軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第160話 勇者の1日そのさん

「ふっ……!」

剣と剣が交差する。金属同士がぶつかる鈍い音が修練場に響き渡る。

「さすが隊長、重い一撃ですね」

「受け止めておいて何を言う」

「いえ、かなりギリギリで受け止めていますよ。もしやすると、数年後にはまともにかち合えないでしょうな……っ!」

両者修練場の脇にひき、今一度構える。

和也はロングソードを、ケインは二振りのロングソードを各々の位置に構え、静止する。

数瞬後、両者は駆け出し数合見舞う。

その後目にも留まらぬ速さでケインが攻め、俺が受ける。

「やはり崩れませんね」

「こうでないと隊長は務まらないからな」

「ここから先は魔術も使わせていただきますよ!」

「こい!」

ケインは土で矢を作りそれを大量に発射する。

それに俺は剣を振り、避けつついなす。

ケインは分体を作りそれらと一緒に攻撃してくる。一種のカモフラージュだ。

それぞれ実体があるのでしっかりといなしつつ、本命のケインの攻撃も受け止める。

「これでもダメですか」

「わかってるだろう?」

「ええ。では、身体強化を使わせていただきます――!」

そう言った瞬間、唯たちの目からはケインが消える。

「なになに! どうなってるの?」

「少々お待ちくださいね」

「セレスさん!」

「魔力のうねりを感じてきてみれば、みなさんそっちのけで戦闘訓練をしているじゃありませんか。全く。それは後で言うとして、まずはみなさんが観戦できるようにしましょうね」

そう言ってセレスは水滴を薄く引き延ばしたようなものを空中に浮かべる。

「水魔法の応用です。こちらの世界でいうコマ落とししている状態で見ることができますよ」

その水滴に皆が目を寄せると、ケインが修練場を壁床関係なしに走っているのを観測できる。

その速度を生かしたままケインは俺に攻撃を見舞う。

だが、それもしっかりと阻ませてもらう。

「すごい、身体強化魔術ってこんなことができるんですか?」

「ケインは元の身体能力が高いですから、自ずと身体強化魔術もそれに応じたものになりますね」

「お兄もすごいよ、一歩も動かずいなしてる」

「カズヤさんですか? カズヤさんは――身体強化魔術は使用していませんよ?」

「フン――!」

次の瞬間、ケインが修練場の結界に叩きつけられる。

「相変わらず、凄まじいですね、隊長」

「次は俺から行くぞ」

「はい、存分に」

ケインがしっかりと守りの構えをしたのを確認してから俺は攻撃に転じる。

「な、なにこれ」

唯たちはその衝撃に思わず尻餅をつく。

「カズヤさんの剣圧ですよ」

「お兄、身体強化使ってないの?」

「はい、今はまだ」

剣を交差する形で構えながら肩で息をするケインに俺は剣先を向ける。

「次が最後の一撃だ、生きろよ」

「――ッ、生きて見せますよ」

正眼に構え剣をゆっくりと真上に上げる。そして一気に振り下ろす。

一撃に重きを置いた、必殺の剣。身体強化魔術を全身に張り巡らせ、渾身の一撃を今――。

「そこまでです」

凛とした声が修練場に響き渡る。

それと同時に俺の剣は上段で止まる。

「カズヤさん? 久しぶりの実戦訓練で楽しくなるのはわかりますが、それを振り下ろすとお三方に血を見せることになりますよ」

「……悪い、浮かれてた」

「いいのです。こうしてサポートするのが私の役目なのですから」

お兄は先ほど訓練で見せた鋭い眼差しから一変して、柔和な視線を私たちに向ける。

魔術という人智を超えた存在を駆使しての戦闘。

それをなんの魔術も無しに打ち砕いたお兄。

これが勇者なのかと、何度めかの戦慄を覚える。

「助かりました、セレスティーナ様」

「良いのです。ただ、愉悦に浸るのはほどほどにしてくださいね?」

「はい、以後気をつけます」

ふと気になったのでケインさんに聞いてみる。

「ねえ、さっきはあのまま続いていたらどうなってたの?」

「間違いなく私の負けでしたね。まあ、元々勝機なんてありませんでしたが」

「お兄ってどれだけ強いの?」

「そうですね、単純戦力、人類最強と言って良いでしょう。一対多数の戦闘においても、以前別の国の近衛騎士200人との戦闘がありました」

「どう、だったの?」

「全滅ですよ。隊長は全くの無傷でした」

お兄は普通のインドア派高校生からどうやってあそこまでの力を身につけたのだろう。

謎は深まるばかりだ。

「唯? いくよ〜」

「あ、はーい」