軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22.騎士団長子息*5年前

「キース様は甘いものは好きですか?」

「甘いもの、ですか……?」

突拍子もない質問に困惑顔のキース様。

だよね。普通この場合『何かあったんですか?』って聞かれると思うよね。でも初対面……ではないけど、初めて話す相手には言いたくないかもだし。

「甘いものは好きです。でもあまり食べません」

「理由を聞いても?」

別に太っているわけでもないし、キース様の家が金銭的に困っているという話しも聞かない。

「その……騎士になるために制限していまして」

「そうでしたか。そういえばキース様のお父様は騎士団長でしたね」

「……はい」

えぇっ! もしかしてこれが泣いていた理由なの!? 眉が下がり、また泣き出しちゃいそうなんだけど。

泣いていた理由を聞くべきか、ウィル様と顔を合わせてしまう。

「僕も、僕も甘いものは制限しているんだ。理由はキースと違うけどね」

「私も制限していますよ。食べすぎてしまうと食事量が減ってしまうので、よく叱られます」

「よく? ディアは毎日叱られてるんじゃない?」

「もうウィル様っ」

……何とか明るい雰囲気にしたくて頑張ったんだけどな。

「「「…………」」」

これは理由を聞かなければ話を進められない気がする。

「キース、よければ泣いていた理由を聞いても?」

「っ! でも……」

「無理強いはしないよ」

「誰かに話すだけで、気持ちが楽になることもあると思います」

長い沈黙の後、小さな声で話しだしたキース様。

「生クリームを頂いてたんです。でも母上に……騎士になるための体作りには必要ないと……怒られてしまいました。よく怒られるんです。でも、今日はお二人の婚約祝の場だし、許されると……」

山盛りいちごの周りに生クリームを飾り、好きなだけ付けて食べられるようにしていた。

「そうでしたか……」

「岩糖は多くとると太ってしまうからな」

この世界には岩塩だけでなく岩糖というものがあり、それが砂糖や塩の原料なの。ちなみにどちらも高級品。

専門家じゃないからカロリーとか栄養素とかそういったのは全くわからないけど、砂糖をたくさん食べると太るっていうのは共通なのよね。

うーん。たしかスポーツ選手も糖質制限したり、食事制限してたよね? ウィル様の時みたいに食べた分動けばいいって話しじゃないし……どうしたものか。

「キース、後日お茶会に誘ってもいいだろうか」

「もちろんです」

想像以上に抱えているものが重い。そろそろ会場に戻らないといけないし、ウィル様も改めて話しを聞く場を設ける方がいいと判断されたのだろう。

改めて招待状を送る約束をし、キース様は私達よりも先に会場へと戻られた。

「ディア、僕達は少し遠回りしようか」

「はいっ!」

せっかく側妃様が2人きりにしてくれたしね。

パーティーから数日、今日は私とウィル様、お兄様とキース様の4人でお茶会。ウィル様の提案で、今回のスイーツは岩糖より太りにくいメープルシロップを使用した。

メープルシロップはその名の通りメープル伯爵領で作られたもの。さすがメープルって名前だけあって、領内には楓の木がたくさんあるのよ。

私……前世を思い出す前から、楓の葉を食べようとしたことがあったみたいなの。全く覚えていないけどね。

で、その楓からどうにかメープルシロップを作れないかって考え……残念ながら作り方なんて知らなくて。

でも樹液ってことは分かっているし、とりあえず煮詰めてみるかってやってみたら……なんと! できちゃった。とはいっても前世のそれとは程遠く、その後試行錯誤してようやく完成。長い道のりだったわ。

今でも簡単に作れるものでもなく、数も少ないため王家への献上分と我が伯爵家のみでしか出回ってない。でも今日はキース様に甘いものを食べてもらいたいから、特別。

本当は領民も手軽に手にできるものにしたかったのだけど、前途多難で。そこで私が目をつけたのが、キース様の家である伯爵領なの。

緑茶が欲しくて各領地の気候を学んでいた時、キース様の伯爵領にはカブみたいな見た目で、葉はほうれん草みたいな野菜があると知った。詳しく調べてみると『不味くて食べれない』『甘さを感じるが食べられたものじゃない』と言われている野菜だったの。

それって甜菜じゃん! って物凄くテンションが上がったのよね。

その時既にメープルシロップ製作に手をつけていたから、甘さを感じるなら砂糖を作る方法があるかもしれない。っていう私の訴えをお父様が聞いてくれた。

ところまでは良かったのだけど……。

キース様のお父様って騎士団長としては凄い方なのに、領主としては可もなく不可もなくって感じで。

ちゃんと対価を払うから、研究用に甜菜を少し分けてもらえないかって問い合わせたら『不味くてお勧めしませんよ』って返事が来ただけ。

研究用って言ってるのに! 脳筋のくせに甜菜に商機があると察したのか? って思ったくらい。まさか本当に不味いからやめとけって意味だったなんてね。

それが分かったから、今度は同い年のキース様と仲良くなり、そこから再度甜菜の話に持っていこうと思ったの。

私としては砂糖が普及してくれれば何でもいいんだけど、そうもいかないのがなんとも面倒よね。それもあって次期伯爵であるお兄様も今日のお茶会に参加する。

お父様ではなくお兄様が動く理由は、砂糖ができる確証があるわけじゃないから。作り方さえ発見できれば必ず作れるんだけどなぁ。