作品タイトル不明
第191話 花粉
「へっくしょん!」
渚沙と一緒に遊びながら過ごしていると、突然くしゃみに襲われた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫さ、どっかで誰かが噂してるんだろ……へっくしょん!」
「本当に大丈夫ですか?」
どことなくむず痒くなる鼻と目。
不思議に思っていると、唯が納得がいったように声を出す。
「そっか、もうそんな時期なんだね」
「唯さん?何か知っているのですか?」
「うん、病院に行かないとねお兄」
「え、なんで?」
「なんでって、花粉症の薬もらいに行かないと」
「あ、あー。そういえばそうだったなぁ」
10年縁がなかったそれを再認識してどこか気怠く感じる。
「カズヤさん、花粉症だったのですか?」
「うん、そういえばそうだったよ」
「異世界だと花粉症とかなかった感じ?」
「そうですね、こちらの世界ほど医療が発達していたわけではありませんでしたので、アレルギーの存在自体なかったので」
「そっか、そういうこともあるんだ」
「おっかしいなぁ、向こうじゃ花粉症の症状出なかったんだけどなぁ」
ティッシュを片手にそういうと、唯が考察する。
「お兄の花粉症って杉に反応するわけじゃん? もしかしたら異世界には杉がなかったのかもね」
「似た材木はありましたが、杉と言う名前ではなかったですね。もしかしたら種から違うのかもしれません」
「なんであれ、面倒だなぁ」
素直な気持ちを吐露するが、懐かしの花粉症の症状が俺を襲う。
「病院行ってくるかぁ、セレス」
「はい、渚沙は私がみておきますね」
「悪いな」
◇
近くの病院に行き、薬をもらう。
外のせいか、更にむず痒くなるのを我慢しながら家路を急ぐ。
「ただいま」
「おかえりなさいませどうでしたか?」
「普通に花粉症。薬もらってきたよ」
「それはよかったです。早く効くと良いですね」
「全くだ」
早速目薬をさす。目に落ちた薬液は文字通り染み渡る。
「今思ったんだけどさ、お兄の屋敷って杉がないから花粉症少し治るんじゃない?」
その時、俺に電流が走る。
確かに、屋敷にいるときはそのような症状が出たことはない。
あの空間は魔術で管理しているから、杉花粉なんてあるはずがない。
「……よし、屋敷に行こう」
この春、屋敷にいる比率が多くなった理由は俺たちしか知らない。