作品タイトル不明
第202話 アリシアと訓練
昼食を終え、渚沙を昼寝させた後。俺たちは修練場に来ていた。理由はもちろんアリシアの稽古である。
「準備は良いか?」
「はい!」
訓練着に着替えた俺たちは対峙する。
俺は訓練用のロングソードを、アリシアはレイピアを構える。
セレスが合図を出し、アリシアが駆ける。
「はあー!」
刺突を繰り返すアリシア。
時折フェイントを混ぜながらのそれは、我が娘ながら良い攻撃だといえよう。
俺は最小限の動きでそれを防ぐ。
「次はこちらから行くぞ」
そういって俺は攻撃を繰り出す。
城の騎士たちが使うような実直な剣技でアリシアに迫る。
アリシアはというと、多少オーバーなりにもそれを避ける。
レイピアという武器の都合上、剣同士のせめぎ合いは向いていない。できることとすれば、剣を滑らせ、流すことだ。
「加減されているとはいえ、お父様の剣は重いです」
ふーっと一呼吸置いたアリシアはそんな感想を述べる。
「戦績は伊達ではないからな。次は魔術を使ってこい」
「はい!」
まずは身体強化の魔術。起動速度、強化具合、そこらの騎士と同じレベルだ。
「はっ!」
俺はそれを生身で受ける。
カンカンと金属同士がぶつかる鈍い音が訓練場に響く。
続けてアリシアは攻撃魔術を行使する。
セレスは風系統、アリシアは水系統、特に氷を得意としている。
氷の槍を作り出し、俺に向かって放つ。
剣でそれを叩き折ると、アリシアは目にもとまらぬ速さで俺の周りを旋回する。
「足の裏に氷を纏わせ、身体強化で加速……か」
「思い付きだったのですが、もう見破られますか」
「良いアイデアだが、それだと踏み込みが浅くなり重みに欠けるぞ?」
「そこは速さで勝負です!」
旋回しながらレイピアを振るい、四方八方から刺突を繰り出す。
「良い速さだ」
「一歩も動かず回避なさるとは……流石お父様です」
「次はこちらから行くぞ」
俺は魔術を複数行使する。
内容は単純で様々な系統の矢を飛ばすというもの。
ただ、乱れた軌道で追尾する機能が付いている。
各系統にはそれに合った防衛手段が存在する。
火系統には水系統といったように。
次にどれが来るかわからないこの攻撃では、寸前で見分け、防衛することが求められる。
「っ……数が」
「ふん!」
アリシアが魔術の防衛に必死になっている中、俺は一撃、剣を振るう。
その剣圧がアリシアを襲う。
「ひゃっ!」
「そこまで!」
足を取られ転んだところでセレスから終了の合図が出される。
「怪我はありませんか?」
「はい、加減していただきましたので」
「前よりも動きが良くなっているぞ」
「ありがとうございます。……でも、お父様を一歩も動かすことができなかったです」
「そこは父親の意地だな」
そういって俺は笑う。
「後あの魔術は理不尽です……」
「戦場とは常に理不尽や非道に塗れている。思うことは勝手だが、それらを対処できるようになるといいな」
ポンと頭を撫で、俺は続けて言う。
「だが、お前が戦場に出ることなんてないから安心しろ。さ、ここからは楽しい訓練の時間だぞ。何から知りたい?」
「……でしたら、先ほどの遅れてやってくる攻撃の魔術式が知りたいです!」
昼下がり、家族と共に。
うん、今日も平和だ。