作品タイトル不明
第203話 お花見そのいち
「お花見に行きませんか?」
朝、朝食を食べている時。ふと、アリシアがそんな提案をしてきた。
コーヒーを口にしながら、俺はそういえばそろそろ桜が見頃だったなと回想する。
「いいですね、お花見」
「いいんじゃないか?」
そう答えると、アリシアはパッと喜びを顔にする。
「ありがとうございます! お父様、お母様」
「お義母様たちもお誘いしますか?」
「せっかくですので、皆さんと一緒に楽しみたいです!」
「招待は二人に任せるよ」
お弁当の中身をどうしようか等々、楽しげに話す二人を尻目に、俺もまた口角を上げるのだった。
◇
日は移り、お花見の日。
ちょうど、満開時期が重なったこともあり、周囲にはそれなりに人がいる。
河川敷に腰を掛け、皆が揃うのを待つ。
「よっ」
「遼か」
「私もいるよ〜」
「葛西さんも」
ニカっと笑う遼と葛西さん。今回はお花見ということで人が多い方が盛り上がる。そう言った計らいで二人も呼んだのだ。
「まさかアリシアちゃんからお誘いを頂くとは思ってなかったよ」
「こうした催しをアリシアから言い出すのはそういえば初めてだな」
「なんでもお友達から聞いたそうですよ」
「セレス」
「お二人とも今日は来てくださりありがとうございます」
「いえいえ、こちとら暇な学生ですから」
そう言って笑い合う。
話を聞くに中等部の学友からお花見をしたと聞き、やってみたくなったそうな。
あちらの世界にもお花見はあった。だが、その内実はいつも通りの政治の場。腹の探り合いで花どころではない。
「みんな揃ったし、そろそろ始めるか」
「そうですね!」
「ほら、グラス」
「ありがとうございます……ってお父様?」
「せっかく初めての主催だ。音頭も……な?」
「ええー!ええっと……」
少しワタワタとしつつも、アリシアは改めてグラスを持つ。
「ほ、本日はお忙しい中お集まり頂きありがとうございます。今日はこの満開の桜たちを楽しみましょう! 乾杯!」
「「乾杯」」
天高く太陽が上り、心地よい春の陽気。
楽しい日はまだ続く。