作品タイトル不明
第200話 親の心
月が天高く昇る頃、屋敷の自室にて。
俺たちは眠る準備をしていた。
そんな時、俺はふと思っていたことを吐露する。
「俺は親失格だな」
「どうして、そう思われるのですか?」
「アリシアだって甘えたい盛りの年頃なのにそれを放置していたんだ、わかっていたのにだ」
「それを言うなら、私もです。わかっていながら渚沙にばかり構っていました」
「……アリシアは良い友人を持ったな」
眠る渚沙の頬で遊びながら俺は言う。
「もっと家族に向き合わなければな」
「カズヤさんは……いえ、何も言えませんね」
「でも、年頃の娘は何をしたら喜ぶんだ?」
俺は素朴な疑問をセレスに聞く。
男なら俺も昔経験したのでわからなくもない。
だが、娘となれば話は別だ。
思春期が間近のアリシアにどうしたら良いのだろうか。
「……私は王宮で育ちましたので大した参考にはなれないのですが、お話をされるのが良いかと」
「そんなことでいいのか?」
「はい、私は幼少期、お父様やお母様と会話をする機会というのはあまり多くはありませんでした。たまにの食事の際に会話をするのがとても楽しみだったのを今でも覚えています」
「会話か、心掛けるとするよ」
やはり子育てというのは難しいものだ。
そう考えていると、セレスがそっと背に手を添えて言う。
「そこまで気負わずとも良いと思いますよ?普段の会話、普段の触れ合い、それを大切になさればそれで大丈夫だと思います」
「……ありがとう」
セレスに似たのか、アリシアは俺にはもったいないほど良い子に育った。
我慢を滲ませることもしない。それが貴族としての教育だったのだから。
しかし、俺はもっと甘えてほしいと思う。
どんな些細なことでもいい、理不尽でも良い。
そう願うのは傲慢なのだろうか。
「大丈夫です。きっと伝わっていますよ」
「……だといいな」
そうして夜は更ける。
今日も平和だ。