軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第158話 勇者の1日そのいち

次の日、俺はいつもと違う装いで執務室にいた。

……つまり、英雄としての俺の装いだ。

といっても鎧姿ではなく貴族としての平服だ。

執務室の横にあるソファに唯と両親が座っている。

ため息を一つ吐きながら俺はケインから渡された書類に眼を通す。

「先日行われた部隊補正会議で出た案をまとめた稟議書です」

「分かった確認する」

急拵えにしてはよくできている。

きっと俺がこの世界に帰還した後に実際に行われた事案だろう。

「こことここ、再度確認してくれ。後これ、パーティーの費用なんかうちで出るわけないだろ」

「ですよね。しかし隊長の後釜になった人物はこれを二つ返事でOK出していましたよ」

「マジかよ。後釜は誰だ?」

「マイナイ騎士爵です」

「あー……」

公金を私用な目的でよく使っていたマイナイ、騎士としての能力中の中で、本来であれば隊長には相応しい人物ではないが……きっと賄賂でも渡したんだろうな。

「それと、これは部隊の再編成案です」

二、三度チェックを重ね承認のサインを書く。

「……うん、問題ないな。この再編成案は誰が?」

「コッコですね。隊長が帰られた後、実直に実績を積み上げ、最後は10人長になりました」

「あいつは戦闘面ではあまりだったが経理の面で強かったからな当然だろう」

そんな話をしながらサインをしようとしていると、どこからかキラキラとした眼差しを感じる。

「……唯、おいで」

唯を近くに呼び、目の前で羽ペンをとる。

インクボトルに羽ペンをつけ、サインを書く。そして俺だけが使える決済印を押す。

「おお〜すごい! 異世界の文字だ! お兄異世界の文字かけるの?」

「向こうだとイーディス様が翻訳の権能をつけてくれていたから問題なかったけど、自分の名前ぐらいは書けるよ」

「私の名前とかも書けたりするの?」

「書けるよ、書いてあげようか?」

「お願い!」

せっかくだ、上等な羊皮紙に唯の名前を書いてやる。

「すごい! 全然読めないけどこれが私の名前なの?」

「そうだぞ、これが ゆ(・) でこれが い(・) だ」

目を輝かせて羊皮紙を眺める唯に笑みをこぼしながら俺は書類仕事に戻る。

「ちょっと想像してたけど、書類仕事も多いんだね」

「まあな。俺はそれなりの立場だったし、騎士は言わば公務員だからな書類仕事も業務の内さ」

「それなりの立場って言うけど、特務親衛隊隊長以外にも役職があったの?」

「ん? 俺はアルバシア帝国皇帝から太公を、ユグドラシア王国からは公爵の地位をもらってたな」

俺がそう言うと唯は口をあんぐりと開けて言った。

「公爵って……序列二位じゃん!」

「まあ、俺も分不相応だと思ってるよ。けど、セレスと結婚するにはそれなりの地位が必要だったし、それに勇者としての功績を鑑みるとこうなったってジークが言ってた」

「前も聞いたけどジークって誰なの?」

「ジークフリート・ラ・アルバシア。アルバシア帝国の皇太子だよ」

「皇太子様のことを呼び捨てで呼んでいいの?」

「まあ、立場の違いはあっても数少ない同年代の友人だったからな」

過去を懐かしんでいるとケインが声を掛けてくる。

「隊長、そろそろ……」

「……ああ、もうそんな時間か」

「なになに?」

「ついてくればわかるよ」

そう言って俺たちは場所を移動する。