軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第149話 制服デートそのに

「え、売り切れ!?」

場所は変わってショッピングモールに入っている映画館。チケット販売機に前で俺は肩透かしをくらっていた。

今日の目的の映画は20年ほど前の作品のリバイバル上映作品。

昨今ではサブスクリプションで見れてしまうような作品だったので、事前予約はいらないだろうと踏んでいたが、存外人気だったらしく、チケットは完売してしまっていた。

「どうされたのですか?」

「いやあ、どうやらチケットが完売しちゃってたみたい」

「あらまあ」

どうしたものか。時刻は午後5時を回る所。今からどこか別の場所に変えるには遅いし、何か別の作品を見ようとしても目ぼしい作品はない。

……素直に帰るか?

けれど、それはなんだか釈然としない。

「ごめんセレス。何か他に見たい作品はあるかい?」

「そうですねぇ」

セレスは上映目録に目を通す。

しかし、今上映しているものは大抵何かの続編であったり劇場版であったり。

時間も絶妙で、どの作品も上映時間まで1時間以上ある。

「……今回は映画見送るか」

「そうしましょうか」

俺たちはそうして劇場を後にする。

下るエスカレーターの中、次はどうしようかと思案する。

雑貨屋を見に行っても良いかもしれない。

渚沙の手回り品を見に行っても良いかもしれない。

何かを提案しようとしたとき、先にセレスの口が開いた。

「一箇所行ってみたいところがあるのですが」

「もちろん良いとも。案内してくれる?」

「にゃ〜ん」

ショッピングモールの反対側の店に俺たちは入店していた。

そこは、色とりどりの毛並みをした愛くるしい動物たちと一緒に過ごせる店。

そう、猫カフェだ。

「私のお膝に来てくれるのですか?」

「にゃ〜ん」

セレスの膝に真っ白なスコテッシュフォールドが座る。

セレスの膝上でぐるりぐるり。まるで撫でろというようだ。

「撫でても良いのですか?」

「にゃ〜ん」

セレスが恐る恐る手を伸ばして猫に触れる。

セレスの手はその美しい毛並みに埋もれる。

さわさわと撫でると、猫は気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らす。

「……かわいいです」

「いいなセレスは」

セレスと猫が戯れている中、俺は猫じゃらしを虚空に向かってぶらんぶらん。

近くに寄った猫たちもことごとくが避けていく。

試しにセレスの膝上にいる子にも猫じゃらしを向けてみるも、見事に無視をされてしまう。

「もしかしたら、カズヤさんの魔力に驚いてこないのでは?」

「そ、そうか!」

セレスに指摘されて魔力を抑えてみる。

するとどうだろう。

「にゃ?フン」

「……鼻で笑われた」

「そういえば、馬を選ぶのにも苦戦していましたね」

かつてイースガルドで馬を選ぶ時も同じように鼻で笑われたのだ。

ほぼ唯一好意的に思ってくれたのが愛馬イスカンダルだ。

……元気にしてるかな。

一方セレスは膝に一匹、肩に一匹、足元に一匹と大人気。

何がそこまで違うのだろうか。

「すごいですね、お膝にいる子、中々懐かないんですよ?」

店員さんがそう声をかけてくれる。

言われたその子はのびのびとセレスに甘えている。

「にゃ〜」

「ふふっ、ここが良いんですか?」

指先で顎を撫でてやるとゴロゴロと喉を鳴らす。

しばらく撫でていると、ピピピと手持ちのタイマーが音を鳴らす。

どうやら終わりの時間となってしまったようだ。

「皆さんごめんなさいね?」

「にゃ……」

言葉がわかるように彼らは去っていく。

「さ、行きましょうか」

俺たちは猫カフェを後にする。

因みに、結局俺の元には誰も来なかった。

「今日は楽しかったですね」

帰りの電車の中、俺たちは揺られながら語り合う。

「そうだななんだか普通の学生みたいだ」

「普通の学生ですよ?」

「元王女と元勇者、娘と息子がいるんだぞ?普通なのか?」

それにセレスは笑って返す。

「帰ったら皆さんにお礼を言わないと、皆さんの協力無しには実現しませんでした」

「そうだな」

そう返すとセレスは満足げに笑う。

息をしたら忘れてしまうかもしれない普通の日々。

それがとても心地よく、そしてとても気分が良い。

俺たちは互いに頭を預けながら電車に揺られる。

今日も平和だ。