作品タイトル不明
24.2人目の攻略対象者
ローズがおかしいと言っていた、キース様とご婚約者様の仲が悪いという話。これは彼女の妄想が生み出したものだと結論付けられた。憧れの人との婚約を夢見た少女が、自分の都合の良い夢を見たのだろうって。
「ねぇノエル。キース様が騎士を目指していないって、ローズさんには伝えたの?」
場合によっては影武者を用意するか、キース様に囮になってもらう必要がある。ノエルがお助けキャラだと信じ続けてもらわなきゃいけないから。
「いえ。キース様を知らないという体を貫きましたので、彼女には『朝練ではなく放課後に練習しているかもしれない』『夢で見た朝日は夕日だったのでは?』『父親が騎士団長ならば王城で訓練しているのかも』などと言っておきました」
「それを聞いてローズさんは何て仰っていたの?」
「通い続けてみるそうです」
それでどれくらい時間稼ぎができるかしら。
「ついでながら、騎士団の訓練を見学するにも許可が必要だったはず。だと言っておきました」
はずね。確かに公開訓練以外は許可が必要だし、それと勘違いしていたと言えば良いものね。
「キース以外に狙われている人物は?」
「数人いそうです。今回は確認できず、申し訳ありません」
少なくとも温室で言っていた出会いイベントの数だけ対象者がいるはず。確かあの時言っていたのは……
「……図書館」
「っ! そういえば図書館で出会えなかったと言っていたな」
「はい」
ウィル様もノエルも彼女の独り言を思い出してくれたみたい。聞いたらきっと、図書館で出会う夢を見たんです。とでも言うんじゃないかな。
それにしても図書館ねぇ……勉強を教えてもらうとか? あっ、高いところにある本を取ってもらう。っていうのもありえそう。
それならば家だと勉学に集中出来ない人か何か調べ物がある人? 読書好きの可能性もあるわね。
「念の為、図書館の入退館記録を確認してくれ」
「承知しました」
ちなみに、ここにいる中で一番図書館のイメージが合うのはキース様。そんなキース様にウィル様が指示を出した。
もしまだ出会えていなければ、ローズと同じ時間、図書館にいた人は除外されるけど……絞り込めるかな?
*
*
「デイビット様でした」
「「えっ!」」
まさかまたウィル様の側近の1人が攻略対象者だとは。驚きのあまり、勢いよくデイビット様の方を向いてしまった。
「わ、私ですか!?」
そりゃあ入退館記録を確認したって絞れないはずだわ。だってデイビット様の家は公爵家。王立図書館ならまだしも、学園内にある図書館より公爵邸にある図書館の方が蔵書数が多いもの。
デイビット様は試験前に慌てて勉強をする必要もないしね。
今回、ノエルは手紙でデイビット様が狙われていることを知った。あまり時間をかけるのは得策じゃないと判断し、ローズと手紙のやり取りも始めたの。
そしてそのローズからの手紙を手渡され、読み進めてみるとそれは驚くべき内容だった。恐らくヒロインが解決するのであろう内容なんだろうけど。
問題はそこじゃないのよ。
「なぜ彼女がこの件を知っているのでしょうか」
デイビット様もそう思うよね。だって事実とは違うけど、ありえたかもしれない内容が記されているもの。
「……侍女から聞いたのではないでしょうか」
ちょっと苦しいかな?
「侍女?」
「はい。侍女の情報網は計り知れないので。人から人へ伝わるたびに、捻じ曲がって伝わった可能性が考えられます」
公爵家で働く上級使用人は基本どこかの貴族だし、実家で話した内容が広がったって事にさせてもらおう。
「そこにローズさんお得意の妄想が追加されたのかと……」
「なくもない、のか?」
ちょっと強引すぎるけど、いいよね?
それと……あり得たかもしれないことが起こらなかった理由。
「……ウィル様」
「うん。俺もディアと同意見だよ」
もしかしたら、もしかするかもしれない。