作品タイトル不明
第156話 成長
156話 成長
渚沙が我が家にやってきて一ヶ月が経過した。
子供の成長とは凄まじいもので、身長は68センチに届こうとしているところだし、喃語もだいぶ発声するようになった。
「う!う〜……う!」
「上手に寝返りできましたね〜!」
最も目覚ましい成長というのは、そう。寝返りだ。
これまでも何度か挑戦していたのだが、上手にできずにそのままうつ伏せになってしまうか、泣いてしまっていたが、つい先日、とうとう寝返りに成功したのだ。
「む!」
「凄いぞ渚沙」
何度目かの寝返り披露でご満悦な渚沙。
それに対して俺たちは精一杯褒めちぎる。我が子の成長を喜ばない親は居ない。
すると、またゴロンと寝返り。今度はうつ伏せの状態で両手で体を支える形に。
「う!」
「『渚沙くんこっちこっち!』」
「う?あぶあ」
アリシア演じるテディベアを探すために頭を右へ左へ。そして見つけると、その手でぎゅっと掴もうとする。
「『わあ!捕まっちゃった』」
「えへ〜」
この短い一ヶ月という期間で、喃語に寝返り、頭の動きなど。どんどん習得していく渚沙に驚きを隠せない。
だが、成長しているのは渚沙だけではない。アリシアも成長している。
最初は辿々しかった渚沙への接し方も俺よりも自然な態度に変わり、今もこうして渚と遊んでくれている。
現代のオムツやミルクに一緒にてんやわんやしていたのはいい思い出だ。
「……癒されます」
「何かあったのか?」
「いえ、お父様。別に疲れているわけではなくてですね、なんというか、こう……表現が難しいですね。渚沙を見ているだけで朗らかな気持ちになれると言いますか……」
「アリシアの言いたいことはわかるよ。俺も、お前たちを見ているとそういう気分になる」
「そうなのですか?」
「だろ?セレス」
お茶を出してくれているセレスに話しかけると、優しく頷く。
「はい。こうして家族と過ごせるこの時間がとても愛おしく思えます」
「愛おしい……なるほど、これはそういう感情なのですね。今までなんとなく理解していましたが、やっと言語化できた気がします」
まるで幸せを胸に抱いているような、そんな表情を浮かべるアリシア。
そんな彼女の頭を撫でる。
「お父様?」
「いや、なんでもない。ただ愛おしいと思っただけだ」
そんな何気ない家族のやり取り。
今日も平和だ。