軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23.騎士団長子息との恋愛フラグ

「いい方向に話が進んで良かったね」

「ウィル様のおかげです! ありがとうございます」

キース様とのお茶会は成功と言えるだろう。

私のお父様が、甜菜を研究したいと問い合わせたことをご存知だったキース様。どのような研究をするつもりなのかずっと気になっていたそう。

なんでも領内に甜菜がたくさん自生しているみたいで、活用法を見いだせないかって思っていたんだって。でも、研究なんてさせてもらえる雰囲気じゃなく……諦めるしかなかったと。

話し合いの結果、第二王子の政策としてお兄様とキース様がそれぞれ研究することになった。

私も! って言ったら、お兄様に『クラウディアはメープルシロップの量産方法を考えるように』って言われちゃったんだよね。

まぁ甜菜から砂糖を作り出す方法なんて分からないし、私は大人しく応援に回ろうと思う。

「ディア……その……抱きしめてもいい?」

私達はよく、砂糖がもっと簡単に手に入ればいいのにねって話していた。その願いが達成して嬉しいとか?

まだ砂糖ができたわけじゃない。けど最初の一歩を踏み出せたのが嬉しいって気持ちは分かる。それに嬉しいことがあると、抱き合って喜びを分かち合ったりするもんね。

なので自分からウィル様の腕の中に飛び込んでみた。

「砂糖、できるといいですね」

「うん///」

なるほど……ぽっちゃりしていても、思ってたより柔らかくはないのね。

そういえば抱きしめられるのって初めてかも。

あら? 私、もしかして結構大胆なことをしちゃった? ……今になって恥ずかしくなってきたわ。

「あ、あの……」

「ふふ。顔、真っ赤だよ」

「ウィル様も///」

「///」

もう既に遅いけど、隠すようにウィル様の肩に顔を埋めた。

✽.。.:*・現在・*:.。.✽

「砂糖にそんな秘話があったとは……」

そっか。この話、ノエルは知らなかったのね。

「今や王国中の砂糖を担うほど! キース様のおかげでスイーツの幅が広がりました」

キース様は驚く速さで甜菜から砂糖を作ってくれたの。

騎士よりも文官向きだと自覚していたキース様は、なんとしてでも近衛騎士にしたいと意気込んでいたご両親——特にお母様との関係に悩んでおられた。あの日泣いていたのも本当はそれが理由。いっぱいいっぱいになっちゃったみたい。

「キースは砂糖を作ることに執念を持っていたよな」

えっ? 悩みを聞いたウィル様が『年内に砂糖ができたら私の側近に任命する』って言ったから……だからキース様は頑張ったのよ?

外見を親兄弟と比べられ、辛い思いをしてきたウィル様。騎士家系で当たり前に騎士になると親兄弟と比べられ、辛い思いをしてきたキース様。

どこか分かり合えるところがあったのだろう。個人を見てくれたことが嬉しかったと、キース様が言っていたのを忘れたの?

あっ! この話、ウィル様には内緒ですよって言われてたんだった。

「クラウディア様が甜菜に目をつけてくださったおかげです」

「ふふ。それを言うなら、ウィル様が私の勘を信じてくれたからです」

「そうですね。さすが、我が君」

お荷物だと思われていた甜菜が今や特産品。

領民の生活も豊かになり、騎士よりも文官の方が向いているとキース様のお母様も認めてくれたのよね。

そんなキース様のご婚約者様は伯爵令嬢。三姉妹の長女で、キース様が婿入りする形。領地が隣り合っており気候も似ていることから、婚姻後は婿入り先でも砂糖の生産をするそう。

砂糖がもっと普及し、平民も手に入れやすい調味料になるのもあと少しかな。

「あっ!」

「ディア?」

騎士団長である父親に幼い頃から騎士としての資質を持ち合わせていた2人の兄……比べられ、期待されることが辛い攻略対象者……。

これってヒロインが解決する悩みじゃない?

「ねぇノエル……もしかしてローズは、キース様が剣術の授業を選択しているはずだって言っていた?」

「言っていました。その……キース様ではなく、ご婚約者様が剣術の授業を選択しているなんておかしいとも」

「そう。……他には?」

「騎士としての努力が足りないと婚約者に言われ続け、仲が良くないはずなのにと」

キース様のご婚約者様も騎士家系。騎士団で副団長の父親を尊敬されていて、女騎士になるのが夢だった。ずっとキース様とは真逆の悩みを持っておられたの。

「私のせいでしょうか……」

女騎士になる婚約者様をキース様が支えればいいと、私が言ってしまった。

「キース、お前は俺の側近になったことを後悔しているのか?」

「全く。私も彼女も、お二人には感謝しかありません」

「だ、そうだ。ディアは良いことをしたんだよ」

そう言ってウィル様は頭を撫でてくださる。

確かに乙女ゲームを始める前に悩みを解決しただけだし、別に気にしなくていっか。

「それならば、ウィル様もです」

私もウィル様の頭を撫でる。全部ウィル様のおかげだもん!

少し甘い雰囲気になった私達をそっと見守ってくれるノエル。いつもなら『いちゃつかないでください』と言うキース様も、今日は目を瞑ってくれるみたい。

ごめんね? 私、騎士団長子息との恋愛フラグ、折っちゃってたみたい。