作品タイトル不明
第162話 勇者の1日を終えて
夜、屋敷の自室にて。
勇者として1日を再現し終えた俺たちは装いを解き、いつも通りの格好になっている。
「やはりパーティーは疲れるな」
「そんなことを言って、いつもより楽しそうだったではありませんか」
「まあ、貴族らしい腹の探り合いがないからな」
「素直じゃありませんね」
俺はソファに身を委ねる。すると腕の内にセレスも座る。
「なんでまた、急にこんなことを? きっかけはケインだったけど」
「知って欲しかったのです。英雄としてのカズヤさんだけでなく、普段の営みを」
まあ、確かにある種特筆するべき事柄だけを伝えていたので、普段の生活を伝えていたかといえば嘘になる。
「私たちだけの秘密というのもよかったですけど、皆さん家族ですもの、知りたいはずです。カズヤさんはご自身のことをあまり語らないから、今回こんな形で披露したのです」
「あまり得意じゃないんだ。自分のことを伝えるの。……いや、違うな。なんだか『俺、すごいだろ』に聞こえないかが不安であまり言えないのが本音かな」
「そうですわね、そこの線引きは難しいと思います。けれど、もっと誇って良いことなのですよ? カズヤさんの行いは……」
「そう思ってくれる人がいるだけで幸せだよ」
そう言って俺はセレスの髪に顔を埋める。
「わわっ、ちょっとカズヤさん」
「良いだろ?」
「まだお風呂に入っていないので……その、恥ずかしいです」
「全然気にしなくて良いのに……うん、セレスの匂いだ」
「ううぅ……カズヤさん!」
鼻から通る香りは嗅覚を、脳を喜ばせる。
いつか、好きな香りを持つ人とは遺伝子レベルで相性がいいと聞いたことがある。なんだかそれも納得だ。
「だったら風呂に入るか?」
「そ、そうですね。そろそろ良い時間ですし」
「よし、一緒に入ろうか」
「ふぇ? 一緒にですか?」
「嫌か?」
「いえ、ちっとも。ただ驚いただけです」
「じゃあ、行こうか」
軽いキスを交わした後、俺たちは風呂へと向かう。
空には一つの月、うん。今日も平和だ。