作品タイトル不明
第224話 肉欲
放課後、学校を終えた俺たちは少し大人な雰囲気の喫茶店にやってきていた。
「どうしたんだ?こんなところに呼んで。しかも男子と女子で別れるだなんて」
喫茶店にやってきた俺たちは、俺と遼、葛西さんとセレスの二手に分かれてそれぞれ座った。
俺と遼はカウンター、その後ろのテーブル席にセレスたちと言った並びだ。
「いやあな? ちょっとした思惑があるんだ。気にするな」
「気にするなという方が無理なんだが?」
「まあまあ」
変に茶を濁される。飲んでいるのはコーヒーだが。
「それで? 何なんだ話って」
遼もコーヒーを一口。
その後、いつもよりも真剣な雰囲気で口を開いた。
「俺とお前は親友だが、それでも聞きづらい話をするぞ」
「おう」
「お前、セレスティーナさんに愛情表現してるか?」
その質問に思わず体ごと遼の方へと向ける。
「何だよいきなり」
「いいから答えろって」
「言葉でもしてるし、行動でも示してるつもりだ」
「言葉は俺も知ってる。けど、行動で示してるのか?」
遼の言葉に今一度振り返る。
好き・愛してるとは伝えているし、ハグやキスだってちゃんとしている。
何が問題なのだろうか。
「わかってなさそうだからもっとぶっ込んで聞くぞ? 肉体的な繋がりをしっかり持ってるのか?」
本当にぶっ込んで聞いてくるので思わずギョッとする。
しかし、茶化して言っている訳ではないのは彼の表情を見ればわかる。
「……世のカップルがどうかは知らないが、ちゃんと……してるぞ?」
「それもわかってるさ、アリシアちゃんがいるんだから」
「だったら何だよ」
「頻度とか、そういうのだよ」
「……むう」
「ほら、言ってみろよ」
「……月に一、二度だ」
そう答えると、遼は驚愕した様子を見せる。
「お前、それでも本当に男子高校生か!?」
「何だよ」
「少なすぎるって話だ」
「そうなのか?」
「当たり前だ、お前だって肉欲ぐらいあるだろう?」
「そりゃあるけど……」
「なんか理由でもあるのか?」
そう聞かれ、俺は小さな声で答える。
「……エルフは人間に比べてそういう欲が薄いんだ。だからセレスの負担にならないように……」
「それ、本人には言ったことあるのか?」
「いや、直接的にはそう言った話はしたことない」
「馬鹿! 何で話し合わないんだよ」
本当におっしゃる通りで返す言葉がない。
「内容が内容だから気持ちはわからんでもないが、ちゃんと言わなきゃダメだろう」
「……そうだよな」
「ていうか、27の時は大丈夫だとしても、今は結構やばいんじゃないか?」
その言葉に俺は黙って頷く。
「だったら余計だろうに。もしかしたらセレスティーナさんも似た悩みがあるのかもしれないぞ?」
一息ついた遼は困ったように笑う。
「でもよかったよ」
「何がだ?」
「お前たち、完璧すぎたからさ。ちょっと安心した」
長いこと一緒にい過ぎたのかもしれない。
互いのことをわかった気になって、相手に委ね過ぎていた。
それを改めて自覚して己を恥じる。
「……ちょっと話してみるよ」
「それが良い」
「ありがとうな」
「気にするな。普段から世話になってるしな」
そう言って俺たちはちょっと冷めたコーヒーを煽った。