作品タイトル不明
第177話 バク宙
休日、和也の屋敷にて。
葛西さんと共に俺は和也の家に遊びにきていた。
「あぶっ!あぶっ!」
葛西さんは渚沙ちゃんと一緒に遊んでいる。
それを見守りながら俺は和也と雑談をしていた。
「そういえば和也、お前息切れしなくなったよな」
ふと、昨日行われた体育を思い出す。
バスケットボールだったのだが、3試合ほど続けて行った割には息が上がるどころか、肩で息もしていなかった。
「まあ、勇者だったしな」
「それ万能だな」
「ははっ、実際、あの程度の運動でへばってちゃ戦場じゃ戦い抜けないしね」
「持久力もそうだが、もしかして身体能力も高かったりするのか?」
「まあ、勇者だしね」
「その返しやめろって」
ズズっと紅茶を啜る。
「そうだなぁ、うちの隊の連中全員と模擬戦しても余力は残せるぐらいには強いかな」
「俺にもわかるレベルで教えてくれよ。バク転できるとかさ」
「う〜ん、バク宙ぐらいだったらできると思うよ」
「マジかよ。異世界すげーな」
そんな簡素な感想を口にすると、お菓子を持ったセレスティーナさんが現れる。
「カズヤさんほどの身体能力を持った人は稀ですよ?いくら戦いが側にあるイースガルドでも人間の本質は変わりませんから」
「そーなんだ、なんか安心したかも。異世界人みんな和也くんみたいな化け物ばっかかと思っちゃったや」
「化け物ってなんだ」
「今この世界にいる異世界人は皆軍部やそれに近しい人間ですから、その認識もしょうがありませんよ」
「じゃあさ、セレスさんはできる?バク宙」
「そのばくちゅう?というものがわかりませんのでなんとも……」
そういうと、葛西さんがスマホでバク宙を調べて動画を見せる。
「これこれ! バック宙返り!」
「あー……」
「なあセレス。この程度なら〜って思ったろ」
「い、いえ!そのようなことは!」
「でも、できるだろ?」
「まあ、私も前線に出ていましたので……」
そういうセレスティーナさんは恥ずかしそうにする。
「なんで恥ずかしそうにするの? すごいことじゃん!」
「……その、王族、貴族としては相応しくないというか……はしたないかなぁと」
「あちらの世界は女性の社会進出が遅れてるんだ。軍部も中々女性を採用しないし、貴族もあまりそれを良しとしなかったんだ」
そう事情を説明してくれる和也。
「できることは素晴らしいのに、そうなんだ」
「まあ、私はそういった偏見はないのですが、……やはり染み付いた価値観というものは抜けなくて」
「ま、そんな話は置いておいて、だ。セレスのバク宙、見たくないか?」
「え、見れるの!」
不適な笑みを浮かべてそういう和也に食いつく葛西さん。
「カズヤさん!」
「セレスのバク宙はすごいぞ〜風魔術が得意だから軽やかなんだ」
「一回もやったことないのになんでそんな知った口を聞くのですか!?」
「見たい見たい! 超見たい!」
「よし!修練場に行こうか」
「やったー!」
「私、まだやるっていってないんですけど」
そうして俺たちは修練場に向かう。
もちろん渚沙ちゃんも一緒だ。
だいぶ不思議な縁だけど、こんな言い合いをできる。
うん、今日も平和だ。