作品タイトル不明
閑話 バレンタインの夜
夜、屋敷の自室にて。
「カズヤさん、今日は人気者でしたね」
「嬉しい限りだ」
母さん、唯に加え、なぜかケインからもバレンタインチョコを受け取った。
これだけたくさんのバレンタインチョコを受け取ったのは初めてかもしれない。
「女としてはちょっと嫉妬しますけど」
「みんな家族だぞ?ケイン以外」
「それでもです」
ちょっとムッとした表情を見せるセレス。
それもまた可愛いなと思いつつも笑顔が見たくて頬を触る。
「なんですか?」
「ちょっと触れたくなって……ダメかな?」
「もちろん、貴方ならいくらでも」
互いに触れ合い、もう一方の手ではお互いの手同士が戯れ合う。
「もう、くすぐったいですよ?」
「それはお互い様だろ?」
そう言いながら俺たちは離れない。
セレスは俺の首元に甘えるように顔を埋める。
俺はそれが愛おしく、その耳に口付けを落とす。
「ひゃっ、もう。エルフの耳は敏感なんですよ?」
「可愛くてつい」
「カズヤさん、それを言っておけば許されると思っていませんこと?」
「許してくれないのか?」
「……今回は特別です」
「ありがと」
そうして戯れあっていると、互いのバスローブが緩み肩から落ちる。
透ける素材の黒いベビードールを着ている彼女はどうにも煽情的で、潤む瞳は艶然としているように見える。
「……可愛いよセレス」
「カズヤさんも、男らしいです」
セレスが俺の身体に指を這わせる。
少々くすぐったいがそれもセレスがくれるものだと思うとどうにも愛おしく感じる。
「私はこの躰に守られてきたのですね」
「セレスも俺のことを守ってくれたじゃないか」
「それは議会などででしょう? 戦場では私はあまり役に立たなかったですから」
「貴重なヒーラーかつバトルメイジは中々いないぞ?」
「それでも、カズヤさんに守られていなかったら一体何度命を落としたことか」
そういう彼女の口を強引に塞ぐ。
「今日は少し強引なのですね」
「嫌いか?」
「いえ、ちっとも。好きです。愛しています」
セレスは己の髪に指を通しながら座る俺に正面から跨る。
「爪からこの髪の一本に至るまで、全ては貴方の物。もちろん心も。貴方を想う感情を伝える言葉が見つからないぐらい、私は貴方を――愛しています」
「ああ、俺も愛している。この命尽きるまで、俺はセレスのものだ」
そう言って俺たちは影を重ねる。