作品タイトル不明
第159話 勇者の1日そのに
「本日の訓練は、準備運動をしたのち基礎動作を50回その後一対一での模擬戦だ。いつも通り気張っていけ」
所は変わって屋敷の修練場。そこにケインが出した分体相手に俺はいつも通りの口上を言う。
因みに服装は変わり白銀の鎧に真紅の外套だ。
「「はっ!」」
「よし、始め!」
隊員たちが一斉に準備運動を開始する。
「すごい、ただの準備運動なのになんだ覇気を感じるよ」
選び抜かれ、そして戦い抜いてきた騎士たちだ。身内贔屓無しにしても世界最高の騎士たちであると自負している。準備運動であろうが手を抜くことなんてない。
「基礎動作!構え!」
ザッと動きが揃う。皆が一様に正眼の構えをとる。
「始め!」
槍や剣、レイピアと言った様々な武器を持った彼らが動作をする。それと同時に空気が鳴る。
「……すごい、まるで手足みたいに武器を操ってる」
「騎士ともあろうものが武器に振り回されるようじゃ務まりません。よかったら御三方も持ってみますか?」
「いいんですか?」
「もちろんです。危ないので刃を潰したものにしましょうね」
ケインは唯たち3人に槍を渡す。
実は初心者には槍がおすすめだ。
突きと薙ぎ払いが主な戦法の槍は動きが単純かつ両手で扱えるというメリットがある。
これが剣となると、真っ直ぐ、ブレずに振り切ると言う技術がいる。これが存外中々難しく、この技術を持っていないと例え鋭利な剣でも斬ることはできない。
「……重いね」
3人は両手で持ち、地面につけないように持っている。それでも中々安定しないのか穂先が揺れている。
「柄はアイアンウッドという固い素材を、穂先には鋼を使っていますので重いですよ。ではあそこの藁人形に向かって突いてみてください」
「……えい!」
3人の放った突きはポスッと藁人形に刺さる。
「お見事です。最初は中々刺さらない人もいるんですよ」
「あれ?抜けない」
重量のある槍は藁人形に浅く刺さっているものの簡単には抜けない。しっかりと両手に力を込めてやっと抜けた。
「すごいな。これを鎧を着た上で俊敏に動かすとは」
「身体強化の魔術もありますので純粋な力というにはちょっと語弊がありますが、熟練の槍使いになれば身体強化なしに片手で操ることだってできますよ」
そう言ってケインは藁人形に鋭い刺突を見舞う。
それに対して3人は拍手をする。
「隊長はもっとすごいですよ。いつか二槍流を見せてくれたことがありまして……」
「ケイン、それはやめろ」
俺の黒歴史が暴露される前に止める。危ない危ない。
「続いて模擬戦!一対一になるように二人組を作れ。よし、始め!」
その号令と共に武具と武具が合わさる音が響き渡る。
「すごいしか感想が出てこないよ。映画やドラマなんか目じゃないくらい!」
「私もこちらの世界に来てからあの類のものを見ましたが、あれらは実戦を想定されたものではなく、人々に魅せるための剣技。こちらは命のやり取りをするための技ですので違いはあって当然です。……隊長」
「なんだ?」
「せっかくですから隊長に一手指南いただきたく」
「お前に教えることなんてないだろうに……わかった」
分体たちによる模擬戦をやめさせ、俺たちは修練場の中央に立つ。
「魔術はどうしますか?」
「せっかくだ。アリにしよう」
「それでは結界を張っておきますね。この線からは出ないようにしてください」
安全のため、3人のいる場所には結界を張り、俺たちは向かい合う。
分体が静かに始めの合図を出し、俺たちは駆け出した。