作品タイトル不明
第225話 気づき
「ごめんね〜急に呼び出して」
「それは全然良いですけど、どうしたんですか?」
「ちょっと中島くんと話してて思ったことがあったから、呼んだ感じ」
そういう葛西さんに私は何だろうと思いながら話を聞く。
「ちょっとぶっちゃけた話をするけど、ごめんね?」
「それも全然大丈夫ですよ」
注文したカフェオレが届く頃。葛西さんは話しを始めた。
「あのね? 和也くんとさ、その、ちゃんと シ(・) てる?」
「ほ、本当にぶっちゃけた話をしますね!」
彼女が言わんとしていることはニュアンスで瞬時に理解する。
自分の頬が熱くなるのを感じる。
でも、葛西さんは茶化している様子はなく、真剣そのものだった。
「そ、それは一応夫婦ですので、それは……その……」
「よかった、レスとかいうわけではないんだね」
「れ、レ!?」
「恥ずかしいのはわかるけど、大事なことなんだから」
「それはわかっていますけど……」
続けて聞くねと言葉を置いた葛西さん。
「月にどれくらい?」
それを聞かれて反射的にカズヤさんの方を見る。
どうやらあちらも話に夢中なようで、こちらの会話は聞こえてないようだ。
「ええっと、一、二度です……」
なるべく葛西さん以外には聞こえないように小さな声で告げる。
「高校生でしょ? そんなに少ないの!?」
「ほ、他の方がどうなのかとかあまりわからないのですが、そうなのですか?」
「旺盛な高校生だよ? 少ないに決まってるじゃん! ちなみにどっちからとか聞いてもいい?」
「本当に色々聞くのですね……そうですね、八割ぐらいカズヤさんからです」
「今更だけど、もしかして頻度に関して話し合ってたりするの?」
「いえ、明確に話しているわけじゃないです」
そう答えると、少し呆れた声を出してから今一度聞いてくる。
「エルフの慣例的にそういうのあったりするの?」
「特段そういうのはありませんよ」
「だったらさ、和也くん。すごく我慢してるかもしれないよ」
「え?」
私は驚き、固まる。
「だって、今の体高校生なんでしょ? そりゃ溜まるものもあると思うよ?」
「でも、10年前は……」
「戦争中だったんでしょう? ずっと前線に出てたんだったら参考にならないよ」
確かに、戦いの中では肉欲は二極化すると聞いたことがある。
ずっと戦いの最中であったカズヤさん。それを鑑みると、ひどく納得が行った。
「二人はさ、いつも気持ちは通じ合ってるかもしれないけど、こういう肉体的な繋がりも必要だよ」
「そう、ですね」
学者が言うに、人間とエルフの差は魔術的なことの他に、寿命があげられるという。
この世界の物語のように、エルフの方が数倍寿命が長いのだ。
それに起因して、繁殖意欲も人間に比べ控えめである。
そう言った論文をどこかで見た記憶が思い起こされる。
私はずっとカズヤさんに我慢を強いていたのかも知れない。
その事実が眼前に示された時、身が縮こまる思いが押し寄せる。
「……ちゃんと、話し合った方がいいんじゃない?」
「ありがとうございます。私は大変な見落としをしていました」
「今気がつけたならよかったじゃん! ねね、このままエロティックな恋バナしようよ」
そうして話題を切り替えてくれる葛西さんに感謝する。
帰ったらちゃんと話そう。そしてちゃんと謝ろう。
そう思った。