生きた上で、他の女に命を握られているお前を受け入れてくれる女性がいればな」と締めて、エイデスはズミアーノの命の選択を預けた二人に目を向ける。

ツルギスは嘆息し、シゾルダは天井を仰いだ。

「……こんなクソボケでも、凶行に走った原因は俺達で、その為の行動でした」

「償うなら、三人でやらせて欲しいとは、思います」

二人が遠慮がちながら答えを出したので、ウェルミィはズミアーノに告げた。

「こき使うわ。休む暇があると思わないことね。それと、私が貴方の主人をやるのは期間限定よ」

「そうなの?」

「罪も馬鹿さ加減も全部さらけ出して、そんな貴方でも良いと言ってくれる人がいたら、私に紹介しなさい。私はその人に、貴方の命の権利をあげるわ。尻に敷かれても良い、殺されても構わないと思えるような相手を、見つけて来なさい」

それが最初の命令よ。

ウェルミィがそうして鼻を鳴らすと。

ズミアーノは、まるで子どもみたいな笑顔で「分かった」と答えた。

迷惑を掛けた全員が、ズミアーノを許すまで。

もし許されないなら、その罪を償い終えたと判断出来るまで。

ーーーウェルミィは、ズミアーノに生きることを許した。

彼は、迷惑は掛けたけれど、結局、誰の命も奪わなかったから。

そこだけは、認めてあげてもいい、と、ウェルミィは必死に自分に言い訳する。

ーーー『人を殺す』という判断と覚悟が出来ない自分から、そっと目をそらしながら。