軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第183話 決意

騎士たちの雄叫びと共に矢が飛ぶ。

家の窓に向かって飛ぶそれはセレスの風魔術に阻まれ落ちる。

「セレス!」

「はい!」

合図をした途端、世界にノイズの様な音が走る。

セレスが時空間魔術を行使した結果だろう。

ノイズが走った後、俺たちはだだ広い平原に場所を移す。

これで近所迷惑は考えなくて済む。

連中も散会する前にこの空間に閉じ込めることが出来たと思いたい。

「え、なになに!? 何が起こったの!?」

「どうして家までこっちに来ている!」

この空間にいるのは俺たちとあの騎士たちだけかと思ったが、家も一緒にこの空間に来ている。

感情のままにそれを言うとセレスが謝る。

「すみません! 家を基準に演算したので、申し訳ありません!」

「いや、悪い。時空間魔術は苦手だったよな」

感情のままに言った言葉を悔い改め、家にいる家族に向かって言った。

「絶対に家からでるな! ……そして頼むからこちらを見ないでくれ」

俺たちは騎士たちに向き直る。

装いを平服からかつて身に纏った鎧に変え、しゃらりとロングソードを抜く。

「怯むな! 奴らは高度な魔術を使う! しかしたかが魔術だ!人知を超えたそれではない!」

指揮官であろう人物がそう豪語し、騎士たちは隊列を整える。

「改めて問おう。かつて勇者と呼ばれたあなたが! なぜ!」

「国に何を言われたかは知らぬが、俺にはもう過ぎた過去だ」

「いいえ! いいえ! 過去ではないのです! 勇者はまだ必要なのです! あなたは民を守る義務がある!」

その言葉に剣が揺らぐ。

確かに、関わった以上最後まで責任を取るのが筋というものなのかもしれない。

……だったら――

俺が無意識的に開いた口に被せるように騎士は続ける。

「必要になったのです!世界が混乱している今、平和を実現するためには――」

「一時期はいらなくなったということですね?」

セレスのその言葉に騎士は一瞬押し黙る。

「いえ、そのようなことは!」

「では、あなたの言う勇者とはなんですか?」

「……」

「お答えできませんか。では私が教えて差し上げましょう。勇者とは、英雄とは、諸人を魅せ弱きを助け、強きを挫く。多くの羨望と穢れた野望をその一身に背負った人類の希望的殺戮兵器の事を指します。それでもまだあなた達は勇者が必要なのですか?」

「……勇者と、英雄と名乗ったからには、その責務を果たすべきなのです!」

「――ッ! そんな役目を、あの国、ましてやあの世界の住人ですらない鉄血を知らぬ無垢な学徒に背負わせたのでしょう! 彼は、一度たりとも英雄やましては勇者などと言ったことはありません!」

力の限りセレスは言った。

「武器など持ったことのない彼に! 鎧を着せ、剣を持たせ! 正義か否かを植え付けて! 多くを.....魔王國連合一億六千五百万を斬らせたのでしょう! これ以上彼に、何を望むというのです!」

セレスの言葉に騎士たちはどよめく。

自分たちが正義なのかどうか、分からなくなったのかもしれない。

「……はぁ……はぁ」

「――ありがとう、セレス」

「……カズヤさん」

力いっぱいに言ってくれたセレスの頭を撫で、俺は前に立ち宣言した。

「おれは帰らない。あの世界での役目は終わった。異界の騎士たちよ、お帰り願おう」