作品タイトル不明
第122話 落ち込む夜
「なにか思うことがあるのですか?」
夜、屋敷の自室にて。
夜も更け寝支度を整えようとするころ、俺は感慨にふけていた。
「最近アリシアが大人びて見えてな。何というか、形容しがたいが、一挙手一投足が洗練されているというか」
「そんなことでしたか。男子三日会わざれば刮目せよといいますが、女の子は一日で変わりますよ?アリシアも成長しているのです」
「……そうか」
「どうかされたのですか?」
「いや、俺はやはり家族のことをよくみれていないなって、思ったんだ」
俺はベットに身を委ねながらそう呟く。
イースガルドでは勇者として、英雄としての責務を全うするという大義名分を掲げて、アリシアや家のことをセレスに任せっきり。アリシアが生まれる時はかろうじて一緒にいたが、その後の育児はセレスや屋敷の皆に委ねていた。
「そんなことはありませんよ?仕事で忙しい合間も私たちのことを気にかけてくれたではありませんか」
「でも、それは言い訳だ。仕事にかまけてアリシアのことも、セレスのこともみんなおざなりだった」
「イースガルドの貴族の育児というものはそういうものだったのです。躾や世話の大部分は使用人や専門の教師が行うもの。私もこの世界に来てから、カズヤさんの言う家族や育児というものを学びました。だからこそ言えます。気になさらなくて良いのです」
何故と顔を上げる。
そんな俺の胸を撫でながらセレスは言った。
「私も他の貴族よりも子と接してきましたが、この世界ではまだ全然足りないようです。常日頃カズヤさんが気になされていたことがどういうことか、よく分かりました。私たちがやってきたことはこの世界ではネグレクトというそうですね」
「それは違うよセレス。セレスはいつもアリシアの面倒を見ていてくれたじゃないか。イースガルドにいる時も料理を作ってくれたし、それに俺の方が……!」
「どちらの方が、なんて不毛な論争はよしましょう?カズヤさんは仕事で忙しい中アリシアを見てくれた。そしてアリシアは立派に育ってくれている。それでいいではないですか」
セレスも隣に横になり、呼吸を合わせる。
「私たちはこの世界に来た。ならこの世界の流儀で育児をする。アリシアに、これまで以上の愛を注ぎ込んで」
俺はセレスを抱き寄せて無言の肯定を指し示す。
「……次の子の時は一緒に育てていきましょうね?」
「ああ、必ず」