作品タイトル不明
第153話 父娘の会話とプレゼント選び
所は変わっていつものショッピングモール。
なんだかいつもこの場所に来ている気がするが、まあ、色々な店が入っていて便利だししょうがない。
「先にアリシアからのプレゼントを選んで行こうか」
「ありがとうございます」
向かった先は紅茶専門店。
多種多様な紅茶が展開されており、紅茶特有の芳醇な香りが店内を漂う。
「お母様は紅茶に富んでいるいらっしゃるので難しいですが、ここのお店の紅茶が美味しくてぜひお母様にも飲んでいただきたいんです」
「良いんじゃないか?」
確かに、セレスは元王族で貴族だ。舌は最上の肥えていると言って良いだろう。
けれど、現状紅茶はイースガルド産のものを飲んでいるので、こちらの世界の紅茶にはそこまで知見がない。
アリシアとセレスは好みが似通っているので、そこも問題ないだろう。
「何かお探しですか?」
「母への誕生日プレゼントを探していて」
「それはそれは、お母様の好みはお分かりになりますか?」
「色々嗜まれますが、どちらかと言うとフルーツ系の甘味を好んでいますね」
「でしたらこちらの茶葉たちがおすすめですよ。こちらは……」
アリシアが専門的な言葉を交えながら店員さんと話している。
俺は全くついて行けていないが、そこはポーカーフェイス。
俺が紅茶でわかるのは、香りがどうかと味。それも大雑把なものしかわからないので、よほどのものでなければ美味いと言って飲む。
「お兄さんも試飲されますか?」
「それじゃあ頂きます」
小さな紙コップを受け取って一口。
うん。フルーティーで美味い。
それしか感想が出てこない。
「これはアップル系と……ローズですか?」
「はい、こちらアップルの香りの中にローズを感じさせるブレンドで酸味を感じない様、ステビアで甘さを加えているので、味や香りに癒されたい時に是非おすすめのブレンドです」
なるほどわからん。
「それではこちらと……後こちらもお願いします」
どうやら決まったようで、アリシアが商品を指差す。
「こちらティーバックでのご用意と茶葉でのご用意、どちらになさいますか?」
「茶葉でお願いします」
「かしこまりました」
ラッピングもしっかりと行い、商品を受け取る。
「ありがとうございました」
「いい物が買えたか?」
「はい!喜んでいただけるといいのですが……」
「きっと大丈夫さ」
続いては俺からのプレゼント。
店はちょうど反対側の端にあるのでしばらく歩く。
そんな中、俺たちには特段会話はなく、何か話すべきかと悩むが、出てくる話題はよくある物だった。
「最近……どうだ?」
「最近ですか?」
「渚沙のこともあってしっかり話せていなかったけど、学校とかさ」
「そうですね、学校ではもうずいぶん馴染めたかなと思います。そういえば、この間生徒会に入らないかと誘われました。断りましたけど」
「断ったのか?この世界の生徒会は向こうと比べて対してやることはないぞ?」
「それでも、私には家族との時間のほうが大切ですので」
「そうか、アリシアが思う通りにやればいいさ」
「ありがとうございます。やっと増えた家族との時間、失いたくはありません」
やはり貴族としての生活は何かと思うところがあったらしい。
貴族は市井の民に比例してやることも多い。もちろんそれ相応の豪華さや権力がある。けれどそれ以上に義務や責務があるのだ。アリシアは幼いながら勇者の娘として、王女の娘として十二分にそれを果たしてくれていた。
幼心に秘めた遊びたいであったり、甘えたい気持ちを押し殺して。
今ののびのびとした姿を見ると、こちらに連れてくるという選択は間違っていなかったのだと思わせてくれる。
「ここだ」
辿り着いたのは宝飾品店。学生だから学生らしいプレゼントをとも考えたが、せっかくの誕生日だ。いつも通りにやろう。そう思い立った結果だ。
「何かお探しですか?」
「妻への誕生日プレゼントでウォッチを探したくて」
「そうですか、そうですか。レディースのウォッチはこちらです」
案内されたところには見事な装飾がなされた腕時計たちが並んでいる。
その装飾は決して華美ではなく、普段使いに丁度良いものになっている。
「こちらに並んでいるものはバンドがお客様の手で調節できるものになっています」
「ありがとうございます」
セレスがつけているところを想像しながら吟味する。
皮バンドのもの、メタルバンドのもの。色々ある中で、一つ目にとまるものがあった。
「これ、見せていただけますか?」
「もちろんでございます」
「アリシア、これどう思う?」
「素敵だと思います。お母様にきっと似合うかと」
「そうだな。それじゃあこれをお願いします」
「かしこまりました」
俺たちが選んだプレゼント、喜んでくれるかな。