作品タイトル不明
閑話 ちょっと特別な日
夜、屋敷の自室にて。
誰もが寝静まり、部屋には渚沙の寝息だけが聞こえている。
そんな中、俺とセレスはワインと少しのおつまみを手に、食後酒を楽しんでいた。
いつも笑顔を絶やさない彼女だが、今日の笑みは一層華やいで見える。
「今日は楽しかったです」
「それはよかった」
一言気持ちを込めて言う彼女を見ると、やってよかったなと、企画者として嬉しく思う。
「なんだか今日のお酒はいつもより美味しいです」
そう言って彼女はワイングラスを煽る。
流石元王族というべきか、その所作は素晴らしく、どことなく目を引いた。
「どうかされましたか?」
「いや、いつも思っているけど、飲み方がすごく綺麗だったから」
「ちょっと恥ずかしいですね。けど、見苦しくなかったのならよかったです」
「そんなこと思うわけないだろ?」
「ふふっ、所作に関して言えば、カズヤさんも習ったのでは?」
グラスを傾けながら俺は言う。
「習いはしたが、気をつけていないとボロがでてしまいそうだ」
スポーツにおける考え方の中に、学習の段階というものがある。
理解や意識して行う認知段階。連結や効率化を行う連合段階。無意識であったり、事が洗練されてくるのが自動段階というらしい。
これに例えていうと、セレスたちは自動化の域におり、俺は精々連合段階だ。
「そうだ、この世界のテーブルマナーも覚えなければなりませんね」
「今のでも十分じゃないか?」
「郷に入っては郷に従え、ですよ? イーディス様から日本のテーブルマナーは教わりましたが、イギリス様式やフランス様式などは知りませんから」
「セレスがそうしたいのなら一緒に勉強しようか」
「あら? 習い事は苦手ではありませんでしたっけ?」
「そうだけどさ、せっかく一緒に学べるのであれば良いかなって思ってな」
「でしたら今度、一緒に勉強しましょうね?」
「ああ、そうしようか」
「ついでに学業も」
そう言われた瞬間体の動きが止まる。
「そっちは、まあ、ほら……その……ほどほどにな」
「ふふっ」
そんなことを話しながら酒は進む。
特別な日だからなのか、それともこの酒が飲みやすいからか、いつもよりペースが速い。
互いにほどほどで酒をやめ、寝に入る。
「前話していたみたいな温泉旅行には連れていけなかったけど、喜んでくれてよかったよ」
「そういえば、そんな話もありましたね」
「来年は行けるようにがんばるから」
「ふふっ、楽しみにしています。その時は、家族四人でいきましょうね」
「ああ、そうだな」
深いキスを交わした後、俺たちはベッドに体を委ねる。
うん、今日もまた平和だ。