作品タイトル不明
第163話 美容院
「お兄、髪伸びた?」
渚沙と遊んでいると、ふと唯がそんなことを言った。
「え、そうか?」
「うん、だって髪が耳に掛かるぐらいだもん」
「あ〜、確かに。それじゃあ……」
「お兄!? 何それ!」
「何って魔術だけど」
俺が髪を切るために展開した魔術に待ったを掛ける。
「それ絶対頭にやっちゃダメだよね!? なんかフォンフォン言ってるよ!」
「風系統の魔術の応用だよ。イメージしやすいように言うと風の刃で切り裂く! みたいな感じだな」
「やっぱ頭にやっちゃダメだよ!」
「大丈夫大丈夫。俺の魔力操作甘くみないでほしいね」
「なんでそこだけ自信満々なの!?」
「ダメですよカズヤさん、唯さん驚いちゃいます」
「え、でも今までやってきたじゃん」
「それでもです。カズヤさんがやってる魔術、普通なら首が飛ぶんですから」
唯が驚きながら首に手をやる。
「お兄、美容院行きなよ……」
「あ〜でも高いしなぁ」
渋る俺にセレスは言った。
「一緒に行きませんか?私もそろそろ手入れしないとと思っていましたから」
「……行くか」
こうして俺たちは美容院へと向かう。
その店は馴染みの店で、よく母さんや唯と一緒に切られていた思い出がある。
「あら?和也くんじゃない、久しぶりね」
「お久しぶりです」
美容院の店主は俺の顔を見るとそう挨拶してくれる。
3人合わせて10年近く通っていれば自ずと顔も覚えられるものだ。
「隣の子は見ない顔ね。もしかして、彼女だったり?」
「いえ違くて……」
「そうよね、早合点してごめんね〜」
「妻です」
「妻!?」
「妻のセレスティーナです」
「しかも外国人!?」
実際異世界の外国人なわけだから的を射てる。
「すごいね和也くん、もう結婚してるだなんて……私も歳をとるものだわ〜ああごめんね、今日はカットで良い?」
「はい、二人ともカットでお願いします」
「はいは〜い。それじゃあお席にご案内しますね〜」
そうして席に通される俺たち。
美容院特有の良い香りが鼻腔をくすぐる。
「和也くん今日はどのくらい切る?」
「サイドさっぱり目で冬なんであとは長めでお願いします」
「じゃあ他はすいていく感じにしよっか。OK〜それじゃあシャンプー台にどうぞ〜」
◇
「お姉さんはどうしますか?」
「3センチほどカットしてもらって良いですか?」
「わっかりました、それにしてもお姉さん髪すごいですね。これブリーチじゃ出せない色ですよ」
「地毛なんです。結構気に入ってるんですよ」
「素敵ですね〜じゃあシャンプー台にどうぞ〜」
シャンプーを終え、再びカット台へ。
「それじゃあ切って行きますね〜って、お姉さんすごいですね、この長さで枝毛が全くないじゃないですか!」
「日頃のケアは怠っていませんから」
「素敵です! それじゃあ切って行きますね」
◇
時間にして1時間半ほどで俺たちのカットは終わった。
「ありがとうございました〜」
さっぱりした髪に当たる風が心地よい。
「セレスの神凄いね」
「さすがプロですね、手入れの手ほどきをしてもらいました」
いつにも増したツヤが太陽の光を反射している。
「カズヤさんもカッコよくなりましたね」
「そう? そんなに変わらないと思うけど」
そんな会話をしながら帰る今日この頃。