作品タイトル不明
第213話 城
春休みも残りわずか。
新しい学年での学校生活の前に、俺たちは少し遠出をすることにした。
行先は隣の件にある城だ。
歴史の教科書に出てくるほどの有名さはないが、その城は国宝に指定されている。
「立派ですね」
俺も小さいころに行ったきりなので、記憶が薄い。当時にはなかった感慨に更けていると、アリシアたちは立て看板を眺めている。
「すごいですね。このお城、江戸時代から現代まで現存しているんですって」
「それでいうと、450年ぐらいですか。この世界の激動の歴史を考えると、よく現存していましたね」
「確かにな」
入城券を買い、城の中に入る。
中は木造で、元の形を損なわない程度に現代人たちが動きやすいようになっている。
巻物や武具などが展示されており、この城がどういった歴史を辿っていったのかを指示していた。
「教科書では見たことありましたが、私たちの知る鎧と違って色鮮やかなんですね」
「甲冑はただの防具じゃなくて、思想や美意識を象徴するものだったからな。物によって凄く個性的だろ?」
「ロングソードではなく、刀や槍、弓が主戦力だったと聞きます。それも構造に反映されているのかもしれませんね」
「火縄銃はどうだったんですか?」
「装填速度が遅かったり、命中精度がそれほど高くなかったから、戦場を変えはしたものの、銃撃戦が主になることはこの時代はなかったな」
急な階段を上り、天守へ。
そこから一望できる景色は桜も相まって、中々な絶景だった。
「いい眺めですね」
「日本の城も面白いだろ?」
「はい! 文化が違うだけでこれだけの差が生まれるのかと、すごく勉強になりました!」
「それはよかった」
「因みにカズヤさん、この城、どうやって攻め落としますか?」
そうセレスが悪戯に聞いてくる。
「そうだなぁ、魔術が使えないとなると、地道な兵糧攻めになるだろう。この城は攻めずらい」
現代に残っているのは天守のみ。だが、地形はそうそう変わるものではない。
当時の様相を記した記録や、推測をもとに考えても、中々に御しがたい城だろう。
「築城した奴に会ってみたいな」
そういって笑う。
「さて、宝物庫にも行ってみようか」
所は変わり、宝物庫。
ここにはこの城に収蔵されている美術品や武具の類が展示されている。
中には重要文化財に指定されているような代物までがあった。
「あ、お父様! 何やら面白そうなものがありますよ!」
「ん?」
アリシアが指す先には、刀や槍を持ってみよう! と書かれたコーナーがあった。
どうやら刀や槍相当の重りが付いた柄を持ち上げることができるらしい。
「やってみるか?」
「はい!」
アリシアは両手で慎重に刀を持ち上げる。
「刀身が薄いのに中々重いですね」
「そうだろう」
続いては槍。
「槍は……あちらと同じぐらいなんですね」
「材質の差はあっても、根本は一緒だからな」
「お父様もどうですか?」
「俺か?」
アリシアに進められるがままに俺も握る。
「……俺が普段使っているのより軽いな」
ある程度武具を扱えるので、片手で両方とも持ち上がる。
「流石です! お父様」
「すげー!俺もやる!」
その様子を見ていたのか、小学生ぐらいの男の子が柄を握る。
「おっも! なんでお兄ちゃん片手で持ち上がったの?」
「それはな、訓練を一杯したからだぞ」
「むー、俺も鍛える!」
そういって立ち去る男の子。まさに電光石火というべきか。
渚沙もいつかあのくらいになるのかなと思いながら俺たちは観光を続けるのだった。