作品タイトル不明
第178話 式の相談
「そう言えば、お兄たち、結婚式ってやったの?」
夜、夕食を終え、まったりとしていたとき。ふと唯がそんなことを言ってきた。
「どうしたんだ急に」
「いやさ、ちょうど今ドラマで結婚式の話してたから気になって」
「向こうの世界でちゃんとやったぞ?」
方や英雄、方や王女の結婚式だ。盛大に執り行われたのを覚えている。
残念ながらこちらの世界の写真のようなものはなかったので、文字による記録でしか残っていないが、俺たちの脳裏には焼き付いている。
「こっちの世界ではやらないの?」
「……考えたことなかったな」
実際、俺たちは結婚式を一度あげている。
それが、政治的思惑があったりはしたが、それはもう盛大に。
こちらの世界に帰ってきたからと言ってもう一度結婚式を挙げるだなんて思いもしなかった。
「セレスさんはどうなの?」
「私ですか? ……そうですねぇ、一度挙げたわけですし、考えたことなかったです」
「あ〜セレスさんのウエディングドレス姿見たかったなぁ〜」
「そうねぇ、確かに見たかったわ〜」
「……そうだな」
……俺の晴れ着姿を見たい人はいないらしい。
そんなことはともかく、式を執り行うとなると、それなりの費用と準備が必要になる。
渚沙もいる今、そんな手間は避けたいところだが……
「式には膨大な金銭と時間がかかってしまいます。渚沙がいる今そこまでの時間の捻出は難しいかと……」
「向こうの世界だとそうだったの?」
「ええ、貴族の式には三、四年の準備期間を要します。市井はどうかは定かではありませんが、それなりの準備をする必要がありますから」
俺たちの結婚式は例外と考えていい。
準備期間一年で貴族、ましてや王族が結婚式を挙げることなど前代未聞だ。
かなりの無茶をしたと言える。
「こっちの世界だとそこまで準備に時間を置かないかな?ドレスも既製品があるし、長く期間をとっても1年半、普通なら一年足らずで式を挙げる人が多いよ」
「そうなのですね。なるほど」
「……そうか、貴族的な儀礼や柵を考えなくて良いんだったらそうなるか」
俺も思考が異世界に染まっていたのかもしれない。
「一度見学してみるのはどうかしら?」
「そうだよお兄! 一回見てみて、あれだったらやめればいいし」
そう言われると悩む。
あの式は確かに素晴らしいものだった。同時に二度とやりたくないとも思った。
理由は単純明快で、準備と後始末が大変すぎたからだ。
いくら部下や使用人を雇っているとはいえ、最後統括するのは俺たち。
招待客のリストや席の配置。料理の種類や選定。
式が終われば祝いの品の確認やその返礼。
やることはたくさんあった。
一方こちらの世界はそういった面倒な柵はない。
まあ多少考慮すべきことはあるが、あちらの世界に比べたら少ない。
うーむ
「……セレスはどうしたい? ……こう聞くのはずるいか」
「いいえ、一緒に考えましょう? 家族なのですから」
体よくブライダル雑誌を差し出してくる唯たちに苦笑しながらそれらを眺めるのだった。