軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第171話 事の顛末

午後、普段ならそろそろ帰りの時刻であろうこの時に、俺たちはまた体育館に集まっている。

「何、また変なこと言われるの?」

「今回集めたのは校長だって聞いたけど」

「どうなんだろ」

そんな話が錯綜する中、校長が登壇する。

「皆さん、突然の呼び出し、集まっていただき感謝します。今回お話ししたいのは、皆さん知っての通り、今朝方行われた全校集会について。詳しく申し上げると、恋愛禁止、バイト禁止についてです」

皆が固唾を飲んで見守る中、校長は言った。

「我が校の方針として、それらを禁止することはありません」

その言葉を聞いた瞬間、安堵の声などが生徒たちで漏れ出る。

「我々は学生たちに多くの環境、状況において成長してほしい。そう考えています。しかし、今回このようなことになってしまった。本当に申し訳ない」

校長はそう言って頭を下げる。

「今朝方の件は学校側の意見、決定を省みることなく行われたものになります。今後も大きな事件・事故がない限り、恋愛、バイトの自由をお約束します」

生徒たちはホッとひと息をつく。

「学校は今回の件を重く受け止め、生徒会の解散、臨時総選挙を執り行います。詳しい日程の程は――」

まあ、妥当な判断だろう。今回の臨時総選挙は半年間という短い任期ながらメンバーの総入れ替えを行うようだ。

「以上で私の話を終わります。改めて今回は申し訳ありませんでした」

そう言って臨時の全校集会は幕を閉じる。

生徒たちは各々の生活を脅かすであろう施策がなくなったことに安堵し解散した。

俺たちはどうにもその後が気になり、校長室へと足を向ける。

「どうして、このようなことを行なったのですか?」

全校集会を終えた校長は副校長を校長室へと呼び出していた。

「どうしても何も、私は学生が学生らしくいられるように環境を整えようとしただけです!」

「それが、恋愛バイト禁止ですか」

「そうです!学生とは元来勉強するもの、それ以外は不要なのです!大体、私たちの時代そのようなことは到底許されませんでしたし――」

「時代が違うのです。時代に合わせて変わるのです。バイトをして社会を学び、恋愛をして人間関係とコミュニケーションを学ぶのです。それらを学ぶこともまた、学生の勉強なのが何故わからない」

「そのようなノイズ、許してならない!だって我々は――」

叫ぶように言う副校長に対して校長は毅然と副校長を見据えものを言う。

「我々がそうだったから彼らに同じことを強いる。それは子供の考えだ。新たなる時代を作る若者たちの機会を何故奪う」

「現に生徒会副会長からは賛同を得ているじゃないですか!」

「生徒会に聞き取り調査を行なったところ、元々のその気質はあったようですが、大方あなたが入れ知恵したと聞いていますが、いかがかな? 副校長」

たじろぐ副校長に変わらぬ視線を向ける校長。

「それに、他生徒からは賛同を得られなかったようですし、その思想をもつのは生徒会副会長と一部の生徒会役員のみ。成り立たないのですよ」

「いえ! 上に立つものが決めたことは下は聞かねばならないのです!」

「この国は民主主義だ。民意によって事は決まる。この学校でもそれは同じこと。民意とは全校生徒のことを指します。上も下もないのですよ」

「しかし!」

「これ以上ものを申すなら、強要罪と取ってよろしいかな?」

「何を、言って」

「立場を悪用し生徒にそれを強いる。立派な強要罪だ。しっかりとこの会話は録音されているぞ」

そう言ってボイスレコーダーをポケットから取り出す校長。

「と、盗聴だ!」

「それは成立しませんよ。それに、私が録音しなくとも監視カメラがしっかりと録音してありますから、保険です」

一歩また一歩と後に引く副校長。

「暫く学校には来なくて良いです。これは業務命令と受け取ってくれても構いません。生徒たちに悪影響を与えたくない。沙汰は追って教育委員会より下るでしょう。それではどうぞお帰りください」

「くっ……このっ!」

「その手は止めた方がいい。本当に塀の中に入りたいのですか?」

「……くそっ!」

どたどたと足音を立てて退室する副校長。

「校長先生、大丈夫でしたか?さっき副校長、すごい顔で出て行きましたけど」

「ああ、羽鳥夫妻。大丈夫ですよ。ちょっと話し合いをね」

そう言ってお茶目にウインクをして見せる校長。

「……そうですか。お任せすると言った手前申し訳ないのですが、事の沙汰を聞きたくて」

「まあ気になるでしょうな。もちろんいいですよ。副校長はきっと研修に行くと思います。それでまだ適性がないと看做されたら退職でしょうな」

「……なるほど。副会長はどうなるのですか?」

「まだしっかりと話したわけではないのでなんとも言えませんが、これだけの騒ぎを起こしたのですから、反省文は書かないといけないでしょう。それとまあ停学処分ぐらいは下りそうです」

「……そうですか」

「ともあれ、あとは大丈夫ですよ。生徒会も本日付で解散しましたし、総選挙さえ終えればいつも通りの日常です」

好好爺とした表情を浮かべる校長先生はそう言って俺たちを安心させてくれる。

「ありがとうございます。今回これほど早く事態が収束したのは校長先生の手腕あってこそだと思います」

「ありがとうセレスティーナさん。賛辞は素直に受け取るが、そこまで持ち上げなくても良い。このような事態を未然に防ぐのが本来の我々の仕事なのだから。むしろ、不甲斐ないところを見せた。すまない」

「いえ……」

「今回の件で生徒たちの評判は上がると思いますよ」

「おや? その言い回し、元は低かったように聞こえますが」

「イベントごとで話が長いから、ですかね」

そう言うと校長先生は笑う。

「いやはやすまない。歳を取るとどうしても伝えたいことが増えてしまうんだ。今後の参考にしよう」

そう言って場は和やかに過ぎて行く。