作品タイトル不明
第226話 交差
夜、屋敷の自室にて。
少し普段とは違った空気が流れ、緊張感が走る。
「……カズヤさん」
セレスは申し訳なさそうな声色で俺に声を掛ける。
「差し支えなければ今日、中島さんと話した事、教えていただいてもいいですか?」
どう伝えようか迷ったが、下手に言うこともできず。そのまま伝えた。
「その、夜のことだ。しっかり話し合って、満足しているかどうか……みたいな」
「そう……ですか」
また気まずい空気が流れる。
「今日、葛西さんからも同じことを聞かれました」
「……そうか」
ソファに座る俺のところにセレスがやってきて座る。
セレスから手を重ね、そして謝ってきた。
「……ごめんなさい。まさか我慢しているだなんて……」
「それについては、俺も少ない自覚はなかったんだ。だから、謝る必要はない」
「……カズヤさんはあの回数で満足だったのですか?」
そう聞かれると弱る。
どう言葉に纏めて良いか分からずにいると、またセレスが謝る。
「……ごめんなさい。カズヤさんはエルフのことを気にしてくださっていたのですよね?」
「……まあ、そうだな。セレスに辛い思いをさせたくなかったし」
「その心遣い、本当に嬉しいです。でも、それでカズヤさんが我慢なさるのは良くないです」
「……でも」
「今の私は人に近い存在です。ですから大丈夫なんですよ?」
熱のこもった視線が俺を射抜く。
「私は果報者です。愛も肉欲も向けてくれて、でも、その肉欲を抑えてでも愛してくださる方がいて」
セレスは俺の首元にしなだれる。
そして熱のこもった言葉で俺の鼓膜を震わせる。
「私は、カズヤさんが望むなら、……いえ、私も望んでいるのです。いつでも、何度でも、愛してくださいませ」
◇
朝、目が覚める。
窓から刺す日差しでいつもよりも遅い時間であることは明白だ。
身体中を満たすこの充足感、今ならどんな敵にでも負けることのないと自信をもって言える。
「んぅ……」
セレスが俺に寄り添い、離れないように距離を縮める。
触れる肌が熱を交換する。それもひどく心地よい。
少し乱れている銀糸を整えてやると、セレスの瞼が動く。
「悪い。起こしたか?」
「いえ、全然。ねえカズヤさん」
「どうした?」
「今、この瞬間が永遠に続けば良いのにと思ってしまう私は愚かなのでしょうか?」
「俺も、同じ気持ちさ」
どちらともなくキスをする。
啄むように、深く愛すように。何度でも。
「……そろそろ起きませんと」
「もう少しこのままでも良いんじゃないか?」
「でも、二人が待ってますよ」
「本当にもう少しだけだから」
「――もう、仕方なのない人」
そうして俺たちはもう少しだけ、この心地よさに身を委ねる。
後五分、十分と願ってやまないけれど。
そんな朝のひと時。