作品タイトル不明
第165話 小さな熱
平日の昼下がり、私は渚沙と共に過ごす。
というのも、今週は私が休む番。カズヤさんは学校に行き、私が渚沙の面倒を見ていた。
その渚沙はというと今は夢の中。すやすやと寝息を立ている。
そんな渚沙の様子を眺めつつ私は課題と予習に励む。
ペンがノートを走る音、渚沙の寝息。そんな音たちが鼓膜を震わせる。
しかし、ふとペンが止まる。
「渚沙?」
渚沙の呼吸が変わっていることに気が付いたのだ。
普段の寝息が”すうすう”だとすれば今の寝息は”はぁはぁ”。なんだか様子がおかしい。
「渚沙、ちょっとごめんね?」
もしやと思っておでこに手をやると普段より熱い気がする。
赤子は体温が高いので判別付きづらい。なのでしっかりと体温計で測ってみる。
結果は38度。しっかりと熱が出ている。
急いで病院に行く用意をする。
カズヤさんにも連絡しないと……。
一連の用意を整えた後、私はカズヤさんに電話をする。時間的に授業中なので出れるか分からないが、取り急ぎ連絡を入れる。
すると、カズヤさんは数コールで出てくれた。
「カズヤさん、渚沙が熱を出してしまって……」
『大丈夫なのか?……って大丈夫じゃないよな。病院は?』
「今から行くところです」
『わかった。取り敢えずセレスは渚沙を病院に連れて行ってくれ。俺もすぐに帰るから』
「わかりました。すみません……」
『気にするな。じゃ、切るぞ』
電話を終え私は渚沙を抱っこして病院へ向かう。
◇
病院に着くと、流石に眠っていた渚沙も目を覚ます。
そして自身の異変に気が付いたのか、顔を歪ませその瞳から涙がこぼれ落ちる。
「大丈夫、もうすぐでお医者様にみてもらえるから。大丈夫よ」
そんなことを言ってあやしていると、名前を呼ばれる。
診察は流石小児科医と言ったところかスマートに行われた。
「風邪ですね。時期的にインフルエンザの可能性もありましたが、検査で陰性と出ていますので大丈夫ですよ。渚沙君もびっくりしたね~」
「ひうっ」
「それは……よかったです」
「お薬出しておきますね。では、お大事に」
こうして程なくして薬が処方されて帰宅する。徒歩で行ける圏内に小児科があってよかったとつくづく思う。
家に帰るとカズヤさんが帰宅していたようで、玄関を開けるとすぐに顔を見せてくれた。
「どうだった?」
「風邪だそうです。お薬もいただきましたので、取り敢えずは安心かと」
渚沙を寝かせ、早速薬を与える。
スポイトの様なものに薬を入れ、口元に持っていき、嚥下させる。
これを嫌がる子もいるとの薬剤師の話だったが、渚沙は呑み込んでくれたようだ。
薬を飲んだ後はやはり疲れていたのか、眠る渚沙。
早く良くなれと願いながら私は渚沙の頭を撫でるのだった。