軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3-13

やばい、絶対やり過ぎた。幕府批判と受け取られても言い逃れ出来ないこと言っちゃった。当分、横浜から出ない。見知らぬ人が来たらすぐにどっかの公使館に逃げ込めるようにしとかないと。隠し扉的なの、各国に造らせとけば良かった。外国に逃げ込むとなると、世界史の知識が全くないのがネックになる。特にオランダなんて、全く知らない。アメリカはどうなんだろう。ワシントン、リンカーン、南北戦争、ゴールドラッシュ。もはや単語だけ。順序もわからない。船がなぁ、やだなぁ。世界を股にかける商人って言葉の響きだけならカッコいいけど、海に強くないとやっていけないんだよ。安く買って高く売る。価値あるものを買い叩けるか、付加価値を感じさせて高く売るか。商売の基本はそこだ。

武士の子として生まれて15、6年。それでも前世の営業として培われた感覚が、今も強く残り続けてる。塗り変わらない。むしろ何なら今の方が、簡単に利益の種が見つかる分だけ強くなってるかもしれない。あとは、俺が生きてる間にザンギリ頭になることを知ってるってのも大きいのかもな。生きていられるかな?安政の大獄で俺も処罰されんのかな?アメリカ、イギリス、オランダ、どこにしよう。日野の家族にどう伝えようか。そこが問題だ。

幕末は処刑、暗殺が多すぎるんだよ。多分どっかのタイミングで佐久間氏も高杉さんも吉田さんも死ぬはずなんだ。覚えてないけど。あとは新撰組が京都で暴れたり、坂本龍馬が商売始めたり。坂本龍馬の同郷、岩崎弥太郎も然り。心のバイブルの◯曜どうでしょうで覚えさせられた。次、どっかのタイミングで何かが起きるであろう「文久三年B組」のフォント含めて、忘れられない。いつ文久になるのかもピンと来てないけど。

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side 内田五観&佐久間象山

「内田、いるか?」

「何しに来た?帰れ」

「そう言うな。話がしたい」

「ワシは話たくない。帰れ」

「神主殿、残念だったな。江戸への道すがら寄ったら教えてもらったわ」

「………神主殿の名前を出すな、卑怯者。上がれ」

「いつの間に横浜はあんなことになったんだ?下田に向かった時には、横浜など何もない、ただの村でしかなかったはずだぞ」

「藤二なら『お前の尺度で考えるな』と言いかねんな」

「いや、まさしく。ワシの蘭学は過去の遺物だとまで言われた」

「まったく、アイツの口の悪さはどうにも出来んな」

「お前はどのように蘭学と向き合っているんだ?」

「蘭学?あぁ、蘭学な。もう忘れたさ」

「忘れた?そんな腑抜けたのか?」

「そもそも洋書調所にいる蘭学者たちやお主と、ワシは決定的に出自が違う。お主を含め蘭学者は、蘭学を学びたいと蘭学に接した。ワシは違う。関流宗家預かりとして和算の才を買われて、蘭学を身に付けた」

「同じではないか」

「決定的に違う。絶望的に違う。ワシは蘭学に、何の思い入れもない。だから横浜の人間に嫉妬することすらない。根っこにあるのは関流だ」

「では何のために洋書調所に属している?」

「名前を貸してるだけだ。そして藤二を預かってる身として、責任を取るだけだ。アイツを内弟子として受け入れて、もうそろそろ十年近くなるか。振り返ってみれば、想像を遥かに超えて、恐ろしく変化した。その中心にいたのは間違いなく藤二。その藤二がワシの名を必要としている。だからそこにおる。それだけだ」

「それで良いのか?」

「むしろその方が良い。この一、二年ほどはようやく関流の方に注力出来るようになった。知っておるか?算法は売れるぞ?」

「算法を売る?何を言っておる?」

「蘭書を買って蘭学を学んだであろう?その逆だ。算法を買い、算法を学ぶ人間が海の向こうにはおるのだ」

「…言っていることは分かる。でも、分からん」

「そうじゃろ?それが分かる人間が横浜におる。ワシは分からんから江戸におる。そんなもんじゃないか?」

「小僧に『弁論を教えろ』と言われた」

「良いではないか。やりたいならやる、やりたくないならやらない。それだけだろ?」

「良い?なぜ良いと言える?」

「ワシらの年でな、新しいことに付いていくのはそれだけで大変。そう思わんか?」

「それはそうだ」

「藤二はワシを江戸に置いておくことで、様々な調整役をさせておるだけのような気がしておる。そう利用するのが、アイツの言う『効率が良い』なんだろう。箕作殿や小野殿は、まだ新しいことを求めておる。それはそれで頭が下がる。知りたいことが異国の知識にあるからだろ。ワシはむしろ、どちらかと言えば算法だ。だからその役をしておる、そう考えておる」

「それで良いのか?」

「幕府の命には無私で従うだろ?」

「幕命と藤二の命は同じだとまで言うのか?」

「そうではない。そんなこと恐れ多くて言わん。ただ、幕府の命は無私なのに、藤二からの命は無私になれないのはなぜかと聞いている」

「…………」

「ワシを訪ねて来た時点で、迷っておるのだろう?」

「…………」

「迷っておるならば、一度、その流れに身を任せてみろ。それはそれで楽しいぞ」